2ちゃんねる スマホ用 ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

( ФωФ)魔王は隠居したいようです

1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:12:57.190 ID:0gMPVY+G0.net
たって

2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:13:28.775 ID:Bvw6mb/Jp.net
見てるぞ

3 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:13:28.803 ID:Bz+1d3JU0.net
外でホモセしたいんだけど
普通に浣腸とか使わずにうんこ出るの待って
うんこ出たらアナルにウイダーinゼリーをローション代わりに使うのあり?
尿道にうんこ入るとまずいかな?

4 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:14:04.328 ID:0gMPVY+G0.net
複数のまとめサイトさんにまとめていただいておりました。
感謝。


http://morikinoko.com/archives/52153394.html(森キノコさん)

http://s2-d2.com/archives/26382001.html(SS Daydreamさん)

http://ss-letgogo.blog.jp/archives/1077835274.html(SSでレッツゴー)

5 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:16:01.822 ID:0gMPVY+G0.net
.

2:姫様、魔王にキレるってよ


 * * * * *



《ヴィップの森》のとある場所では火の手が上がっていました。
その理由は燃え盛る馬車があったからです。


ミセ;*゚ー゚)リ「いったー……ねえトソン、大丈夫!?」

(゚、゚;トソン「ええ、なんとかね……」


大破した馬車の傍には先の女性達、ミセリとトソンの姿がありました。
二人は全身煤だらけな上に衣服はボロボロで、命からがらといった感じでした。


ミセ;*゚ー゚)リ「まさか地雷キノコに直撃するとは思わなかったよー……」

(゚、゚;トソン「しかも群生してるなんて……なんで馬が気付かなかったのかしら……」


地雷キノコ――その名の通りに爆発する不思議なキノコで、湿地帯や亜熱帯の地域に多く見られる植物です。
火薬のような強烈な香りを持つので、普通なら気付かないことはないのですが、

彼女達の操作していた馬は存在にまったく気づかないまま突っ込んでしまったようでした。
しかも群生していた為、爆発の規模は超大なものとなり、森の一画すら吹き飛ぶ程でした。

そんな状況でも見事に生存している二人ですが、それほど緊張感や危機感と言ったものはなく、
むしろ慣れたような感じでした。

.

6 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:18:26.607 ID:0gMPVY+G0.net
.

ミセ;*゚ー゚)リ「これもやっぱり姫さまの《呪い》かー……《ヴィップの森》なら神秘や神格でどうにかなると思ったんだけど、
       その油断がダメだったねー……」

(゚、-;トソン「そりゃね、姫様の代まで続く《呪い》だもの。それこそ神様に直接愛されでもしないと……」


燃え盛る馬車と木々を眺めながら二人は深い溜息をつきます。


ミセ;*゚ー゚)リ「……で、その姫さまはどこ、トソン?」

(゚、゚;トソン「そりゃ、姫様のことだから、ピンピンしてるわよ」

ミセ;*゚ー゚)リ「いやだから、そのピンピンした姫さまがどこにも見当たらないんだけど?」

(゚Д゚;トソン「え……」


トソンは慌てて付近を見渡します。
しかしどこにも目的の人物の姿はなくて、今度は地を這い蹲り、草の根すら分けて探し始めました。


(゚Д゚;トソン「姫様!?デレ姫様!?どこにおいでなのですか!?御無事ですかー!?」

ミセ;*゚ー゚)リ「いや落ち着いてよトソン!別に姫さまがミジンコになった訳でもないんだから……」

(゚、゚;トソン「でもどこかに倒れてるかも分からないじゃないのよ!」

ミセ;*゚ー゚)リ「そうは言っても……ここら辺に姫さまの気配はないよー」


そう言ったミセリは景色を見つめ、静かに立ちあがるとトソンへと歩み寄ります。

.

7 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:19:56.003 ID:0gMPVY+G0.net
.

ミセ;*゚ー゚)リ「これはー……一人で思いっきり吹っ飛んじゃったみたいだねー」

(゚、゚;トソン「そんなっ……もしそれで姫様のお顔に傷の一つでもついてたら!」

ミセ;*゚ー゚)リ「大丈夫だよー、あれで姫さまも悪運が強いし。幸運は最低な程にないけど」
           ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
(゚、゚;トソン「「そりゃ悪に愛されてるから当然でしょ!」
                                    ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ミセ;*゚ー゚)リ「だからこそ滅多なことじゃ死なないんだってば。悪に心底愛されてるから……」


パニック寸前のトソンを諭しつつミセリは一つの方角を指差します。
それは《ヴィップの森》の中心部、女神様の湖畔へと向かう方角です。


ミセ*゚ー゚)リ「それに、まだ香りも息もする。立派に生きてるよ!」

(゚、゚;トソン「あ、あんたがそう言うんならいいけど……」

ミセ;*゚ー゚)リ「ただ……」

(゚、゚;トソン「え?なに?」
   _,
ミセ;*゚ー゚)リ「ちょっとばっか、変な奴がいるみたい……」

(゚、゚;トソン「《ヴィップの森》に生きる者の気配って……動物とかじゃないの?」

ミセ;*゚ー゚)リ「ううん、そういうんじゃない。なんだかもっとおぞましくて、
       おどろおどろしいような……」

(゚、゚;トソン「それって姫様のことじゃ……?」

ミセ;*゚ー゚)リ「ううん、そうじゃない」

.

8 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:21:09.408 ID:0gMPVY+G0.net
.

ミセリはトソンの手を引くと、少々緊張した表情をつくります。



ミセ;*゚ー゚)リ「化け物……」

(゚、゚;トソン「え……?」

ミセ;*゚ー゚)リ「…得体のしれない《禍々しい何か》かなぁ……」



二人は歩き始めます。森の中心部へと向かって。

そこに史上最強の覇者が待ち受けているとも知らずに。

.

9 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:22:38.245 ID:0gMPVY+G0.net
.

 * * * * *



ζ(- -*ζ「ん……?」


静かに目を覚ました桃髪の少女は身体を起こしました。

最初に気付いたのは木造家屋独特の温かな匂い。
見上げると木造の天井が目に映り、ついで窓から緩やかな風が入ってくるとくすぐったさを覚えました。

身体に掛かっているのは真っ黒な外套で、それを手繰り寄せた少女は肩に羽織るのです。


ζ(゚ー゚*ζ(ドレスがボロボロだ……この外套、少しの間だけでもお借りしていいかな……)


記憶が混乱している少女は、何故に衣服が台無しになっているのかを考えます。
そうすると、微かに香る火薬の臭いが記憶を呼び覚まし、ああ、と彼女は手を打つのです。


ζ(゚- ゚*ζ「そうだ、確か馬車が地雷キノコに直撃して、それで私だけが吹き飛んで……」


思い返しつつ、次第に彼女は危機感を覚えるのです。
何だか大変な事実を忘れている気がすると。

.

10 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:24:35.144 ID:0gMPVY+G0.net
.

イ从゚ ー゚ノi、「ね、ね、目が覚めたよあの女の子!」

リi、゚ー ゚イ`!「本当だ!よくこんなところで眠れるなぁ……」

ノリ,;^ー^)li「しーっ、声が大きいわよ!気付かれちゃうじゃない!」


ふと、記憶を漁る彼女は小さなささやきを聞いて現実へと引き戻されました。

窓辺を見てみると、そこには小人のような小さな何かが群がっており、
一様に可愛らしい見た目で、背中には蝶のような羽が生えていました。


ζ(゚- ゚*;ζ「よ、妖精……?しかもこんなにたくさんの……」

イ从;゚ ー゚ノi、「わー、気付かれた!逃げろ逃げろー!」

リi、゚ー ゚;イ`!「ううぅ、やっぱりなんだか胸がイガイガするぅ……」

ノリ,;^ー^)li「あんまり関わっちゃダメよ!あの子、可笑しいんだもの!」


妖精――神秘や神格の体現と謳われる奇跡の存在。

滅多にお目に掛かれない貴重な存在ですが、そんな奇跡が複数体存在していました。
それを見て、彼女はようやっと実感を得るのです。

.

11 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:26:07.660 ID:0gMPVY+G0.net
.

ζ(゚- ゚*ζ「そっか、じゃあ、ここは本当に《ヴィップの森》……」


彼女はこの森を目的として旅をしていました。
彼女にはお伴が二人いましたが、その二人の姿はどこにもありません。


ζ(゚- ゚*ζ「トソン、ミセリ……無事だといいんだけど……」


しかし人の心配をしている場合ではないのです。
何故ならば彼女は現状、異常な場所にいるからです。

確かに《ヴィップの森》は美しく素敵な桃源郷でしたが、しかしそれもつい数日前までの話。
今、この森には世界を震撼させる恐怖の大権現がいるのです。


( ФωФ)「む。目覚めたか、小娘」

ζ(゚д゚*;ζ「えっ……」


ぎしぎしと床を軋ませながら大男が姿を見せました。

簡素な黒い服を着こむ大男は、手には桶のようなものを持ち、
その中をのぞいてみると活きのいい魚が複数泳いでいます。

.

12 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:27:35.272 ID:0gMPVY+G0.net
.
   _,
( ФωФ)-3「散々泣き喚いたかと思えばいきなり倒れおって。
         貴様、どれだけ滅茶苦茶な小娘なのだ」


呆れたように言う大男。八尺にも迫る巨躯はとんでもない威圧感を放ちます。


ζ(゚д゚*;ζ「あ、ああ……、やっぱり夢じゃなかったのね……!?」


少女は大男を見つめると段々と青褪め、黒い外套を抱きしめるとベッドの端まで逃げるのです。

しかし彼女の怯えも仕方のないことでした。
何故ならば、今、彼女の傍に立っている大男こそは世界が恐れる大悪党。


ζ(゚д゚*;ζ「魔族の頭領、魔王ロマネスク……!」


それこそは魔王ロマネスク。

シタラバ大陸を支配し、魔の統率者として名を轟かせる最強の覇者。
数多くの伝説は大げさなものばかりで、一夜で複数の国を亡ぼしただとか、
一度暴れると天地すらも悲鳴を上げると言われています。


ζ(゚д゚*;ζ「そんなあなたが、何故この森に……?」
   _,
( ФωФ)「あぁん?」


名を呼ばれ、疑問まで寄越されたロマネスクは眉間に皺をつくります。

.

13 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:29:25.679 ID:0gMPVY+G0.net
.

ζ(゚Д゚*;ζ「まさか、女神様をも手掛けようとしているんじゃ……!
        そ、そうはいかない!この私がそんな真似を許さないわよ!」

( ФωФ)⊃「……何を一人で盛り上がっているかは知らんがな、
         とりあえず食え、小娘」


言葉を遮り、ロマネスクは桶を少女へと突き出しました。
面食らった彼女は、波を打った水に頬を叩かれ、濡れた部位を手で拭います。


ζ(゚ー゚*;ζ「く、食えって……」

( ФωФ)「何はどうあれ客人は客人だ。この森は吾輩の拠点、住まい、城も同義よ。
        形はどうであれ、もてなしと言うのは必要だろう」

ζ(゚ー゚*;ζ「え……え?」

( ФωФ)「別に貴様は攻めにきたわけではないのだろう?」

ζ(゚ー゚*;ζ「そ、それは当然……」

( ФωФ)「ならば食え。そしてもう二度と急に倒れるな。
        あとその外套はお前の寝間着ではない、吾輩のものだぞ」

ζ(゚д゚*;ζ「え、わっ……ま、魔王の外套を着こんでいただなんて……!」


慌てて脱ごうとする少女ですが、しかしそうするとボロボロのドレスが姿を見せます。
それに一瞬赤面する彼女ですが、それを見て察したロマネスクは、やっぱり後でいい、と言いました。

.

14 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:31:18.331 ID:0gMPVY+G0.net
.

( ФωФ)「活きのいい魚を持ってきたぞ。今のところ手頃な食料は魚くらいだったのだ」

ζ(゚ー゚*;ζ「え、えぇと……」
   _,
( ФωФ)-3「いいか、それを食ったら早いところ用事を済ませて出ていけよ。
          いくら客人と言えど急な来訪と言うのは無礼でしかないからな。
           つまりは非常識なのだ。分かるか?」

ζ(゚ー゚*;ζ「い、いや、あの、えっと?」
   _,
( ФωФ)「なんだ、先からしどろもどろとしおって……ハッキリせんやつだな」


先から少女は驚いていました。何せ噂の大悪党と言えば甲斐甲斐しいのです。
そこに優しさがあるかは不明ですが、見ず知らずの、しかも種族の異なる存在を対等のように扱うのですから、
彼女は信じ難い光景を見ている気分でした。


ξ;-听)ξ-3「あんたねぇ、さっきから黙って聞いてりゃ……やれ吾輩の森だとか、やれ生魚を食えだとか、
         挙句はさっさと出てけだとか……どんだけ我儘かつ身勝手な糞ヤローなのよ」

(#ФωФ)「あぁん?貴様こそ土足で我が住まいに踏み入るとは不躾にも程があるぞボケ神!」


足音も響かせずに近づいてきたのは女神ツン=デレでした。
呆れ果てた様子の彼女ですが、混乱している女の子を見て同情を抱くのです。

.

15 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:32:51.301 ID:0gMPVY+G0.net
.

ξ゚听)ξノシ「ああ、ごめんね、この筋肉野獣ったらバカだから……生魚なんて寄越されても困るわよねー」

(#ФωФ)「誰が筋肉野獣だおい!」

ξ゚听)ξ「とにかく、あんたは余計なことすんじゃないの。いい?
       人間ってのはデリケートにできてんのよ。しかも歳若い女の子ならなおさらよ」


ベッドに腰かけたツン=デレは女の子の顔を見つめます。


ξ゚听)ξ「…あなた、名前は何て言うの?」

ζ(゚ー゚*;ζ「えと、デレと言います。あなたは……?」

ξ゚ー゚)ξ「私はツン=デレ。女神をやってて、この森を守護している、いわば番人ってやつよ」


女神と聞いてデレ姫は目を見開き、食い掛からん勢いで迫りました。


ζ(゚Д゚*;ζ「あ、あのあの!私、その、あなた様にお願いがあってきたのです、女神様!」

ξ;゚∀゚)ξ「ちょいちょい、落ち着いて、デレちゃんとやら。すごい近いから!」

ζ(゚ー゚*;ζ「あ、す、すみませんっ……つい、その……」

ξ;゚听)ξ「いやぁ、まぁ分からなくはないよ。こんだけ超至近距離になると、
       こりゃいよいよ私ですら頭が痛くなるもんねー……」

.

16 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:33:42.055 ID:0gMPVY+G0.net
.

頭をさすりつつツン=デレはベッドから立ち上がり、デレを見下ろしました。


( ФωФ)「どうした、いよいよ頭が狂ったか」
                                                   ・ ・ ・
ξ#-听)ξ「黙りなさいおバカ。マジで凄い魔性が宿ってるわよ、この子……いいえ、この血には」
   _,
( ФωФ)-3「…ふん。おい、小娘」

ζ(゚ー゚*;ζ「は、はいっ」

( ФωФ)「この魚、いらんのか?いらんのなら吾輩が食うぞ」

ζ(゚ー゚*;ζ「えと、今は食欲がありませんから、どうぞ……」

( ФωФ)「そうか。では――」

ξ゚听)ξ「待ちなさいバカロマネスク」

( ФωФ)「あん?」

ξ゚听)ξ「せめて焼いてきなさい。お願いだから。なんか絵的にヤバイ気がするから」

( ФωФ)「何がだ」

ξ#゚听)ξ「いいからしてきなさいよ!その方が美味しいから!塩も使って食べなさい!」
   _,
( ФωФ)「何を口喧しくしておるのだ、この間抜けは……ったく」


呟きつつ、ロマネスクは指を鳴らします。
すると、たったそれだけの動作で炎が生まれ、生魚を包み込みました。

.

17 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:36:11.810 ID:0gMPVY+G0.net
.

ξ#゚听)ξ「……芳しい香りと美味しそうな空気をどうも、このクソバカ魔王」

(*ФωФ)「ふふん、欲しいか?残念だがやらんぞ……うむ、やはり美味いな、この魚!」モグモグ

ξ#-Д-)ξ-3「…もう黙ってなさいよ……」


焼き魚を貪るロマネスクを見つめるのはデレで、その表情は引き攣っていました。


ζ(゚ー゚*;ζ「あの……本当に、この魔族は魔王ロマネスクなのですか……?」

ξ;゚听)ξ「悲しくなるけど、本当なのよね……」

( ФωФ)「とは言え引退したがな」

ζ(゚ー゚*;ζ「え?」

ξ;゚听)ξ「それは今はいいから!あんたは大人しく食べてなさいよ!」
   _,
( ФωФ)「まことに喧しい女だな……どれ、ではもう一匹……」


デレは驚きの連続でした。

そもそも目の前には女神がいて、その隣には恐怖の魔王が立っているのです。
相容れぬ聖と魔の代表格が揃っている事実。

だと言うのにもかかわらず、互いは勝手を知った仲のように慣れ親しんでいました。

.

18 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:38:35.347 ID:0gMPVY+G0.net
.

ζ(゚ー゚*;ζ「私は夢を見てるのかしら……」

ξ;--)ξ「残念だけど現実なのよねー……とにかく、デレちゃん?」

ζ(゚ー゚*;ζ「は、はい……」


改めて向き直った二人ですが、デレは緊張の面持ちでした。


ξ゚听)ξ「何でこの森にきたの?言っちゃなんだけど、この森には何もないわよ?
       そもそも人魔双方が不可侵を暗黙の了解としている土地でもあるし、この私自身が管理している事実もある。
        つまり人や魔が関わっていい場所じゃないのよ?」

ζ(゚ー゚*;ζ「それは、その……」
   _,
ξ;゚〜゚)ξ「……まぁ、何となしに分かってるっつーか、その身に宿ってる魔性も含めて、本当に切羽詰まってる感じだったんだろうけどもさ……」


いよいよツン=デレは確信をつくのです。


ξ;゚听)ξ「神殺しの一族って言ってた……わよね?」

ζ(゚- ゚*;ζ「……はい」

.

19 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:39:39.619 ID:0gMPVY+G0.net
.


━━━━━━━━━━━━━━━━━━・  ━━・  ・・


デレの返事に、何故か室内は沈黙に支配されました。



( ФωФ)「………………」

   _,
ξ;-〜-)ξ「あー…………」






ζ(゚- ゚*;ζ(?……なんで二人とも険しい顔してるんだろう…)



━━━━━━━━━━━━━ ━・  ━━・  ・・


.

20 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:39:40.681 ID:gwFE0Cku0.net
頑張れ超頑張れ

21 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:40:57.159 ID:0gMPVY+G0.net
.

( ФωФ)「…おい、神殺しの一族とやら」


疑問が浮かぶデレですが、唐突にロマネスクに声をかけられます。。


ζ(゚- ゚*;ζ「え、な、なんでしょうか……」


最後の一匹を平らげたロマネスクは指を舐めつつデレを見つめました。


( ФωФ)「折角勇ましい渾名があるのだ、もっと堂々としたらどうだ」

ζ(゚д゚*;ζ「そんな、堂々とできる立場ではありません……
        私は、女神様に助けを乞いにきたんです」
   _,
( ФωФ)-3「ふん、そこのボケ神にか?」

ξ#゚听)ξ「誰がボケよ、誰が!」

( ФωФ)「何にせよだ、神殺しの一族が神に願いにきたというのはお笑いだ。
        一体何を願いにきたと言うのだ」

.

22 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:42:30.400 ID:0gMPVY+G0.net
.

ある意味は因縁めいた間柄とも言えるものです。
神殺しの異名を持つ姫様は女神様を真っ直ぐに見つめ、深く頭を下げると言葉を紡ぐのです。


ζ(゚д゚*;ζ「…お願いです、女神様。どうかこの私の身を蝕む呪縛を、
        《神の呪い》を解いてくださいませんか」


つまり、それこそは神頼みだったのです。

神殺しの一族であるデレは、自分を苦しめる、神からもたらされる呪いを、
同列の存在である女神ツン=デレに解呪してほしいと願いにやってきたのです。

その言葉を聞いてツン=デレは眉をひそめ、腕まで組み、難しそうに唸りました。


ξ;--)ξ「だーよねー……そうなるよねー……」

( ФωФ)「……ふん。神を殺した末裔が神そのものに呪いを解けと、
        許してくれと……腹がよじれるわ」

ζ(゚д゚*;ζ「な、何が可笑しいんですか……!」

( ФωФ)「さてな。しかしお前の祖先は、もしかしたら……」

.

23 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:43:28.194 ID:0gMPVY+G0.net
.


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・  ━━・  ・・


         ・ ・ ・ ・ ・
( ФωФ)「《クソ食らえ》と…………言っているやもしれんぞ」


ξ;-听)ξ「ちょっと、ロマネスク………」




ζ(゚д゚*;ζ「何を言うかと思えば……知ったようなことを言わないでください!」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━・  ━━・  ・・


.

24 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:44:52.122 ID:0gMPVY+G0.net
.

( ФωФ)「ふん……ところで貴様、身形からしてどこぞの貴族か、
        あるいは王族か」

ζ(゚- ゚*;ζ「…分かるんですか」

( ФωФ)「伊達に魔王をやっていた訳ではない。王である吾輩だからこそ分かるのだ」


ロマネスクは未だ唸り続けるツン=デレを無視し、デレへと近づいていきます。
ベッドの隅っこで縮こまるデレは見下ろしてくるロマネスクを強く睨むのです。


ζ(゚- ゚*;ζ「それ以上近寄らないでください……」

( ФωФ)キ「ほほう、吾輩が恐ろしいか?ふふん、そうだろうそうだろう。
         何せ吾輩と言う存在は世を震撼させた――」

ζ(゚д゚*;ζ「あなたの身を案じて言っているんです」
   _,
( ФωФ)「…なんだと?」


聞き捨てならない台詞でした。
ロマネスクは瞳を鋭くするとデレの目を見つめ返します。

.

25 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:46:56.063 ID:0gMPVY+G0.net
.

ζ(゚- ゚*;ζ「バカにしている訳ではないんです。これは忠告です。
        あまり無暗に私に近づかない方がいいですよ、魔王ロマネスク」

(#ФωФ)「ほほう、言いおるわ……そうも言われると、
        どうにかしてでも近寄りたくなるわ……!!」


ロマネスクは腕を伸ばし、デレの肩に触れようとしました。
が、その瞬間、信じ難い現象が巻き起こります。


キュピ━━━━ξ゚听)ξ━━━━ン!!


ξ゚听)ξ「あ、ロマネスク、上見なさいな」

(#ФωФ)「あ?」

ξ゚听)ξ「危ないわよ」

(#ФωФ)「何を言っている、ツン=デレ」

ξ゚听)ξ「いやだからね、《落ちてくる》から」

(#ФωФ)「?……《落ちてくる》とは……?」

ξ゚听)ξ「あ、もう遅いかも。耐えなさいよ、くるわよ――」

.

26 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:47:53.183 ID:0gMPVY+G0.net
.


━━━━━━━━━━・  ━━・  ・・


ξ゚听)ξ「雷が」


(#ФωФ)「は?――」




   ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


     ⌒⌒〜    ⌒〜〜⌒
    〜〜〜/ /〜〜〜〜〜
        \\
        //
        \\
       ,;人ノ <人ノレ;,
       ,;)    (;,
      ,;)      (;
      ,;)ヽ(OωO)ノ  オォオー!?
       ;;)  羊ヘ (;
       ;;) <  (;;



━━━━━━ ━・  ━━・  ・・


.

27 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:49:31.178 ID:0gMPVY+G0.net
.

ツン=デレの言葉を遮って、耳を聾するような音と大きな衝撃が家屋を揺らしました。
それらが生じると同時に、世界は激しい閃光に包まれます。

音と衝撃の正体は落雷でした。

今、空の色合いは快晴で、雲の一つもありません。
しかし、突如として雷が発生し、それは《ヴィップの森》のロマネスク邸へと落ち、
屋根を突き抜け、デレに触れようとしていたロマネスクへと突き刺さったのでした。


  ∬∬
(:::ФωФ)「……どうなっていやがる、ツン=デレ」ゲッホゲホ

ξ゚∀゚)ξ「あら、なかなかイケメンになったじゃないの、ロマネスゥク?」

(#ФωФ)「やかましいわボケが!!」


真っ黒こげになったロマネスクは意味不明な事態に肩を震わせ、
背後から足音を響かせてきたツン=デレへと怒鳴り散らしました。


ξ-听)ξ-3「どうもこうも、こう言うことなのよロマネスク」

(#ФωФ)「ちっとも要領を得んぞボケが!何が何なのかちゃんと説明しやがれ!」

ξ--)ξ「うっさいわねぇ、このバカ魔王は……はいはい、じゃあよくお聞きなさいな」

.

28 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:50:59.284 ID:0gMPVY+G0.net
.

ξ゚听)ξ「呪いにも色んなものがあるのは分かる?」

(#ФωФ)「色んなもの?」

ξ゚听)ξ「単純に分けて個に影響を及ぼすもの、そして他に影響を及ぼすものとがあるのよ」

( ФωФ)「ふむ……」

ξ゚听)ξ「この子の場合、他に影響を及ぼす呪いがかかってる……っぽいような気がすんのよ」

(;ФωФ)「また酷く曖昧な……それに今の現象はそんな程度で済むことではなかろうがよ……」


突然の落雷と言う現象。
ですがデレ本人は驚く素振りもなく、どころか非常に申し訳なさそうな顔をしてロマネスクを見つめていました。


ξ゚听)ξ「それが起こっちゃうからこその《神の呪い》よね……つまりはね、
       超常の主とも呼べる私等みたいな神格の長ともなればさ、
       それこそ自然的な現象すら呪いの効果として発動できちゃうわけよ」

(;ФωФ)「なんという出鱈目だ……」

ξ゚听)ξ「そもそも……ねぇ、デレちゃん?」

ζ(゚ー゚*;ζ「は、はい、なんでしょうか」

ξ゚听)ξ「あなた、さっき空を吹き飛んできたわよね。衣服もボロボロだったけど、何があったの?」

.

29 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:52:34.197 ID:0gMPVY+G0.net
.

ζ(゚ー゚*;ζ「ええと、その……地雷キノコに馬車ごと突っ込んでしまって……」

(;ФωФ)「…どう油断したら地雷キノコと衝突するのだ?臭いで分かるだろうに。
        第一、馬がいてそんなことが起こるのか?」

ξ゚听)ξ「現に起こってんでしょ?」

(;ФωФ)「うぅむ、難儀だ……」


今時、子供でもそんな下手な真似はしないとロマネスクは呟きつつ、デレを見つめます。


ξ゚听)ξ「けど、何よりも恐ろしいのはね……本人だけが無事ってことよ」

(;ФωФ)「いやいや、空を吹き飛んできて無事も何もなかろう」

ξ゚听)ξ「そう?大爆発に巻き込まれておいて身体的な怪我は何もないし、
       偶然にせよ奇跡にせよあんたがデレちゃんをキャッチしたじゃない」

(;ФωФ)「それは悪運というやつではないのか?」

ξ゚听)ξ「違うわ。それこそがこの子にかかった呪いの本質よ。この子にかけられた呪いはね、
      《他者を巻き込み、最悪は殺したり滅ぼすような状況》でも……《本人のみは絶対に無事》であるっていう呪いなのよ」

.

30 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:54:31.639 ID:0gMPVY+G0.net
.

つまり、それは疫病神のようなものでした。
不幸を撒き散らしますが当人は無事で、周囲を傷つけるばかりなのです。
それこそがデレの呪縛であり、ツン=デレの言葉に彼女は顔を俯け、静かに涙を零しました。


ζ(゚- ゚*;ζ「…恐ろしいですよね、こんな女。普通にしているつもりでも周りが傷ついて、
        そんな中で私だけがいつも無事で」

ξ;゚ -゚)ξ「デレちゃん……」

ζ(- -*;ζ「御想像の通りですよ、魔王ロマネスク。私は北の果てにあるニューソク王国と言う国家の第一王女、
        デレ・ニューソクです」

( ФωФ)「…ふん。そうかよ」


恐怖の疫病神ですが、そんな彼女は一国の御姫様でした。
ロマネスクは腕を組むと鼻を鳴らし、やはり難儀だ、と零しました。


( ФωФ)「これは……王家そのものにかけられた呪いか、ツン=デレよ」

ξ;゚〜゚)ξ「…かもねぇ。恐らくは代々、正室の長女が対象とされるんじゃないかしら」

ζ(゚- ゚*;ζ「はい、その通りです、女神様。
        ニューソク一族では代々長女がこの呪いを引き継ぎます」

( ФωФ)「…対象が女に限ると言うのは、実に糞だな。そう思わんか、ツン=デレ」
   _,
ξ;-〜-)ξ「あー、でもなんとなく察するわー……」
   _,
( ФωФ)-3「そうだな……」

.

31 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:56:19.265 ID:0gMPVY+G0.net
.

まるで思い当たるふしでもあるような二人ですが、デレは説明を続けます。


ζ(゚- ゚*;ζ「この呪いの発端となったのは二百年前のことだと言います。
        なんでも我が先祖が、神のお妃である女神様を屠った、とか……」
   _,
( ФωФ)キ「はっ……また随分と血の気の多い話だな。まるで人の為すことに思えんぞ。
         それこそ《魔のやること》だろうがよ」

ξ;゚∀゚)ξ、「まっ……まぁまぁ、古い人類ってのは結構やること派手だったから、ね?」

( ФωФ)-3「神と名のつく連中はどいつもこいつもうざったい性格のようだな……おい、小娘」

ζ(゚д゚*;ζ「は、はい……」

( ФωФ)「及ぼす効果は他人にのみ、と言うが……貴様自身に直接害はないのか?」

ζ(゚- ゚*;ζ「それはないです。副次的に作用したり影響することはありますけど、
        直接的なものは一度もありません」

( ФωФ)「ある種は《加護》のようなものか……しかし、何代にもわたる呪縛とは。
        どうなのだツン=デレ、貴様でなんとかなるのか」
  _,
ξ゚听)ξ「…なんであんたが気にしてんのよ。人間のことなんて興味ないくせにさ」

(ФωФ#)「馬鹿者、この小娘のせいで既に我が家に被害が生じている。
        即刻これを解消せねば新たな被害が生まれるかもしれんだろうが」プイッ
  _,
ξ゚∀゚)ξキ「ふーん……ま、そう言うことにしておこうか?」


デレは慣れたように困った笑顔をつくりますが、様子からして悲しそうでした。

.

32 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 01:59:06.959 ID:0gMPVY+G0.net
.

ζ(゚- ゚*;ζ(やっぱり、迷惑よね。そりゃそうよ……
        爆発は起こすし雷は落とすし、私、やっぱり……)


実を言えば、デレは自身の呪いを解決できるとは思っていませんでした。

まるで逃げるように国を出たデレは、そのまま雲のように消え去り、
誰にも被害を与えることなく、静かに暮らしていこうと考えていました。

しかしそれすらも叶わないとなると、いよいよデレは最後の手段を考えます。


━━━━━━━━━━・  ━━・  ・・





ζ( - *ζ(死んだ方が、いいよね)





━━━━━━ ━・  ━━・  ・・


本人の意思も都合もお構いなしに周囲には害が振り撒かれ、
それにより傷ついてきた人々を数え切れないほどにデレは見てきました。

中には命の危機に陥る者もいたりして、その都度デレは自責の念に埋もれ、
周囲も周囲で無言ながらに彼女を責めました。

負の環境で生きてきた彼女にとって、自分の命と言うのは、然程重要ではありませんでした。

むしろ、多くの害をもたらす、悪しきものだとすら考えていました。

.

33 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:00:25.218 ID:0gMPVY+G0.net
.
   _,
ξ;-〜-)ξ「けどま、どうにかなるってのは……難しいわよ。いくら私と言えどね。
        呪いを施した神本人じゃないし……」


ツン=デレの言葉にデレは決心がつきました。


ζ( - *ζ(そっか……やっぱり無理なのね。ならもう、私は……)


デレの目尻に涙が溜まります。

こんな時、悲しみと言う感情があることにデレは内心で驚きましたが、それでも、
これまでのことを考えると、自分は泣いていい立場にはないと思いました。


ζ( ー *ζ「あの、ありがとうございました、女神様。とんだご迷惑をおかけして……」

ξ;゚听)ξ、「え?えぇと、デレちゃん?」

ζ( ー *ζ「やっぱりそう簡単に解決するわけないですよね。お邪魔しました」

ξ;゚д゚)ξ「い、いやいや、お邪魔しましたって……」


ベッドから立ち上がるデレ。彼女は震える身体で出口へと向かいます。
しかし、そんな彼女の前に立ち塞がる大男がいました。

.

34 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:01:21.167 ID:0gMPVY+G0.net
.



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・  ━━・  ・・





     ζ( - *ζ「…なんですか、魔王」



     _,
  ( ФωФ)「あぁ?……別になんの用もないわ」





その魔族の名はロマネスク。

 一つの大陸を支配する覇者でした。

  最強の名を持つ魔王ロマネスクが、何故かデレの前に立ち塞がるのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━・  ━━━━━━・  ・・



.

35 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:02:28.861 ID:0gMPVY+G0.net
.

ζ( - *ζ「どいていただけますか」

( ФωФ)「ふざけるな小娘。貴様がどけ」

ζ( - *ζ「……なら、さようなら。お世話になりました」


言い合う気すら失せ、デレはロマネスクの真横を通り過ぎます。
お互いは背を向け合う形ですが、去り行く背中に向けて、ロマネスクが言葉を紡ぐのです。


( ФωФ)「なんだ、もういいのか。雑魚とは悲しい生き物だな」

ζ( - *ζ「………………」

( ФωФ)「貴様が何の為にここまでやってきたかは知らんが……
        可能性がないと知れたら、全てを諦めるわけか」

ζ( д *ζ「…なんなんですか、あなたは」

( ФωФ)「何も糞も、隠居した元魔王だ」

ζ( д *ζ「そうですか、それはご立派ですこと。それではさようなら」

( ФωФ)「ああ、さらば……と言いたいがな、小娘」


デレは動けませんでした。
何せ、彼女の肩をロマネスクが掴んでいるからです。

.

36 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:03:50.252 ID:0gMPVY+G0.net
.

( ФωФ)「どうしてくれるんだ、あの天井を」

ζ( д *ζ「…離した方がいいですよ、魔王ロマネスク」

( ФωФ)「知るか糞ボケ。いいか、この生意気娘めが。貴様が悪いんだぞ、
        雷なんぞを落としてくれたせいで、せっかくの新居に穴があいたではないか」

ζ( д *ζ「金銭なら払います。ですからはやく離れてください」

( ФωФ)「黙れ、誰が金の話をした」


ロマネスクは天井へと指を向けます。

            ・ ・ ・ ・ ・ ・
( ФωФ)「直せ。お前の手でだ」

ζ( д *ζ「……あなたは、本当に、なんなんですか……?」

( ФωФ)「だから、元魔王――」

ζ( д *#ζ「人をおちょくるのも大概にしてよ!」


ついにデレは怒鳴り、ロマネスクへと振り返ると肉薄するのです。

.

37 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:04:55.415 ID:0gMPVY+G0.net
.


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・  ━━・  ・・




ζ(;Д;*#ζ「誰が好き好んで雷なんて落とすのよ!近寄らないでって言ったのに近寄ったのはあなたじゃない!
         呪いの話だってしたのに、そんな忠告すら無視したのはあなたでしょう!悪いとは思ってるわよ!
          けど、けどね……!私だって!!こんな呪いなんて、いらなかったよ……!」



激情に支配されるデレ。

そんな彼女の怒りに合わせてか、見る間に空の景色が暗くなっていきます。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━・  ━━━━━━・  ・・


.

38 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:06:23.631 ID:0gMPVY+G0.net
.


ξ;゚Д゚)ξ「あわわわ!!ちょ、デレちゃん落ち着いて!!これまたヤバイのがくるってば!!」


暗雲の垂れこめる空から雨が降り、雷が宙を飛び交います。

先までの快晴が嘘だったかのようで、意味不明な事態に森の妖精たちは混乱し、
動物達は逃げ出し、自然の多くは悲鳴を上げました。


( ФωФ)-3「ふん、いらないだのなんだの、ならばどうにかすればよいだろうが」

ζ(;Д;*#ζ「できないから困ってるんでしょ!神頼みだってする程なのよ!」

( ФωФ)「それで、そのどこぞの女神が無理だと言えばそれで終わるのか。
        実に無様だな、雑魚め」

ζ(;Д;*#ζ「…!!あんたなんかに、何が分かるのよ!!」


空で雷が鳴り響きます。雷は束となり、ロマネスク邸の真上で渦を巻きました。

最早平穏な《ヴィップの森》の姿はどこにもありません。

その様子はさながらに魔王城の景色と酷似するほどに禍々しい様子でした。


.

39 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:08:02.908 ID:0gMPVY+G0.net
.

 * * * * *



ミセ;*゚ー゚)リ「ねえトソン、これヤバイって!」

(゚、゚;トソン「ええ、とんでもない勢いだわ……姫様の身になにが……!?」


森を彷徨っていた少女達、ミセリとトソンはようやく湖畔へと到着し、
空の様子を見て焦燥に駆られました。

二人は雷が落ちるであろう場所――ロマネスク邸を発見すると一目散に駆けだし、
中にいるであろう姫君の下を目指しました。


ミセ;*゚ー゚)リ「おーい、姫さまぁ!」

(゚、゚;トソン「御無事ですか……って、な、なに、あの大男は!?」


扉を蹴破り、二人はデレ達が対峙している寝室まで辿り着きました。

飛び込んできた光景は、デレがロマネスクに怒鳴り散らす瞬間で、
二人は理解が追い付きませんが、しかしデレの様子を見て確信するのです。


ミセ;*゚ー゚)リ「こりゃやばいよー!ねえ、そこの男の人!逃げて、早く!」

(゚、゚;トソン「誰だか知らないけど、とんでもないことになるわよ!」


二人の手が伸びたのと、デレが涙を零しながらに叫んだのは、ほぼ同時でした。

.

40 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:09:45.584 ID:0gMPVY+G0.net
.

ζ(;Д;*#ζ「私は、私はっ……ただ、幸せになりたかった、だけっ、なのに……!」



空で渦巻く極太の雷が、ついにその身を地へと落としました。

激しい音と衝撃によって世界は数瞬の間、白く染まりました。

落下地点はロマネスク邸。地上に突き刺さった雷は新築だったロマネスク邸を完全に吹き飛ばし、周囲は焦土と化していました。

しかし、そんな光景だと言うのにもかかわらず、信じられないことが起きていました。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・  ━━・  ・・



     ( ФωФ)「幸せになりたい、か」



━━━━━━━━━━━━━━ ━・  ━━━━━━・  ・・



確かに家屋は吹き飛びました。しかし、その中にいたデレ達は、皆、無事でした。

先ほどのような衝撃に包まれたとしたら人も魔も木っ端微塵に消し飛ぶのが当然と言えます。

しかし、そんなものを意に介さない化け物がいたのです。

.

41 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:10:31.913 ID:0gMPVY+G0.net
.


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・  ━━・  ・・

         |  /
         | / __
         | // /
         |// /
     ガッ!   //
          /"
         ∩
  ( ФωФ)/「自身の気持ちが明確に分かっているのに、
           貴様はその理想や願いを捨て去ると言うのか」




━━━━━━━━━━━━━━━━ ━・  ━━━━━━・  ・・



ただ、拳を天へと突きつけている――それだけ。

それだけのことで、なんと、ロマネスクは、雷の一撃を防いでみせたのです。

ツン=デレまでもが腰を抜かし地に這いつくばる中、

ロマネスクは皆に見上げられながら、淡々と言葉を続けました。


.

42 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:12:01.174 ID:0gMPVY+G0.net
.

( ФωФ)「小娘。確かにこのボケ神は無理かもしれぬ、と言っただろう。
        だがそれで諦めるのは早すぎるのではないか」

ζ(;д;*ζ「だっ……だっ、て……」

( ФωФ)「だって、じゃない。いいか、小娘。それと決めたことであるならばそう簡単に諦めてはならぬ。
        困難だろうが苦難だろうが、それでも尚と立ち向かわなければ、貴様は死ぬその瞬間まで、
         絶望に支配されたままだぞ」


ロマネスクは再度デレの肩を掴みました。

その動きに対し、ミセリとトソンは驚愕しましたが、
当の本人であるデレは、もう、何の文句も口にしません。


( ФωФ)「ツン=デレのみで無理ならば他の神に頼ってもよかろう。
        いっそのこと存在する全神と対話してもよかろう。
        そうでもしなければ解決できぬと言うのであれば、そうすればよいのだ」

ζ(;д;*#ζ「そ、そんな、簡単な風に言わないでよっ……」

( ФωФ)「簡単ではないだろう。だがそうもしなければ解決はせんのだ。
        ならば……やるのだ。やってみせて、そうして叫んでやるのだ。
         天に胡坐をかいて見下すボケ神に《こんな程度じゃなんともなかったわ!》とな」


理想を語るような物言いですが、確かに手段と言うのは多くありません。
皆はロマネスクの言葉に何も言えず、ただ立ち尽くすのです。

.

43 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:14:25.778 ID:0gMPVY+G0.net
.

ξ゚听)ξ「…マジで珍しいこともあったもんじゃないわね。
      あんたが人のことを心配するだなんて……ねぇ?」
   _,
( ФωФ)「何を勘違いしていやがる、ツン=デレよ。今の話を聞いていれば分かるだろう、
        吾輩の言いたいことくらい」
  _,
ξ゚ー゚)ξ-3「はぁん?諦めずにがんばりぇー、ってエールでしょ?」

( ФωФ)「阿呆か。つまりはだ、貴様でどうにもならんのならばここにいる必要などないだろうが。
        そうなると小娘は《ヴィップの森》に用はなくなるだろう?」

ξ;゚ー゚)ξ「ん……んんー?なんだろうなぁその台詞、なーんか嫌な予感がするんだけど……」


段々と本音が見えてきたツン=デレは、一気に落胆した顔をします。


( ФωФ)「もてなしも十分に済んだし、やることも終えたのだ……おい、小娘よ」

ζ(;- ;*ζ「な、なによ……」


ロマネスクは再度デレの肩に手を置きました。
そうして柔らかく笑うと、優しい口調でこう言うのです。

.

44 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:15:59.056 ID:0gMPVY+G0.net
.

( ФωФ)b + 「出ていけ」

ζ(゚ー゚*ζ「…………えっ」

( ФωФ)「何を呆けたようにしておる。
        ツン=デレが役立たずだと分かったなら他をあたれ」

ξ#゚听)ξ「なっ、あんたって奴はぁ……!!」

( ФωФ)「事実なのだろう?御大層に女神だなんだと名乗っておいて解呪すらまともに
        出来んとは見下げた間抜けもいたものだ……まったく、無様極まるわ」

ξ#゚Д゚)ξ「ぶっ、ぶぶぶっ殺すわよ腐れ魔王くるぁああああ!神相手にナメた口きいてんじゃないわよ、あああん!?」
   _,
(*ФωФ)キ「ハーッハッハッハァ!でかい口を叩こうが貴様が何も出来んのは事実だろうが、
         それを棚に上げて至上の存在を語ろうとは愚かにも程があるわ!」

ξ#゚皿゚)ξ⊃「むっ、むきぃいいいい!!このこのこのこのおおおおお!!」
   _,
(*ФωФ)-3「ふん、きかんなぁ、そんなやわい拳じゃマッサージにすらならんぞボケ神よ……!」


憎悪を籠めて拳を振るうツン=デレ。それを涼しい顔で受けるロマネスク。
問題の当人デレは既に蚊帳の外で、彼女は呆けるばかりでした。

.

45 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:17:47.619 ID:0gMPVY+G0.net
.

ミセ;*゚ー゚)リ「姫さま、大丈夫!?」

(゚、゚;トソン「あ、あの者達は一体!?」

ζ(゚ー゚*;ζ「ミセリ、トソン……!」


近侍の二人は状況が飲み込めないままでしたが、デレの下へと駆け寄ると無事を確認するのです。


ζ(゚ー゚*;ζ「あのね、その……あちらの女性はね、女神様なのよ……」

ミセ;*゚ー゚)リ「おー、本当にいたんだね!……それにしても凶暴そうな性格だなぁ、
       本当に女神様なの……?」

(゚、゚;トソン「こら、ミセリ!それにしても、あっちの大男は一体……?先程、雷を拳一本で受け止めていましたよね……?」

ミセ;*゚ー゚)リ「それよりかは雷を粉砕したようにも見えけど……ありゃ普通じゃないよー、
       何者なの?あの人……魔族なのは間違いないだろうけど……」

ζ(゚ー゚*;ζ「うん、その、あのね二人共……信じられないかもしれないけど、よく聞いて」

.

46 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:19:23.303 ID:0gMPVY+G0.net
.


ζ(゚ー゚*;ζ「あの大男はね……魔王なの」

ミセ;*゚Д゚)リ「…はい?」

(゚д゚;トソン「今、なんと……?」

ζ(゚ー゚*;ζ「だからね、あの魔族こそが、私達人類の敵……《魔王》ロマネスクなの……」


ミセ;*゚Д゚)リ「…ええええー!?」(゚д゚;トソン


そうです、誰もが困惑するのです。

何せ恐怖の代名詞として知られる魔の頭領は、辺鄙な地に居を構え、
隠居生活を満喫していたのですから。


.

47 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:20:17.230 ID:0gMPVY+G0.net
.


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・  ━━・  ・・


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



  ξ#゚Д゚)ξ「この因縁もいよいよ終わり時よ、バカロマネスク!
         今日と言う今日は嫌と言う程に教育してやるわよ!!」



  (#ФωФ)「はっ、上等だ腐れボケ神めが……かかってこいクソッタレが!!」



                        ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



――――――――――――――――――――――――――


魔王ロマネスク、隠居生活を始めて三日目のこと。

呪いの姫君とその近侍、合わせて三名のもてなしを完遂……


したのか、なんなのか………。


――――――――――――――― ―- -



━━━━━━━━━━━━━━━━ ━・  ━━━━━━・  ・・


.

48 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:20:44.972 ID:0gMPVY+G0.net
続きはまた今度。おやすみなさい。

49 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2020/10/04(日) 02:43:14.848 ID:zQm6qdpJ0.net
乙乙

総レス数 49
44 KB
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
read.cgi ver 2014.07.20.01.SC 2014/07/20 D ★