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喪黒福造「ほう、ぼっちなのですか。それはつらいですなあ」
- 1 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:18:01.91 ID:D0+DW04NO
- 喪黒「私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん」
喪黒「ただのセールスマンじゃございません」
喪黒「私の取り扱う品物はココロ……人間の心でございます」
喪黒「この世は老いも若きも男も女も心の寂しい人ばかり」
喪黒「そんな皆さんの心のスキマをお埋めいたします」
喪黒「いいえ、お金は一銭もいただきません」
喪黒「お客様が満足されたら……それが何よりの報酬でございます」
喪黒「さて、今日のお客様は……」
≪出雲 一人(いずも かずと)(19) 大学2年生≫
オーッホッホッホッホッホ……
「ぼっち」
- 2 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:19:58.92 ID:D0+DW04NO
- −−某大学講義室−−
教授「・・・というわけで、今日の講義はここまで。予告通り、中間試験は来週の講義に行う」
学生A「あー、終わった終わった。おい、B、過去問よこせよ」
学生C、D「「俺も俺も」」
学生B「今コピーしてくるから、ちょっと待ってろ。お前ら飯おごれよ」
一人「・・・」
一人「(過去問なんて、コネのない僕には入手できない)」
一人「(そのせいで、1年の時からずっとテストもレポートも一人でこなしてきた)」
一人「(みんな楽して単位取ってるのに、僕は苦労してるのに何単位も落としてしまった)」
一人「(気を取り直して、昼食でも食べに行くか)」
−−某大学食堂−−
陽キャA「でさー、こないだこんなことがあってさー」
陽キャB、陽キャC、ビッチA、ビッチB「「はは、受けるー」」
一人「(またあの連中がテーブル席を占拠している)」
一人「(やっぱりいつも通りコンビニで買って空き教室で食べるか)」
- 3 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:20:33.82 ID:D0+DW04NO
- −−帰り道−−
一人「(今日も大学で全く誰とも会話がなかった)」
喪黒「あの〜、すいません。ちょっと道を尋ねたいのですが」ヌウッ
一人「うわっ」ビクッ
喪黒「○○駅まではどのように行けばいいでしょうか」
一人「○○駅なら、こ、この道を、ま、ま、まっすぐ行って、それで・・・」オドオド
喪黒「失礼ですが、要領を得ない話し方ですな」
一人「か、家族以外の人と話すなんて、久しぶりで・・・」
喪黒「それはそれは。実は私こういう者です」スッ
一人「ココロのスキマをお埋めします・・・?」
喪黒「立ち話も何ですし、私の行きつけの店で詳しく聞かせていただきたいのですが」
一人「はぁ」
一人「(あれ?○○駅に行きたいんじゃなかったっけ?)」
- 4 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:21:52.43 ID:D0+DW04NO
- −−BAR 魔の巣−−
一人「僕は、小学生のころから友達がいませんでした」
〜〜小学生時代の回想〜〜
ババア教師「修学旅行の班決めをしましょう。自由に組んでいいですよ」
イッショノハンニナロウゼー オマエモコッチノハンニハイレヨー ワイワイ
一人「(どの班からも誘ってもらえない)」
ババア教師「あらー、出雲君、班に入れてもらえないのー?」
ババア教師「はいはいみんなー、出雲君が嫌なのは判るけど、入れてあげなさーい」
ドッ ハハハ
班長A「やだよそいつ入れるの」
班長B「俺もやだね」
班長C「同感」
班長A「じゃんけんで負けた班に入れることにしようぜー」
班長B「それいいな」
班長A、B、C「せーの、じゃんけん・・・」
- 5 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:22:16.20 ID:D0+DW04NO
- 一人「と、こんな感じでした」
一人「中学も高校も、似たようなものです」
喪黒「それはお気の毒に。最近は、一人ぼっちの人間を『ぼっち』と呼ぶらしいですな」
一人「ええ、そうですね。概念自体はずっと前からあるのでしょうけど」
喪黒「そんな出雲さんにいい物を差し上げます。これをどうぞ」スッ
一人「何ですか?この気味の悪い植物は」
喪黒「これはウツボカズラという名前の食虫植物です」
喪黒「ですが、出雲さんのような方のために、改造が施されております」
喪黒「この袋状になっているところに虫を入れると、まるで食虫植物が昆虫を引き寄せるように、
出雲さんの周りに人が寄ってきます」
一人「本当ですか?ありがとうございます」
喪黒「ホッホッホ、幸運を祈っています」
- 6 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:22:44.00 ID:D0+DW04NO
- −−次の日 出雲のアパート−−
一人「あー、よく寝た」
一人「そういえば、喪黒さんからもらったウツボカズラに何も与えてないな」
ハエ「ヨロシクニキー」ブーン
一人「あ、ハエだ。殺虫スプレーで」シューッ
ハエ「グエー」ポトッ
一人「これをウツボカズラに・・・」ポトッ
ウツボカズラ「ショウカエキシュワー」
- 7 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:23:09.97 ID:D0+DW04NO
- −−講義室−−
一人「本当に人が寄ってくるのかな」ドキドキ
学生B「よう、出雲」
一人「あ、ああ、B君か。おはよう」
学生B「そういえば、過去問を渡してなかったな。ほら、コピーしといたから、やるよ」
学生A、学生C、学生D「ういーっす」
学生B「おお、お前らか。この講義は出席取らないから、さぼって雀荘にでも行かねえ?
出雲、お前も来いよ」
一人「で、でも、やったことないし・・・」
学生B「そこはCが手取り足取り教えてやるから、心配するな」
学生C「なんで俺なんだよ」
ワハハ
- 8 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:23:39.35 ID:D0+DW04NO
- −−雀荘−−
ロン、マンガン オマエハジメテニシテハセンスアルナー ワイワイ
一人「(初めて病気以外で講義をさぼってしまった。でも、なんかいい感じだ)」
学生A「結局2コマ目もさぼっちまったなー。飯食ったら3コマ目は真面目に出席するかー」
学生B「そうだな」
学生D「みんな食堂行こうぜー」
−−帰り道−−
一人「(あの後、一緒に食事して、一緒に雑談して・・・)」
一人「(他人と会話したり、遊んだりしたのなんて、何年ぶりだろう)」
一人「(喪黒さんからいい物をもらったな)」
- 9 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:24:00.27 ID:D0+DW04NO
- −−数日後 出雲のアパート−−
一人「ああ、もうこんな時間!講義に遅れる」
一人「ウツボカズラにハエを与えて」ポイッ
一人「いってきまーす」
−−講義室−−
一人「ふう、何とか間に合った」
花子「みんな、おはよう」
女学生A「花子、おはよう」
一人「(高嶺花子さんだ)」
一人「(美人で優しくて明るい、僕の憧れの人)」
学生A、B、C、D「うぃーっす」ドカドカ
一人「あ、おは・・・」
一人「(あれ?みんな遠い場所に座った)」
一人「(ちゃんと毎日餌を与えてるのに、どういうことだ?)」
- 10 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:24:24.02 ID:D0+DW04NO
- −−帰り道−−
一人「(結局、今日は誰とも会話がなかった)」
一人「(以前の状態に逆戻りだ)」
喪黒「出雲さん、調子はいかがですかな?」ヌウッ
一人「うわっ、喪黒さん。餌を与えたのに、人が寄り付かないのですが」
喪黒「それは、ウツボカズラが贅沢を覚えて、より大きな餌を要求してるのでしょう」
喪黒「効果も大きくなりますが、要求もどんどん大きくなります」
喪黒「それと、忠告しますが、ウツボカズラに頼って孤独から抜け出してるだけなのです」
喪黒「出雲さん自身が変わらない限り、単なる一時しのぎです」
喪黒「ウツボカズラは、これからもっと大きな餌を要求するでしょう」
喪黒「どうなっても知りませんよ」
一人「わ、わかってますよ」
- 11 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:24:53.59 ID:D0+DW04NO
- ※【閲覧注意】動物虐待のシーンが出てきます。作者は決して動物虐待を肯定しません
あくまで、ストーリーの都合上の演出です
−−数日後 出雲のアパート−−
一人「ハエからゴキブリ、ネズミなど、どんどん餌を大きくしたが、効きが悪くなってる」
一人「もっと大きな餌と言ったら・・・」
−−夜 小道−−
猫「ニャー」
一人「すまん、恨みはないが」ザクッ
猫「グエー」
−−出雲のアパート−−
一人「ほら、餌だぞ」
一人「とりあえず、右腕を」ポイッ
ウツボカズラ「ウマウマ」
一人「ほかの部位も合わせれば、数か月は持つだろう」
一人「なくなったら、また捕まえてくればいいさ」
- 12 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:25:15.71 ID:D0+DW04NO
- −−次の日 講義室−−
一人「おはよう」
学生A、B、C、D「うぃーっす」
一人「よいしょっと」ドカッ
一人「次の講義の教科書を・・・」ゴソゴソ ポロッ
一人「ああっ、消しゴムがっ」テノバシー
花子「」テノバシー
リョウテフレアイー
一人「あっ」
花子「あっ」カァァ
一人「あっ、ありがとう、高嶺さん」
花子「いっ、いえっ」
- 13 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:25:37.50 ID:D0+DW04NO
- −−講義室 4コマ目−−
教授「・・・では、今日の講義はここまで」
オワッタオワッター
花子「あ、あの、出雲君、一緒に帰らない?」
一人「あ、ああ、いいよ」
一人「(高嶺さんから誘われるなんて、夢みたいだ)」
−−帰り道−−
一人「・・・ということがあったんだよ」
花子「ふふっ、仲良さそうでうらやましいわ」
一人「あ、僕の家はこっちだから、ここで」
花子「出雲君、私の家に来ない?」
一人「え?いいの?」
花子「もちろんよ。最近、出雲君のことが気になってたの」
一人「(これもウツボカズラに猫を与えたおかげだ)」
- 14 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:28:24.61 ID:D0+DW04NO
- −−高嶺のアパート−−
花子「ここが私の家よ」
一人「お邪魔しまーす」
一人「(広くて清潔で、いい匂い・・・)」
花子「あ、ちょっと待ってて。餌を与えてこなきゃ。見ちゃだめよ」
一人「(餌?何を飼ってるんだろう)」
ゴリゴリッ ボトッ
一人「何の音だ?見に行こう」
ウツボカズラ「エサー モットオオキイノー」
一人「な、なんで高嶺さんがウツボカズラをっ、それに、このバラバラ死体は・・・」
花子「あら、見られちゃったわね」
花子「出雲君も、餌になってくれるわよね?」
一人「あ、あ、あ・・・」
一人「ギャーーーーーーーーーーーーーー!!」
- 15 :以下、VIPがお送りします:2018/12/30(日) 14:28:55.19 ID:D0+DW04NO
- 喪黒「確かにぼっちはつらいものです」
喪黒「しかし、たいていは自分でそうなる原因を作っているものです」
喪黒「それが身分相応だと妥協するか、自分を磨いてぼっちから脱出するかは、その人次第です」
喪黒「そういえば、数年前、孤独な高嶺さんに出雲さんと同じウツボカズラを与えた気がします」
喪黒「まあ、そんなことはどうでもいいですけどね」
喪黒「ホ〜ッホッホッホッホッホ……」
おわり
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