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昔書いたラノベもどきが出てきた
- 1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:41:08 ID:nofRFlFQ0.net
- 捜査推移関係の報告書やその過程で申請取得していた礼状許可証の類。始末書や備品持ち出し書類、その他も雑多に山盛りに。
それらを処理する合間にふと気づいて声を上げた。
「なあ。俺らって異能よりも先に紙に圧殺されるんじゃないか?」
「手、動かしてください」
隣席からの部下の冷たい声にため息をつく。まあ部下と言っても形式上のものでしかなく場合によっては彼女の判断が彼のそれよりも優先されるのだが。
「つってもよ、マジで多すぎだろ。紙の富士山じゃねえかこれ。もう神々しいほどだぞ」
「なら心臓止めてください」
「本当、多いんだって……」
実際多い。他の課と比べて数倍、場合によっては数十倍に上ることもある。
「いつものことです」
「それが良くないんだよ。ずるずる増えてそのうちこの部屋埋まるようになる」
「なりません」
「ならないけども」
ため息。
- 2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:42:04 ID:aQNg3Y+e0.net
- 紙の富士山にすべてが詰まってるな
- 3 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:42:07 ID:xJPkUJVi0.net
- http://image.zhuizhuiimg.com/picture/offcial/a30cdea3c9b68dec76805f14b8b69dbb.jpg
http://image.zhuizhuiimg.com/picture/offcial/d100e5cc48921a8fadfeeb984aef09af.jpg
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- 4 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:42:07 ID:nofRFlFQ0.net
- まあ仕方のないことではある。
近年増えてきた異能関連事件への対策としてできたこの課は当たり前だがまだ新しい。
そのため運用にはいまだ上が慎重な姿勢を崩していない。
もちろん異能事件の被害は甚大で対処する必要はあった。警察の対処不全に対する世間からの風当たりも強かったからだ。
だが、対策措置を取りましたと喧伝して異能事件件数が減らなかった、ならまだしも(よくはないだろうが)不祥事が増えただけとなってはもちろん都合がよろしくない。
そのための書類による厳しい管理というわけである。
(どえらい『不祥事』を起こせる部署だしな)
異能は単純に強力だ。対策する側も自然、それと同等の力を集めることになる。
暴走した場合の被害規模は異能事件とそう変わるところはないだろう。
世間からの糾弾の声はもちろん上層部はその被害範囲に自分たちが含まれることも恐れているはずだった。
「いっそのこと暴走してみるか」
「聞かなかったことにしますから仕事再開してください」
- 5 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:43:28 ID:nofRFlFQ0.net
- 諦めて書類の一枚を取り上げる。
目に映るのは先日処理した事件だ。
「……いやーな感じだったな」
パソコンのキーボードをたたく部下の指が止まった。
妖刀種の異能関連事件。まだ世間向けには連続通り魔事件としてしか発表されていないが。
妖刀種事件は寄生怪異種事件、感染種事件に分類される。
異能が寄生虫や病原体のように宿主に憑りつき支配して起きる事件だ。
解析係の報告によるとまさしく宿主を侵食し、意識を徐々に融解、肉体をも変質させていく異能具だったらしい。
そして血を好む。というより人の血をその身の構成物質としているらしく宿主を操り定期的に摂取に駆り立てる。
単体では動くこともままならないあたりは確かにウイルス然としているが、感染した者を弱らせ潰していくところまでよく似ている。
あの若者の最期の表情を思い出す。
きっと若者に罪はない。悪意はなかっただろうと思う。
恨むならお前の運命とその刀を――
「許せません」
部下の声にふと目を開いた。
「許せません」
その横顔には何の表情も浮かんでいない。
怒りも憎しみも悲しみも。
静寂だけが部屋を満たした。
何度目かのため息。
「……そろそろ行くか」
「ええ」
彼と部下は立ち上がった。
- 6 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:44:15 ID:42+kM0+Q0.net
- 部下名前で呼んでやれよ
- 7 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:44:44 ID:nofRFlFQ0.net
- 汚れた路面やら臭気を放つゴミ袋やら。
整然とは程遠いあれこれを目の端に流しながら路地裏を突き進む。
調べはついていたのですぐに到着した。
あの若者が妖刀を手に入れた武器店……ではない。移転先だ。
前の武器店はすでにもぬけの殻になっていた。
「警察の方が一体何用で?」
薄暗いが思いのほか広い店内に踏み込んだところで店主の声がした。
「みすぼらしいところかもしれませんがねえ、ちゃんと取扱いと販売の許可は得てやってますよ」
横幅だけはやたらとある背の低い男がどんよりとした目でこちらを見上げていた。
「いや、大したことじゃないんですがね。定期の巡回ですよ。もしかして最近移動してきたんでご存じない?」
少し言葉でつついてやると店主はフンと鼻を鳴らした。
「それで私は何をすれば?」
「許可証と品物のチェックをさせてもらえれば」
- 8 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:45:46 ID:nofRFlFQ0.net
- 店主はうなずいて後ろに積まれていた箱に手をかけた。
「ではまずこちらから」
拳銃から始まって刀剣類、単純な鈍器形状の護身具など。
品は他の武器店と変わったところもなく検査は滞りなく進んだ。
「あの箱は?」
部下が声を上げたのは残りあと数品といったところだった。
彼女の視線を追うと部屋の隅の細長い箱が目に入った。
刀がぴったり収まりそうな箱ではある。
目で問うが店主は何も答えなかった。
部下が箱の方に足を向ける。
そして、空気が裂けた。
- 9 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:47:12 ID:nofRFlFQ0.net
- ビッ、と血の飛沫が宙に散った。
彼が額の傷の痛みを自覚したのは、その赤色を目に収めてからだった。
店主の舌打ちが聞こえる。悪態も。
「ついてねえな、クソ!」
古刀を提げ仁王立ちする鬼が一体。
「異能対策課が来るなんて聞いてなかった!」
「言ってないしな」
つぶやいて、避けるために崩れた体勢を立て直す。身構える。拳銃はすでに抜いている。
推測するに先ほどの箱には何も入っていない。中身は店主のそばに隠されていたようだ。
「妖刀か?」
「ああそうだ! この店の三振りの内で最も強い異能具! てめえなんざすぐにぶった斬ってやる! 女はその次だ!」
「それは怖い」
距離を狭めてくる男に慎重に狙いをつけながら答える。
その腕に目をやると筋肉がいびつに肥大化していっているのがわかった。
妖刀というのは間違いないようだ。
「その怖いのもすぐに終わりだ」
「みたいだな」
「あ?」
「もう怖くなくなった」
店主の体がひしゃげて吹き飛んだ。
「異能照合項目を満たしました、これより第一種対処行動に入ります」
「後は頼んだ1025……以下略号」
「はい」
拾った刀を手に、声だけを残して彼女は店主へと踏み込む。対異能戦闘用汎用型兵器の威力をたたきつけるために。
ここからは彼女の領域だ。彼の判断よりも彼女の判断の方が優先される、そういった場面だった。
- 10 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:49:26 ID:nofRFlFQ0.net
- 彼女はあの事件を許せないと言った。
言ったからには許せないことなのだろう。そういう部下だ。
とはいえ許せないからどうこうしたい、どうこうするつもりだ、というわけではない。
許せないことと職務は別らしい。
ただ、許せない、とそれだけだ。
彼女は力で圧倒する。
異能という不可思議に対してその威力だけで押しつぶす。
そして。
「シッ――!」
呼気一つを残して、彼女は鬼の胸を踏み抜いた。
もう片方の足で刀の腹を。
鬼はそれだけで死んだりはしないし刀も折れたりはしないがそれでも店主の動きは止まった。
「終わりました」
「ああ」
彼はうなずいて歩み寄る。
彼女のドライさとは反対に彼はウエットな方だと自分では思っている。
あの若者の事件には夢見の悪い災難だったぐらいの認識しかないが、正直なところそれでも心の端に引っかかって引きずってしまっていた。
だからせめて職務の上ではけじめをつけたいと思っている。
「く、そ……」
うめく店主にかがみこんだ。
「お前の狙いは何だろうな。ウイルスもどきを振りまいて何がしたい? テロか?」
「テロなど……! 我々は正当な……!」
「いやまあ知らんよ。実のところ興味もない。偉大壮大な夢物語は取調室でぶちあげてくれい」
それだけ言って店主の手首を撃ち抜いた。力を失った手が妖刀を手放した。
- 11 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:51:38 ID:nofRFlFQ0.net
- ……
今回の騒動分でさらに書類仕事が増えた。
紙の海に溺れながらぼんやりと思う。
あれで何か気持ちが晴れたわけではない。
曖昧なまま全てが過ぎ去ってしまったような気がする。
まあ自分の憂さ晴らしに職務を利用するのも違うだろうが。
ため息をついていると隣から声がした。
「仕事してください」
積み重なった書類の山に隠れて見えはしないが、彼女がいつも通りキーボードをたたいている姿は容易に想像できる。
わかってる、と答えたもののなかなか手は動かなかった。
「我々は暴走してはいけません」
「? なんだ急に」
「いっそのこと暴走してみるか。あなたが言ったんですよ」
「……だったかな」
いつの間にか隣席のキーボードの音は止んでいた。
「わたしは許せない、と思う。あなたは夢見が悪い、と思う。だからこの仕事を続ける。続けられる」
「くだらない理由じゃないか?」
「続ける理由として成り立つのならば理由の正当性はどうでもいいと判断します」
「乱暴な」
「乱暴でも事実ならば認めるべきです」
「……」
「そして、続けたいと思うのならば暴走はしてはいけません」
「なぜ?」
「続けられなくなるからです」
自明の理だ。
苦笑が漏れる。こいつも言うようになったな。機械兵器のくせに。
キーボードが、再び鳴りだした。
- 12 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:52:31 ID:nofRFlFQ0.net
- ここで途切れている……
- 13 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:53:20 ID:Mc2592Mup.net
- 昔と書けば何言われても耐えられるよな
- 14 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/03/25(水) 15:56:18 ID:nofRFlFQ0.net
- 昔なのは事実だもの
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