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黒奈「おねしょ」

1 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:37:48.40 ID:CYVqn0cJ2
気がつくと、私は学校の校舎にいた。

長く、人1人の気配もない廊下に、1人立っている。

明かりがついているはずなのに薄暗く、空気の流れすら感じない。

私は、わけもなく、その終わりの見えない廊下を、進み始める。

2 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:38:53.04 ID:CYVqn0cJ2
数歩進んだところで、私はなんとなく、不快感を覚えた。

お腹の方から何か、圧迫されるような……

……

…………

………………トイレに行きたい。


内側からせり上がってくる緊張感の正体は、おそらく、いや、確実に、

「尿意」だ。

3 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:40:10.87 ID:CYVqn0cJ2
私はトイレを求めて、無限に続いていると思われる廊下を、ひたすら歩く。

けれどもさっぱりトイレはなくて、増幅する腹部の不快感とシンクロするように、1歩1歩の速さを早めていく。

廊下の脇には、教室、授業で書かれた絵、教室、啓発ポスター、教室、別の廊下の入口……

トイレは全く、現れない。

4 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:40:47.81 ID:CYVqn0cJ2
ガタンッ

「!」

突然、後ろから、何かの気配がした。

きっとそれは、真っ暗で、巨大て、あるはずなのに何もない、でもとてつもなく恐ろしい、何かだ。

それは今、無限の廊下の向こうから、こっちにやって来ている。

逃げなきゃ。

絶対にそれに追いつかれてはならないような気がして、私は走った。

5 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:41:39.68 ID:CYVqn0cJ2
永久に続く長い廊下を、全速力で走る。

けれども「それ」からは、全く逃れられない。

すぐ後ろまで近づいてきている気がする。

私は、縋るように、すぐそこにあった教室に飛び込む。

6 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:42:22.65 ID:CYVqn0cJ2
どれくらいの時間が経ったかわからない。

「それ」の気配は消えていた。

再び、誰もいない校舎に取り残された。

ほっと胸を撫で下ろして……とはいかず、代わって、先程までの腹部の不快感が強力になってやってきた。


教室を駆け出し、再びトイレを探して流浪する。

7 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:42:59.52 ID:CYVqn0cJ2
歩いても、走っても、目的地は見えない。

ぐるぐると渦巻く焦燥感と、一刻も早く出してしまいたいという欲求に心を支配され、この場に膝をついて力を抜いてしまいたくなる。

けれども、長い廊下に一抹の希望を抱いて、歩き続ける。

8 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:43:54.67 ID:CYVqn0cJ2
そして、見つけた。

左側の、ドアのない部屋に飛び込む。

ピンク色のタイルの床に、個室が並んでいるのが見えて、少し安堵する。

トイレは酷く煤けていて、しかもすべて和式であったが、もうそんなことを気にしている余裕もない。


両脚を擦り合わせながら、一番手前の個室に駆け込む。

9 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:44:37.73 ID:CYVqn0cJ2
私は白いそれを跨ぎ、慌ててズボンとパンツを下ろす。それとほぼ同時に……

しょおおおおおおおお

音を立てて、私の緊張感の根源が、流れ落ちる。

極限の緊張からの突然の解放は、絶大な快感となって、身体の全てを支配する。

私は、しばしその快感に身を委ね、放心していた。

10 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:45:15.75 ID:CYVqn0cJ2
快感のあまり、身体を支える脚が震える。

脚の間から流れる水のアーチは、とどまるところを知らない。

不意に、下半身が温かいものに包まれる感覚を覚え、困惑する。


その時、私の意識は、どこか遠くの方に吸い込まれた。

11 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:46:00.67 ID:CYVqn0cJ2
……

…………

………………


眼を開くと、見知った木製の天井がじんわりと見えてくる。

私は、いつの間に眠って……いや……

少しずつ、記憶が戻ってくる。

私は、昨日から、千咲の家に泊まっている。

私は床の上に敷いた布団の上に眠っていて、左を向くと、ベッドの上で千咲が眠っていた。

12 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:46:27.19 ID:CYVqn0cJ2
そこで、私は気づいてしまう。

下半身全体が、温かく湿っていることに。

13 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:47:00.46 ID:CYVqn0cJ2
嫌な予感がして、布団をめくろうとする。

むわっ……と、温まった空気とともに、それ特有の臭いが鼻をついた。

私はそれ以上、布団を捲るのをやめた。


…………やってしまった。

14 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:47:29.00 ID:CYVqn0cJ2
実は、昨日の夜からそういう感じはしていた。

夜中に起きた時、トイレに行こうとした。

が、行けなかった。

トイレまでの道程が、なんとなく前に見た、薄暗い夢に似ていて。

1人では絶対に行きたくないと感じた。

だから、千咲を起こすことにした。

15 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:47:59.73 ID:CYVqn0cJ2
「千咲、千咲、起きて」

私は悪いと思いながらも、寝ている千咲の身体を揺さぶった。

「千咲、ねえ」

千咲の方はだいぶ熟睡していたようで、喫茶店だとかパソコンだとか呟いて、また寝息を立て始めた。

16 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:48:44.93 ID:CYVqn0cJ2
一度は諦めた。

諦めて、1人でトイレに行こうとした。

暗い、何も見えない、鏡がある、こわい。

やっぱりだめだった。だめだったよ千咲。ねえ。

17 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:49:28.04 ID:CYVqn0cJ2
「千咲ーーーー」

また千咲を揺さぶる。

千咲は息を吸い込み、僅かに目を開ける。

「千咲、トイレについてきて」

千咲は数秒ほどこっちを見てから、ぷいっと向こうを向いてしまった。

「白羽先輩……」

だめだ、寝ぼけている。

千咲を起こすのはどうやら無理みたいだ。

さて、どうしようか。

18 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:50:06.46 ID:CYVqn0cJ2
『千咲が起きるまで待つか』

『1人でトイレに行くか』


私は、トイレに行くのを諦めて、布団に入った。

19 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:50:41.64 ID:CYVqn0cJ2
――というのが、昨夜の出来事。

カーテンからは朝日が漏れだし、時計は6時を指している。

私は絶望のどん底にいるというのに、千咲はまだ寝息を立てて寝ている。

20 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:51:09.04 ID:CYVqn0cJ2
こうなったのは千咲のせいなのだ。

布団からできるだけ身体を動かさず、寝ている千咲の顔をのぞき込む。

むっと頬を膨らませてみたが、千咲の表情は変わらない。

ついでに千咲のおでこに指を近づけて……

ペチッ

「ぅひ……!?」

デコピンした。

21 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:51:47.05 ID:CYVqn0cJ2
何をされても起きないと思っていた千咲は、むくりと身体を起こした。

それにびっくりして、慌てて湿った布団に戻る。

「朝ですか、黒奈さんおはようございます」

寝起き特有のいつもより低めの声で、千咲が伸びをする。

「おはよう」

22 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:52:16.21 ID:CYVqn0cJ2
「黒奈さん……勘違いだったら申し訳ないんですけど、寝ている時何かしませんでしたか?」

「してない」

「そうですか、夢でしたか」

「そう、夢」

千咲が起き上がってくる。

私は起き上がらない。

いや、起き上がれない。

23 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:52:49.23 ID:CYVqn0cJ2
「???黒奈さん、起きて朝ごはん食べますよ」

「…………」

「黒奈さん?…………ん?」

くんくん、と、千咲が鼻を動かす。

まずい。


「…………」

「……黒奈さん、布団めくってもらってもいいですか?」

24 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:53:21.53 ID:CYVqn0cJ2
「……やだ」

「なんでですか」

「それも千咲の夢」

「一応確認したいことがあるんです」

「だめ」

「…………」


千咲が、ばっと私の布団を引っぺがした。

25 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:53:57.96 ID:CYVqn0cJ2
「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「……黒奈さん?これは?」

「…………」

「黒奈さん?」

「……千咲のせいだもん」

「えっ」

26 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:54:28.98 ID:CYVqn0cJ2
「千咲が起きなかったから……」

「どうして起こすんですか!?」

「だって怖いから……」

「トイレすぐそこじゃないですか、私ここにいますし…」

「千咲がいなくなるかもしれない」

「いなくなりませんよ」

「でもこわい」

「こわくないですっ」

「こわい」

「ええ…………」

27 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:55:01.42 ID:CYVqn0cJ2
「はぁ……しょうがないですね、布団乾かしてそれも洗っちゃいましょう、脱いでください。あとシャワー浴びて来てください」

「……うん」


浴室の扉を閉じて、びしょびしょのズボンとパンツを脱ぐ。

人の家で衣類を全て脱ぐという体験がなかったので、なんだか急に恥ずかしくなった。

28 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:55:34.40 ID:CYVqn0cJ2
千咲は着替えも準備してくれたし、シャワーを浴びて出てくると、もう布団が干してあった。


「千咲」

「なんですか?」

「ごめん」

「どうして謝るんですか……?」

「なんかいろいろ」

29 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:56:07.22 ID:CYVqn0cJ2
「ところで、千咲」

「はい」

「どうしてそんなに手馴れてるの?」

「…………!!!それは!」

「秘密ですっ」

「…………?」

30 :以下、VIPがお送りします:2018/11/02(金) 23:56:38.45 ID:CYVqn0cJ2
おわりです

オチが思いつきませんでした

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