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小説かいてるんだが読みづらいと言われる

55 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/27(水) 17:33:14.453 ID:WEu4pchnM.net
 12月24日。
すっかり汚染された冬の空に、アキラの顔はマフラーに踞る。赤く冷えた鼻を凍てつく風から守るために。カイロとして買った無糖のホットコーヒーは、すでにポケットで氷嚢と化している。今やマフラー内部を温める吐息だけが頼りだ。

 相模大野前の喫煙所。駅に併設されたショッピングモールは、日曜日ということもあり、家族連れやカップルで賑わっている。正直目障りだと思うと同時に、
「はあ…」
ため息が口をついた。

 アキラは寒気を嫌がる手を震わせつつも、右ポケットの煙草を取り出した。銘柄はマルボロトロピカル、アキラのお気に入りだ。今までに同じ煙草を吸っている他人を見たことないほどには、珍しい種類のものである。

 煙草の先端に包まれたカプセルをかみ砕く。
 かちっ。
 空気に揺られ、揺れる火種から、僅かに暖を頂きながら二度、強く吸う。口に燻った煙が染み、そして肺を満たす。このわずかな時間に引っ越したばかりのアパートで眠るような安心を覚える。

 午後2時15分。待ち合わせの時間からは15分も過ぎている。時間にきっちりとしているアキラには理解できない所業だ。

 嘆息が白く視認できる形をもって吐き出され、やがて空気に溶け込む。もうかれこれ30分は喫煙所に居るだろうか。
アキラ以外の人間は、自分の煙草を取り出し、八分ほど吸い終わったところで灰皿に入れ改札へ向かう。サラリーマン、大学生。色んな職種の人間が代わる代わる吸い終わっていく。
アキラのように喫煙所にずっと立っている者は稀だろう。
喫煙所に訪れる喫煙者は、まるで機械の様に一本を吸い終わると、各自の仕事へ戻っていく。ニコチンという燃料を得た車は自分の故障に気付くことなく走り出す。
唯一、その中でアキラだけが人間だったのかもしれない。故障を自覚すらしていなかったのだから。

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