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今書いてる小説が40000字になったんだけど気分転換に推敲してる

71 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/07/03(火) 21:58:31.096 ID:74pZgeeDa.net
 深い森の中、少女は巨大な白い蛇と相対していた。蛇は樹齢百年は超えているであろう大木に巻き付き、一回りしてもまだ余る胴を伸ばして、鎌首をもたげて、少女を下に見下ろしている。

「お願い蛇さん、私に力を貸して。目的を果たしたら何でもするから」

 蛇は沈黙して、少女の様子をつぶさに観察する。歳は十五ぐらい、一見飾り気のない旅姿だが、
砂埃の色に染まったフード付きの外套やブーツそして背中の荷物袋は、高い物ではないにせよ子供の小遣いで買える値段ではない。
遠路を辿ってここまで来たからには覚悟はあろうが、何でもするという言葉は、本心だろうか。本性が疑り深い蛇の考える事であるから、もう少し試したくなった。

「ならば、敢えて問おう。願いがかなった暁には、不老不死となってそこの樹に千年縛り付けられても構わぬと、誓えるか?」

 息を呑む音が、確かに聞こえた。少女は俯いて黙った。しかしふと気づくと、涙が頬を伝っている。胸元を握りしめて、小声で祈りの句を呟いて、ようやく顔を上げた。

「誓います。千年、帝都に向かって、帝都に」

 つっかえつっかえ言いながら、嗚咽が混じる。これが演技なら大したものだ。もし帝国から差し向けられた魔術師ならば、むしろ美辞麗句を並べながら毅然と言い放つだろう。
帝国の魔術師は妙なプライドがあり、腕の一本や二本くらいは犠牲にしても構わないような奴が多い。更には、不老不死など有り得ないという知識もある。蛇は勘案した結果、宣誓を遮った。

「冗談だ。泣くな」

 少女に向けていた鎌首を、今度は帝都がある方に向ける。緑色の陰に覆われた天蓋の隙間から、所々青い空が垣間見えた。蛇が見ていないと思ったのか袖で顔をゴシゴシと擦っている。
左目に映る視界の端に、はだけた外套の間から見える真新しい麻のシャツと、腰のあたりに繊細な文様で覆われた鞘に納まる短剣が垣間見えた。

「お前は本当に、ただのガキの癖に一人で帝国にケンカ売る気か?」

 少女は、擦って赤くなった顔を上げた。蛇は、もたげた鎌首をゆっくりと少女の方に向ける。

「はい。私は、お父様の暴挙を、侵略の意思を断じて挫かなければならないのです」

 蛇は真っすぐに首を伸ばし、少女の面先に舌を突き付ける。嘘を吐いている匂いではない、この少女は、正直者か狂人のいずれかであると判断した。

「そうか」

 それきり、蛇は黙る。果たして、俺は帝国に因縁があっただろうか。この少女に付き合わねばならぬ理由があるだろうか。思慮せねばならない。蛇は、願いについて真剣に考え始めた。

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