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喪黒福造「あなたを巨大ヒーローに変身させてあげますよ」 漫画家「冗談はよしてください」

1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:23:02.009 ID:qLSV7Ke/D.net
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    飯星昴(29) 漫画家

    【巨大ヒーロー】

    ホーッホッホッホ……。」

2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:25:25.141 ID:qLSV7Ke/D.net
夕方。とある木造アパート。散らかった部屋の中で、スマホで通話するとある漫画家。

飯星「……そうですか、分かりました。やむを得ませんね……」

テロップ「飯星昴(29) 漫画家」

通話を終え、暗い表情になる飯星。彼は、アシスタントの若者に声をかける。

飯星「俺が今描いている連載、打ち切りが決まったよ。あと4週分で話をまとめろってさ」


夜。室内で、漫画原稿を執筆する飯星とアシスタント。飯星は、ペン入れをした原稿をアシスタントに渡す。

飯星「この原稿のトーン貼り、頼んだよ」


ある日。とあるイベント会場。会場内では、子供向けのヒーローショーが行われている。

着ぐるみを着たアルバイトが、巨大ヒーローと怪獣の戦いを演じているのだ。

3 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:27:35.363 ID:qLSV7Ke/D.net
ショーを見物しながら、ヒーローの着ぐるみに熱心に声援を送る子供たち。当然、観客は親子連れの人間が多い。

しかし、場違いな2人も観客の中に混じっている。この2人は、漫画家の飯星とあの男――喪黒福造だ。

ヒーローショーを熱心に見いる飯星。彼は両手のこぶしを握りしめ、ヒーローの戦いを見守っている。

巨大ヒーローの着ぐるみが、必殺技のポーズを決める。倒れる怪獣の着ぐるみ。歓声を上げる観客たちと飯星。

観客たち「ウオオオオオッ!!!」

飯星「やった!!」


ヒーローショーの見物を終え、会場内を後にする飯星。飯星の側に、喪黒が近寄る。

喪黒「いやぁ、大の大人がヒーローショーを見物するとは珍しいですねぇ」

飯星「俺の趣味だから別にいいでしょう。俺は、特撮ヒーローが好きなんですから……」

喪黒「それだけじゃあ、ないでしょう。あなたがここにいるのは、日ごろのストレスの解消のためでもありますから……」

飯星「あなたに俺の何が分かるんですか?いちいち馴れ馴れしいですね……」

4 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:29:18.769 ID:qLSV7Ke/D.net
喪黒「あなた、漫画家さんですよねぇ?売れないとはいえ、原稿の締め切りに追われているでしょう」
   「そりゃあ、ストレスがたまりますよ」

飯星「ど、どうしてそれを……!!あ、あなたは一体何者なんですか!?」

喪黒「いやぁ……。仕事柄、長年、人間観察を行ってきた賜物ですよ。何しろ、私はこういう者ですから」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

飯星「……ココロのスキマ、お埋めします!?」

喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」

飯星「あなた、セールマンの方なんですか……」

喪黒「どちらかと言うと、ボランティアみたいなものですよ。いい店がありますから、そこでゆっくり話でもしましょう」


BAR「魔の巣」。喪黒と飯星が席に腰掛けている。

飯星「俺は漫画家ですけど……。デビュー以来、どの作品もヒットしないまま現在に至りました」

5 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:31:30.045 ID:qLSV7Ke/D.net
喪黒「おそらく、現在の連載も打ち切りが決まったのでしょうねぇ」

飯星「ええ……、そうなんです。これから先、どうやって食べていけばいいのか……」

喪黒「飯星さん。次の新作は、いっそのことあなたのお好きな分野を選んだらどうです?」

飯星「好きな分野をテーマにするんですか……」
   「まあ、それなら楽しく描けるでしょうけど……。失敗すれば、読者の支持が得られませんからね」

喪黒「あなたは漫画家として、もう後がないでしょう。だから、ここで吹っ切れることも大事なんです」

飯星「……そうかもしれませんね」

喪黒「飯星さんのお好きな分野といえば、特撮作品でしょう。特に巨大ヒーローものとか……」

飯星「そ、そうです……。俺は小さいころから、巨大ヒーローものが好きでしたね」

喪黒「例えば、円山プロが手掛けてきた『スペシャルマン』シリーズとか……」

飯星「スペシャルマンですか……。もちろん、好きですよ。俺とスペシャルマンとの出会いは、小1のころでしたね」
   「あの当時の俺は、テレビで放映されていた『スペシャルマンジオ』を毎週楽しみにしていましたよ」

6 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:33:30.943 ID:qLSV7Ke/D.net
喪黒「じゃあ……。あのころの飯星さんは、スペシャルマンに変身したいと思ったことがあるでしょうねぇ」

飯星「そりゃあ、もう……。今でも、スペシャルマンに変身したいとたまに考えることがありますよ」

喪黒「飯星さんが巨大ヒーローに変身できれば、次の作品の構想に役立つでしょうねぇ」
   「もしも、あなたが次回作で巨大ヒーローものを題材にするのならば……」

飯星「ハハハ……。面白いことをおっしゃりますね、あなた……」

喪黒「飯星さん。あなたを巨大ヒーローに変身させてあげますよ」

飯星「冗談はよしてください。いくら何でもそんなこと……」

喪黒「冗談ではありません。私は本気で言ってるんです」
   「あなたを特別な場所へご案内しますから、私に着いて来てください」


喪黒に誘われ、外に出る飯星。2人は街の中を歩き、とある廃墟の前に立つ。

廃墟の入口のガラス戸には、『CAFE(カフェ)』の文字が書かれている。

7 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:35:19.366 ID:qLSV7Ke/D.net
玄関のガラス戸を押して、建物の中に入る喪黒と飯星。

飯星「喪黒さん……。こんな廃墟で何をしようっていうんですか?」

喪黒「これから分かりますよ」

広い室内には、使われていない多くのテーブルやレジ台が見える。部屋の端へ向かう喪黒と飯星。

飯星「こんなところに、鏡がある……」

部屋の隅には、大型の鏡が置かれている。鏡は縦長の長方形で、人間の平均的な背丈よりも高い。

喪黒「飯星さん。さあ、行きましょう」

落ち着いた様子で鏡の中に入る喪黒。目を丸くする飯星。

飯星「か、鏡の中に入れるなんて……!でも、まあいい……」

飯星も、喪黒に続いて鏡の中へと向かう。飯星が鏡の中に入ると……。

飯星「こ、これは街ですか……」

とあるビル街の中にいる喪黒と飯星。

8 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:37:41.122 ID:qLSV7Ke/D.net
喪黒「はい。でも、この街は、現実世界の街とは一味違いますよ」

飯星「あっ!!」

喪黒と飯星が周囲を見渡すと……。街の中にある看板は、どれも文字が左右逆になっている。

喪黒「飯星さん。私たちは、鏡の中の世界にいるのですよ」

飯星「そ、そういえば……。街の中にある文字は、どれも左右逆になってますね……」

喪黒「それにこの街は、私たちを除いて人が一切いないのです」

飯星「なるほど……。ここは鏡の世界だから、俺らのような侵入者を除いて無人ってことですか」

喪黒と飯星がしばらく歩いていると……。耳をつんざくような轟音が突然、辺りに響く。

飯星「うわっ、うるさい!!一体何の音ですか!?」

ある方向へ向け、指を差す喪黒。喪黒が指を差した方を、飯星が見ると……。

飯星「か、怪獣がいる!!ジャドンがこんなところに……」

街の遠くの方で暴れるジャドン。この怪獣は、黄土色の恐竜のような姿をしている。

9 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:39:22.530 ID:qLSV7Ke/D.net
そう……、喪黒と飯星が聞いた轟音の正体は、怪獣ジャドンの鳴き声だったのだ。

口から火炎を吐き、ビルを次々と踏み潰すジャドン。不安な表情になる飯星。

飯星「も、喪黒さん!!ジャドンが街を壊してますよ!!逃げましょう!!」

喪黒「逃げる必要はありません。なぜなら、これがありますから……」

飯星に、ペンライトを渡す喪黒。ペンライトには、赤いボタンが付いている。

飯星「まるで、イオタカプセルみたいなデザインですね。ほら、スペシャルマンに変身するためのアイテムの……」

喪黒「そうです。あなたはこのアイテムを使って、スペシャルマンに変身するんですよ」

飯星「えっ!?」

喪黒「飯星さん!このまま、怪獣を放っておいていいのですか!?」

飯星「そ、そうですよね……」

喪黒から離れ、イオタカプセルを頭上に掲げる飯星。カプセルから発射された光が、飯星を包み込む。

10 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:41:18.866 ID:qLSV7Ke/D.net
人間の姿から、人型をしたあるものに変身する飯星。彼はみるみる巨大化し、怪獣ジャドンと同じ背丈になっていく。

銀色と赤色の全身をしており、胸に青色のカラータイマーが付いた巨大生物。それが変身後の飯星だ。声を発する飯星。

飯星「ゼアアッ……(これは……)!!」

自分の両手を見渡す飯星。彼の手と腕は、銀色と赤色になっている。

飯星(そ、そういうことか……。俺は本当にスペシャルマンに変身したのか)

スペシャルマンこと飯星の目に、遠くにいるジャドンの姿が目に入る。

飯星(ようし!!ジャドンは俺の手で倒してやる!!)

空を飛ぶスペシャルマンこと飯星。やがて彼は、ジャドンがいる現場へと着陸する。


スペシャルマンこと飯星は、怪獣ジャドンと肉弾戦を繰り広げる。

ジャドンに対し、パンチ、チョップ、投げ技、寝技で挑むスペシャルマンこと飯星。

11 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:43:19.325 ID:qLSV7Ke/D.net
一方、ジャドンもスペシャルマンこと飯星に対し、自ら攻撃をやり返していく。

ジャドンによる張り手、体当たり、頭突きを受けるスペシャルマンこと飯星。

ジャドンが口から吐く火炎から、すかさず身をかわすスペシャルマンこと飯星。

2人……いや、2体の巨大なものの肉弾戦で、足元にあるビルはさらに破壊されていく。

スペシャルマンこと飯星の胸元のカラータイマーが、青色から赤色に変化する。点滅するカラータイマー。

飯星「ジュ……、ジュアッ……(か……、身体が疲れてきた……)」

弱り始めるスペシャルマンこと飯星。しかし、彼はなおも力を振り絞る。

両腕を十字に組み、光線を発射するスペシャルマンこと飯星。彼の光線を受け、爆発するジャドン。

怪獣を倒し、安堵した表情のスペシャルマンこと飯星。彼は上空へと飛び去っていく。


とあるビル街にいる喪黒。喪黒の前に、飯星が駆け寄る。飯星はすでに、スペシャルマンから人間に戻っている。

喪黒「やぁ、おかえりなさい」

12 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:45:22.529 ID:qLSV7Ke/D.net
飯星「たった今、ジャドンを倒してきましたよ!!スペシャルマンに変身して……、自らの手で……」

感極まった表情の飯星。

喪黒「よくやりましたねぇ、飯星さん。さあ、帰りましょう」

街の中に、縦長の光る穴がある。その穴は、平均的な身長をした人間が通り抜けできる大きさだ。穴の中に入る喪黒と飯星。

2人が穴から出ると……。目の前の光景は、元の廃墟の内部になっている。あの、喫茶店跡地の――。

飯星「ど、どうも……!!いやぁ、もう……。夢のような体験ができて、本当にあなたには感謝しますよ!!」

喪黒「どういたしまして。ただし、飯星さんには約束していただきたいことがあります」

飯星「約束!?」

喪黒「そうです。あなたがスペシャルマンに変身をするのは、今回の1度だけにしておいてください」
   「今回の経験は、あくまでも飯星さんの新作漫画の構想のためですから……」

飯星「は、はあ……」

13 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:47:25.638 ID:qLSV7Ke/D.net
喪黒「一時的にいい夢を見たと思って、後の現実の生活を大切にするべきなのですよ。いいですね!?」

飯星「わ、分かりました……。喪黒さん」


テロップ「2年後――」

とある大型書店。雑誌コーナーには、漫画雑誌『週刊少年ジャングル』が山積みされている。

『ジャングル』の表紙を飾る飯星の新作漫画。主人公の絵の側に、「アニメ化決定!!」のキャッチコピーが書かれている。


夜。とある木造アパート。3人のアシスタントとともに原稿を執筆する飯星。彼は目にクマを浮かべ、眠気を必死でこらえる。

飯星(ううう……。売れっ子になったのはいいけど、今までよりも仕事の量が増えてしまった……)


午後。とあるコーヒーチェーン店。席で、編集者や原作者と仕事の話をする飯星。原作者が、飯星にシナリオ原稿を渡す。

原作者「これが、次の話のシナリオです」

飯星「はあ……、ど、どうも……」

14 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:50:12.821 ID:qLSV7Ke/D.net
編集者「飯星先生。これからは、タクミを物語のレギュラーに据えていきましょう」
     「彼は、女性読者の人気が高いんですよ!雑誌を売るために、タクミの出番を増やすべきです!」


とある街。しょぼくれた様子で道を歩く飯星。

飯星(俺の好きな分野である巨大ヒーローを、漫画の題材にしたものの……)
   (話は何から何まで、編集者と原作者が考えている。俺は、自分の描きたいように描かせて貰えない……)


とある木造アパート。自分の部屋に戻る飯星。

飯星(虚しい……。もう1度、スペシャルマンに変身できれば、ストレスが解消できるのに……)

部屋の床は多くのものが散乱し、足の踏み場がない。ものが散らばった床から、飯星は何かを拾う。彼が手にしたのは……。

飯星「あっ、イオタカプセルだ。もしかしたら、これはまだ使えるかもしれない」


喫茶店跡の廃墟。建物内に入った飯星が、ゆっくりと鏡へ向かう。大型の鏡の中をくぐる飯星。

鏡を抜けた飯星は、例の街にいる。看板の文字が左右逆になった鏡の中の世界だ。

15 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:52:24.021 ID:qLSV7Ke/D.net
飯星(よし……!俺は、ここへ戻ってきたんだ!)

街の中に現れる巨大怪獣。怪獣は、鳥が巨大化して化け物になったような姿だ。

飯星(鳥類怪獣ニワドロンが出た!!ならば、変身して戦うのみだ!!)

イオタカプセルを頭上に掲げ、スペシャルマンに変身する飯星。スペシャルマンこと飯星が、ニワドロンに立ち向かっていく。

肉弾戦を繰り返し、胸のカラータイマーが点滅するスペシャルマンこと飯星。彼は、必殺技の光線をニワドロンに浴びせる。

爆発し、砕け散るニワドロン。怪獣を倒したことを確認し、スペシャルマンこと飯星が安堵した時……。

喪黒「お待ちなさい!!」

スペシャルマンこと飯星の後ろに、聞き慣れれた声が聞こえる。彼が振り向くと……。

何とそこには、巨大化した喪黒が立っている。喪黒の身長は、スペシャルマンこと飯星と同じくらいになっているようだ。

喪黒「飯星昴さん……。あなた約束を破りましたね」

飯星「ヘ……、ヘアアッ(も……、喪黒さん)!!」

16 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:53:10.882 ID:nWujwVJP0.net
ヘアアッにカッコついてるとシュールだな

17 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:54:26.193 ID:qLSV7Ke/D.net
喪黒「私は言ったはずですよ。あなたがスペシャルマンに変身をするのは、1度だけにしておけ……と」
   「それにも関わらず、飯星さんはまたもスペシャルマンに変身しましたねぇ!」

飯星「ジュワッ……(すみません……)!!ジュワアアッ(どうしても、我慢できなかったんです)!!」

喪黒「約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」

巨大化した喪黒が、スペシャルマンこと飯星に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」

飯星「ゼアアアアアアアアアアッ!!!」


喪黒のドーンを受け、スペシャルマンこと飯星は遠くの山へと吹っ飛ばされる。

全身が光り輝き、スペシャルマンの姿から人間の姿へと戻っていく飯星。

飯星「ううう……。い、痛え……」

ゆっくりと起き上がる飯星。彼が気がつくと……、異様な光景が目の前に広がっている。

18 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/14(金) 23:57:50.110 ID:qLSV7Ke/D.net
飯星「こ、これはどういうことだ……!?」

数十メートルほどの背丈となり、ミニチュアサイズとなった街を歩く飯星。彼の胸や腰のあたりには、ビル群が見える。

飯星の歩行により、多くの車と群衆が逃げ惑う。街にある看板の文字は、左右逆……ではない。

飯星「ま、まさか……。俺は巨大化したまま、現実の世界に飛ばされてしまったのか……!?」

愕然とした表情となる飯星。そして、ある程度時間が経った後……。自衛隊の戦闘機が数機ほど、飯星の周りを飛び回り始める。

巨大化した飯星の身体に向け、一斉に爆撃を開始する自衛隊機。爆撃を受け、悲鳴を上げながらよろめく飯星。

飯星「ギャアアアアアアアアッ!!!」


とあるビルの屋上にいる喪黒。彼の後ろの遠くの街では、自衛隊機の攻撃を受ける巨大飯星の姿が見える。

喪黒「戦後の日本は、特撮大国として内外で知られており……。昔から今に至るまで、数々の特撮作品が生み出されてきました」
   「そもそも、特撮の魅力とは……。限りなく現実に近い空間の中で、非現実的な被写体が存在していることのギャップにあります」
   「だから、特撮に憧れる心理とは……。人間の無意識の中にある、非日常や異形のものへの憧れの表れとも言えましょう」
   「しかし、非日常や異形のものが魅力を持っているのは……。それらが現実世界に全く存在していないからに他なりません」
   「巨大ヒーローも怪獣も、現実の世界にいたら迷惑ですよ。だから、特撮はフィクションとして楽しむに限りますねぇ。飯星昴さん……」
   「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―

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