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喪黒福造「あなたの死んだ愛犬、ロボットとして甦らせることができますよ」 老人女性「なっ……!?」

1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:30:51.702 ID:dlvpN8gND.net
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    犬養郁子(76) 無職

    【ロボット犬】

    ホーッホッホッホ……。」


2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:31:33.376 ID:oyS+p2Ob0.net
期待

3 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:33:03.041 ID:dlvpN8gND.net
郁子のモノローグ「東京に上京してから今に至るまで、私はずっと一人で生きてきた」

若いころの犬養郁子が駅のホームに立っている。三つ編みの髪形で、セーラー服とコートを着ている郁子。

電車からホームに降りる大勢の少年たち。彼らは皆、学ランの制服と学生帽を身にまとっている。少年たちを見つめる郁子。

少年たち「おおっ、やはり東京は人が多いなぁ!」「俺もこれから東京で働くのか!」「何しろ、俺たちは『金の卵』と呼ばれてるからなぁ!」


郁子のモノローグ「私は専門学校に入り、管理栄養士の資格を取得した」

教室。年配の女性教師が黒板にチョークで板書をしている。机に向かい、黒板の方を見つめる女子たち。女子たちの中に郁子もいる。

調理室。白いエプロンと三角巾を身にまとった専門学校生たちが、実習をしている。まな板で包丁を持ち何かを調理する郁子。


郁子のモノローグ「専門学校を出た私は、ある大企業の社員食堂の栄養士になった」

社員食堂。調理室では、調理服を身に付けた郁子ら栄養士が料理を作っている。食事をする会社員たち。


郁子のモノローグ「私は定年を迎えるまで、その企業の社員食堂で働き続けた」

社員食堂。調理服を着た郁子が受付の前にいる。彼女の身体つきや顔つきは中年女性らしいものとなっている。

4 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:35:09.004 ID:dlvpN8gND.net
郁子のモノローグ「結婚もせず、友達も作らず、私は一人で生き続けてきた」

スーパーの中で、初老の郁子が買い物をしている。店の専用のカゴの中に野菜を入れる郁子。


郁子のモノローグ「しかし……。定年から数年経ったある日、私は何かのきっかけで犬を飼うことになった」

首輪をつけた秋田犬が、犬小屋で餌を食べている。犬を見つめる郁子。

郁子「ポチ……!!」

ポチ「ワンッ!!」


郁子のモノローグ「ポチを飼うようになってから、私の人生は一変した。『自分は一人ではないんだ』と思い知らされた」

飼い犬ポチを連れて、公園の桜並木の中を散歩する郁子。


郁子のモノローグ「ポチは、まるで実の息子のようにかわいかった。こんな幸せな日々がいつまでも続くと思っていた」

大きくなったポチを笑顔でハグする郁子。郁子の髪には白髪が目立ち始めている。


郁子のモノローグ「それなのに――」

画面は真っ暗になる。

5 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:37:08.906 ID:dlvpN8gND.net
テロップ「2018年――」

郁子のモノローグ「ポチは、私を残して逝ってしまった……」

東京、法善寺。ここは、「東京動物霊園」がある場所だ。納骨堂には、ペットたちの遺骨が数多く納められている。

東京動物霊園の中にいる郁子。

テロップ「犬養郁子(76) 無職・独身」

納骨堂の棚の中には、彼女の飼い犬ポチの遺骨も納められている。

ポチの遺骨の入った箱の側には、この犬の遺影と花瓶も飾られている。ポチの遺骨に向かい、手を合わせる郁子。

彼女の目から涙がにじむ。郁子を見つめる法善寺の僧侶。

……どうやら、東京動物霊園の中にはあの男もいたようだ。そう、喪黒福造だ。

納骨堂の中を歩き、棚の中に並んだペットの遺骨や遺影を見つめる喪黒。

喪黒は、ポチの遺骨に手を合わせる郁子の姿を目にする。


郁子のモノローグ「ポチを失ったことによる心の喪失感から……、私は今も立ち直っていない」

東京動物霊園を立ち去り、寺を出る郁子。道を歩く郁子の顔の表情は、暗くて悲しげだ。

6 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:39:16.344 ID:dlvpN8gND.net
住宅地の中を歩く郁子の後をつける喪黒。喪黒はいつの間にか郁子の側に近づく。

喪黒「あの……、すみません……」

郁子「うわあっ!!び、びっくりしたあっ!!」

喪黒「さっき、東京動物霊園であなたの姿を見ましたよ」

郁子「そ、そうですか……」

喪黒「あなた……。遺骨に手を合わせながら、涙ぐんでいましたねぇ……」
   「おそらく……。ペットを失ったことに対する悲しみは、相当なものだったのでしょう」

郁子「ええ、そうです……。愛犬のポチは、私の息子のような存在でしたから……」

喪黒「……ということは、もしかすると……。あなた独身でしょう?」
   「おそらく、家族がいないから……。ペットに対し、ここまで愛情を注ぐことができたのではないですか?」

郁子「あ、あなたのおっしゃる通りですよ……。よくそこまで気づきましたね……」

喪黒「いやぁ……。仕事柄、長年、人間観察を行ってきたおかげでしてねぇ……」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

郁子「ココロのスキマ、お埋めします?」


7 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:41:18.199 ID:dlvpN8gND.net
喪黒「実はですね……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」

郁子「へえ……。珍しいお仕事ですね……」

喪黒「あなたのような人を救うのが、私の仕事なんです。何なら、相談に乗りましょうか?」


BAR「魔の巣」。喪黒と郁子が席に腰掛けている。

喪黒「なるほど……。今のあなたは間違いなく、心にスキマがおありのようですなぁ……」

郁子「はい。上京して以来、ずっと一人で生きてきた私が……。年を取ってから出会ったかけがえのない存在……」
   「それが、愛犬のポチでした。しかし、ポチは私を置いてあの世へ行ってしまいました……」

喪黒「愛するペットを失ったことによる、あなたの心の傷はかなり深いはずです」
   「だから……。犬養さんは今も、ポチを失ったことによる喪失感から立ち直れていないのでしょうねぇ」

郁子「おっしゃる通りです。ポチを失ったことで、私の日常は大きく変わりました」
   「目の前の景色が虚ろなものに見え、何をしても楽しいと感じられなくなりました」

喪黒「それはさぞかし辛いでしょう……。あなたの心労、察するに余りあります」

郁子「一番いいのは、ポチが生き返ってくれることなんでしょうけど……。それは、現実にはあり得ませんから……」


8 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:43:30.871 ID:dlvpN8gND.net
喪黒「じゃあ……。思い切って、新しいペットを飼うというのはどうです?」
   「そうすることにより、犬養さんの心の傷は少しでも癒されるはずですが……」

郁子「そのつもりはありません。死んだポチに対して申し訳ない気がしますから……」

喪黒「よろしかったら、あなたの愛犬を生き返らせて見せますよ。一味違った形で……」

郁子「えっ!?い、いきなり何をおっしゃるんですか!?」

喪黒「日本はロボット大国ですし、最近ではAIの発達も進みましたからねぇ……」
   「だから、犬養さんの今の望みをかなえることも可能なはずです……」

郁子「喪黒さん、あなた一体何が言いたいんですか!?」

喪黒「あなたの死んだ愛犬、ロボットとして甦らせることができますよ」

郁子「なっ……!?」

喪黒「実はですねぇ……。私は、とある研究所と付き合いがあるんですよ」
   「何しろ、その研究所は……。ロボットやAIの研究では我が国でも最先端のところなんです」
   「だから……。そこに頼めば、本物に限りなく近いロボット犬を作ることができます」
   「毛皮もついていて、ドッグフードとか食事も普通の犬並みにこなすし……」
   「しかも、高性能のAIのおかげで感情も持っている……。まさに、夢のロボット犬です」

郁子「わ、悪い冗談はよしてください!たとえ、あなたの話が本当だとしても……」
   「その犬は私のポチとは別物でしょう!!」


9 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:46:02.630 ID:dlvpN8gND.net
喪黒「いいえ、悪い冗談なんかではありません。私はあなたのためを思って言っているのです」
   「ロボット犬を作る際は、生前のポチの写真も参考にしますし……。犬養さんから話を聞いた上で……」
   「生きていたころのポチの特徴や癖もAIにインプットさせます。だから、でき上がるのはもちろん……」
   「ポチの生き写しのような存在というわけです。まるで、ポチが生き返ったかのような……ね」

郁子「そ、そんなことが本当にできるんですか……」

喪黒「できます。犬養さん、私に着いて来てください」


喪黒に誘われ、外に出る郁子。タクシーに乗る2人。

喪黒と郁子が乗ったタクシーは、大規模な研究所の中に入っていく。


研究所。建物の廊下の中を歩く喪黒と郁子。

郁子「ずいぶん、広いですね……。ここ……」

喪黒「この施設は、複数の大学や企業が出資して作ったものなんですよ」

部屋の中にいる喪黒と郁子。郁子は椅子に座り、白衣を着た数人の研究者たちに何かを話している。

身振り手振りを交える郁子。


10 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:47:48.014 ID:Nh1GyvtO0.net
あなたリペットに行ってくれないかしら?オリバーのクローン犬を作るの

11 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:48:13.994 ID:dlvpN8gND.net
廊下。紙パック自販機の隣にあるソファーに座る喪黒と郁子。2人は何かの飲み物を飲んでいる。

喪黒「これで……。犬養さんの愛犬ポチは、ロボット犬として生まれ変わるんですよ」

郁子「ですがね……。私はポチの特徴について、何から何まで知り尽くしているわけですから……」
   「だから……。ロボット犬がポチそっくりに作られていたとしても、何かしらの違和感は残るでしょうし……」
   「果たしてなじめるかどうか……」

喪黒「大丈夫です。生前のポチに愛情を注いだあなたなら、ロボット犬に対しても同じように愛情を注げるでしょう」
   「そうすることにより……。ロボット犬はあなたにとって家族同然の存在となるのですから……」

郁子「は、はあ……」

喪黒「でき上がったロボット犬は、1か月後に犬養さんの自宅へ届きます。宅急便に入った状態で……」

郁子「1か月でロボット犬を作れるんですか……。早いですね……」

喪黒「科学の進歩のおかげですよ。あなたの心の傷が少しでも癒されるのなら、それに越したことはありません」
   「ロボット犬の製作の費用は、私が全額を負担しておきますから……」

犬養「ど、どうも……。私のために、わざわざここまでしてくださって……」

喪黒「……とはいえ。犬養さんには、私と約束していただきたいことがあります」

郁子「約束!?」


12 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:50:19.524 ID:dlvpN8gND.net
喪黒「そうです。犬養さんは独身であったおかげで、生前のポチに対して深い愛情を注ぐことができました」
   「だから……。今度のロボット犬に対しても、前のポチと同じくらい家族同然の深い愛情を注いでください」
   「従って、人間の男性と恋愛をしたり結婚をするような真似をしてはいけません。あなたの家族は愛犬のみです」

郁子「え、ええ……。そりゃあ、もう……。私はこれからも独身を貫く自信がありますよ」

喪黒「いいですね!約束はきちんと守ってくださいよ!」

郁子「わ、分かりました……。喪黒さん」


1か月後。郁子の自宅。

配達員たち「犬養さん、宅急便でーーす!!」

玄関の前に、宅急便の配達員が数人いる。大きな段ボール箱を置く配達員たち。郁子は伝票の上にハンコを押す。

宅急便のトラックが、郁子の自宅から去っていく。おそるおそる、段ボールを開ける郁子。

段ボールの中には、郁子が飼っていたポチとそっくりな姿のロボット犬が入っている。

郁子(こ……、これがロボット犬……。どう見ても、私が飼っていたポチが目の前にいるとしか思えない……)
   (まさに、生き写し……。まるで、ポチのはく製を目にしているみたい……)

ロボット犬の首が動き、郁子の方を見つめたかに見える。


13 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:52:20.680 ID:dlvpN8gND.net
郁子(え、ロボット犬の首が動いた!?気のせいでしょ……。だって、スイッチも入れていないのに……)

ロボット犬「ワンッ!!」

郁子(こ、この鳴き声は……。どう見ても、ポチそのものとしか思えない……)

郁子の目が徐々に涙でうるむ。感極まり、ロボット犬に抱きつく郁子。

郁子「ポ……、ポチ……!ポチィーーーーーーッ!!」

ロボット犬「クゥーーーン……」


郁子の自宅。犬小屋でドッグフードを食べるロボット犬。犬を見つめる郁子。

郁子「ポチ、おいしい?」

ロボット犬「ワンッ!」


住宅街。ロボット犬を連れて散歩をする郁子。まるで、老人女性が普通の犬を連れて散歩しているようにしか見えない。

郁子のモノローグ「ポチが、私の元に帰ってきた……。こんなことが本当に起こるなんて……。夢のようだ……」

充実した表情の郁子。

14 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:54:43.910 ID:dlvpN8gND.net
BAR「魔の巣」。喪黒と郁子が席に腰掛けている。

郁子「喪黒さん、このたびは本当にありがとうございました……」

喪黒「どうやら……。犬養さんは、ポチを失った精神的なショックから立ち直ることができたようですなぁ……」
   「あのロボット犬のおかげで……」

郁子「はい。私にとって、あのロボット犬は……。ポチの生き写しという存在をすでに超えています」
   「この子はどう見ても、ポチそのもの……。ポチが生き返って、私の元へ帰ってきたとしか思えません」

喪黒「そのご様子からして、犬養さんは間違いなく生きがいを取り戻したはずでしょう」

郁子「もちろんですよ。ポチが今も私の側にいてくれる……。それが何よりの私の心の支えとなっています」

喪黒「飼っている動物に愛情を注ぐのはいいことですよ。……とはいえ、あなたも人間である以上……」
   「生身の人間を相手にコミュニケーションを取りたいという気持ちも、心のどこかにあるはずでは……」

郁子「それを感じたことはありませんね。何しろ、私は人付き合いをしない状態に慣れていますから……」
   「長年に渡って一人で生きてきたからこそ、ペットとの絆を心から感じることができたんですよ」

喪黒「そうですか……。そういう生活が今後も続けば、犬養さんは私との約束をこれからも守れるでしょうに……」
   「あくまでも、今の生活が今後も続けばの話ですが……ねぇ」

郁子「続くと思いますよ。だから、何も心配はありません」


15 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:57:18.433 ID:dlvpN8gND.net
法善寺、東京動物霊園。納骨堂で、郁子はポチの遺骨の箱と遺影に手を合わせる。

納骨堂を後にする郁子。

郁子(確かに、ロボット犬は限りなくポチに近く作られている……。でも、本物のポチはもうこの世にいない……)


並木道。ロボット犬を連れて散歩をする郁子。

郁子(この子は本物の犬そっくりで、ポチにも生き写しだし……。私にとっては、もちろんかわいい……)
   (でも……。この子は結局、本物の犬でもないし……。何よりも、本物のポチではない……)


自宅。犬小屋でロボット犬に餌をやる郁子。

郁子「ポチ……」

ロボット犬「クゥーーン……」

郁子の顔は無表情だし、彼女によるロボット犬への呼びかけの声も虚ろなものだ。


夜。寝室で、布団の中に入りながら考え込む郁子。

郁子(この子はロボット犬……。ポチであってポチじゃない何か……。この子は一体何ものなんだろう……)


16 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 20:59:18.777 ID:dlvpN8gND.net
ある日の夕方。散歩から帰り、自宅の塀の中に入る郁子とロボット犬。玄関の前の郵便受けで、郁子はある封筒を手にする。

自宅の中。台所のテーブルの前で、封筒を開ける郁子。封筒から出てきた紙は……。

郁子(高校時代の同窓会の知らせか……。ずいぶん長いこと、同級生たちに会っていないな……)

ボールペンを持ち、同窓会の案内状の「参加する」の欄を丸で囲む郁子。


2週間後。あるホテル。宴会場のドアの前には、とある高校の同窓会の立て札が立っている。

スーツを着た老人たちが大勢、宴会場の中にいる。かつての思い出話に花を咲かせる多くの級友たち。

しかし、その中で郁子はコップを持ったまま一人でいる。郁子の頭の中に、少女時代の2人のクラスメイトの姿が思い浮かぶ。

郁子のモノローグ「高校時代に私と仲が良かった旧友は、2人ともすでに死んでしまった」
           「だから、この同窓会でも私は1人……のはずだった」

ある老人男性が郁子に声をかける。ハゲ頭で老眼鏡をかけた男性だ。

横峯「やぁ、犬養さん……」

テロップ「横峯幹二(76) 元会社員」

横峯「実はな……。高校時代の俺は、君のことが好きだったんだよ」

郁子「ふうん……。それは知らなかった……」


17 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 21:02:28.722 ID:dlvpN8gND.net
横峯「それにしても……。俺と同じく、君も現在は東京に住んでいるとはな……」

郁子「ええ……。お互いの住所も意外と近いところにあるなんて……」

横峯「しかもだ……。俺も君も、お互いに独身ときてる。なぜなら、俺は……。過去に家族を次々となくしたからな」
   「俺の息子は小さいころに海で溺れて亡くなり、妻も数年前に病気で死んだ」

郁子「横峯さんも辛い思いをしてきたんですねぇ……」

横峯「ああ……。家族を失うことの辛さや、孤独は身にこたえる。だから、なぁ……。これからは君と連絡を取り合おう」

郁子「ええ……」


横峯が運転する軽四に乗ってドライブをする郁子。2人はとある公園の頂から、街を眺める。

レストランの中で食事をする横峯と郁子。さらに、着物姿の女性演歌歌手のコンサートを鑑賞する横峯と郁子。


ある夜。温泉旅館の客室。浴衣姿のまま手をつなぎ、窓の外の温泉街を眺める横峯と郁子。

横峯「なぁ……、郁子……。俺は君と結婚したい……」

郁子「ええ……。私もあなたと結婚したいと思っている」


翌日。道路を走るバス。バスの後部座席には、横峯と郁子が隣同士で座っている。


18 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 21:03:18.906 ID:BbnOwexz0.net
そうだなソニー許せねーな

19 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 21:05:30.507 ID:dlvpN8gND.net
とある街の停留所に止まるバス。横峯と郁子がバスから降りたその時……。後ろから例の声がする。

喪黒「老いらくの恋とは、結構なことですねぇ……」

郁子「も、喪黒さん……!!」

横峯と郁子が後ろを振り向くと、そこには喪黒が立っている。

喪黒「犬養郁子さん……。あなた約束を破りましたね……」

郁子「そ、そんな……!!」

喪黒「私はあなたに言ったはずです。今の犬養さんの家族は愛犬のみであるから……」
   「人間の男性と恋愛をしたり結婚をするような真似をしてはいけない……と。それなのに、あなたは……」

郁子「す、すみません!!でも……。私もあれから、いろいろ心境の変化があったのですから……」

喪黒「言い訳はよしてください。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」

喪黒は横峯と郁子に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」

横峯「ギャアアアアアアアアア!!!」  郁子「キャアアアアアアアアア!!!」


住宅街の中の、誰もいない道を歩く横峯と郁子。2人の目の前に、ロボット犬が姿を現す。


20 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/09/06(木) 21:08:55.750 ID:dlvpN8gND.net
郁子「ポチ……。いつの間にこんなところに……」

ロボット犬の様子はどこか変だ。郁子の呼びかけに応じず、殺気立ったような雰囲気のロボット犬。

そして、次の瞬間……。ロボット犬は横峯の身体に飛びかかり、首筋へと勢いよく噛みつく。

横峯「ギャアアアアアアアアッ!!!」

ロボット犬は血に染まりながら、横峯の身体の人肉を貪り食らう。驚きと恐怖で、蒼白な顔つきになる郁子。

血まみれの骨だけになった横峯。横峯の身体の肉を食べつくしたロボット犬が、郁子の方を見つめる。ロボット犬の両目が赤く輝く。

郁子「や……、やめて……!!」

絶望の表情になる郁子。郁子へ飛びかかるロボット犬。ロボット犬に噛まれ、郁子の首から大量の血が吹き出る。

郁子「キャアアアアアアアアアッ!!!」


とある街のバス停の前にいる喪黒。

喪黒「昔も今も……。人間は何かしらの形で動物を飼育してきましたが、ペットの存在は家族にさえ等しいものとも言えましょう」
   「ですから……。一緒に暮らしてきたペットと死別することは、飼い主にとってはこれ以上なく辛い経験になるわけです」
   「ペットもまた動物である以上、老いや死は避けられないものですが……。ロボットのペットはそれらとは無縁の存在です」
   「将来、科学が今以上に発達したならば……。ロボットのペットが社会のいたるところに普及してもおかしくありません」
   「もっとも……。動物のペットと同じく、ロボットのペットも飼育には苦労しそうですねぇ。犬養郁子さんのように……」
   「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―


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