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女「こう寒いと、手を握りたくなってしまうね」
- 1 :以下、VIPがお送りします:2022/01/07(金) 23:43:11.56 ID:F6C+/WMl1
- 男「握るな」
女「ふふ、それはボクの勝手さ」
男「俺の都合も考えろ」
女「じゃあ君の息子で我慢しよう」
男「余計意味がわからん」
- 130 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 22:51:00.62 ID:SgQ63/wl2
- 男「帰ったんじゃなかった」
呟いて、少し跳ねた髪を撫でる。
男「……部屋にいないだけだよな」
きっとそうだろう。
そう、思い込むことにする。
- 131 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 22:54:36.09 ID:SgQ63/wl2
- >>130
×男「帰ったんじゃなかった」
〇男「帰ったんじゃなかったか……?」
- 132 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 22:55:48.36 ID:SgQ63/wl2
- ベッドに戻って仰向けに寝転ぶ。
男「……」
寝るつもりではない。
モヤモヤした気持ちを落ち着かせているだけだ。
そのつもりだったのだが。
全然晴れる気がしない。
- 133 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 22:59:13.08 ID:SgQ63/wl2
- 男「あークソ!」
ベッドから立ち上がり、俺は上着を羽織った。
そして、部屋を勢いよく飛び出した。
どこに行くかは聞くな。
もう動き出したもんは止まれん。
- 134 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:03:26.20 ID:SgQ63/wl2
- ヤツがこの時間に部屋にいないなんておかしい。
間違いなく、家には帰ってない。
男「どこ行きやがったんだ」
いつもより歩くスピードは速い。
息も、荒くなる。
- 135 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:07:12.33 ID:SgQ63/wl2
- 学校に行っても門は閉まっていた。
今日はどうやら部活もないらしい。
ここにいないとなると。
別の場所にいるはず。
ただヤツはあまり人のいる場所を好まない。
長年の付き合いだ。
それくらいわかる。
- 136 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:09:36.29 ID:SgQ63/wl2
- ヤツのことは、中学の頃から知っている。
隣の家に越してきて、気づけば一緒にいた。
ほとんどいつも一緒にいた。
そんなヤツがどこに行くかくらい。
俺には簡単にわかる。
- 137 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:14:17.07 ID:SgQ63/wl2
- 男「……おい」
女「!」
少し遠い公園のベンチ。
ヤツはそこにポツンと座っていた。
女「どうして……」
男「心配させるなよ」
ベンチにヤツと少しだけ距離を置いて座った。
- 138 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:15:17.09 ID:SgQ63/wl2
- 女「ごめん」
男「謝らんでいい」
調子が狂う。
男「……」
女「……」
男「色々考えてみたんだが」
女「何を?」
聞くなよ。わかるだろ。
- 139 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:16:44.96 ID:SgQ63/wl2
- 男「お前と付き合う話」
女「それはもう無しでいいよ」
男「なんで」
女「ボクの好きと君の好きは、違うみたいだから」
男「……」
女「さっき、好きって言ってくれて嬉しかった。でもそれはきっと友達としての好きだ」
だから。
女「君とボクは付き合えない」
- 140 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:18:13.17 ID:SgQ63/wl2
- 男「……勝手に話進めるなよ」
女「でも、本当のことだから」
男「……」
コイツはどうやら勘違いをしているようだ。
男「言っておくけどな」
俺は。
男「お前が思っている以上に、お前のことが好きなんだぞ」
- 141 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:20:47.32 ID:SgQ63/wl2
- 女「え……」
男「好きじゃなかったら、ここに来るか?」
女「……わからないよ」
男「お前言ったよな、また明後日って」
コクリと素直に頷く。
男「俺は、またすぐにお前に会いたくなっちまったんだよ」
- 142 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:22:19.77 ID:SgQ63/wl2
- 女「……」
男「部屋を出る時の顔が気に入らなかった」
好きな人の悲しい顔は見たくない。
男「俺はお前に、いつも笑ってて欲しいんだ」
俺のせいで笑えないなら。
それごとぶっ壊すしかない。
- 143 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:23:17.47 ID:SgQ63/wl2
- 男「だから、悲しい顔するな」
女「……」
男「……」
勢い任せの告白。
言葉も全然決まってないし。
これははたして告白と言えるのかも少し謎だ。
- 144 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:24:28.29 ID:SgQ63/wl2
- 女「ふふっ」
男「?」
女「実に君らしい台詞だね」
男「なんだよそれ」
ヤツに笑顔が戻った。
しかし、目からは。
涙を浮かべていた。
- 145 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:26:04.19 ID:SgQ63/wl2
- 男「お前、そんな薄着でここまで来たのか?」
女「うん。君の家からそのままここに来たからね」
ってことは。
結構時間経ってんじゃねえか。
女「だから君に気づかれないようにしていたけれど」
身体が小刻みに震えだす。
女「とっても寒いね」
そりゃそうだろ!!
- 146 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:27:29.38 ID:SgQ63/wl2
- 男「何やってんだよ……ほら」
女「なんだい?」
男「俺の羽織れ。少しはマシだろ」
女「君は?」
男「さっきまで羽織ってたんだ、大丈夫」
女「……ありがとう」
上着を脱いだ瞬間。
めちゃくちゃ寒いことに気づく。
- 147 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:28:19.79 ID:SgQ63/wl2
- 女「君のぬくもりだ」
変な言い方するな。
……と思ったけど。
別に、変でもないか。
さっきまで着てたわけだしな。
男「帰るぞ」
女「あ、待って」
今度はなんだ。
- 148 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:29:42.82 ID:SgQ63/wl2
- 女「まだ少し寒いかも」
男「おいおい、もう何も持ってきてないぞ」
女「うん、わかってる」
わかってるなら言うな。
女「でもさ」
男「あん?」
女「こう寒いと、手を握りたくなってしまうね」
- 149 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:32:11.25 ID:SgQ63/wl2
- 男「……」
女「いい?」
男「好きにしろ」
女「ありがとう」
そう言って。
ヤツは俺の手を握った。
女「あったかい」
男「つめてぇ」
女「あはは、仕方ないよ」
- 150 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:33:54.85 ID:SgQ63/wl2
- 女「付き合うって、どんな感じなんだろうね」
男「……さあな」
女「これから経験していくのが楽しみだ」
男「好奇心旺盛だな」
女「うん。だって、これからも君とずっと一緒にいれるんだから」
クサい言葉がペラペラ出てくるな。
でもまあ。
今日という寒い日には、ちょうど良いかもな。
そんな、寒い日のある日のことだった。
END
- 151 :以下、VIPがお送りします:2022/01/10(月) 23:34:31.30 ID:SgQ63/wl2
- 終わりです。
三連休中に書き切れてよかった……乙でした。
- 152 :四八歳:2022/01/11(火) 00:21:05.25
- お疲れ様でした、今から読みます
- 153 :以下、VIPがお送りします:2022/01/11(火) 18:23:22.84 ID:39s1CHV+S
- すてき。
- 154 :ぜろちゃん:2022/01/12(水) 09:26:31.89
- ほしゅ〜
- 155 :以下、VIPがお送りします:2022/01/12(水) 21:07:09.98 ID:Po1xcr+Xw
- 懐かしいものを見た
- 156 :ワイ氏:2022/01/12(水) 21:58:29.07 ID:hDCiqtCID
- 良スレ
- 157 :ぜろちゃん:2022/01/13(木) 05:34:13.49
- 今日も保守、木曜日です
- 158 :以下、VIPがお送りします:2022/01/14(金) 09:30:11.94 ID:DL7G4lJyH
- 良かったで
- 159 :以下、VIPがお送りします:2022/01/15(土) 17:30:10.50 ID:JA8nAV9NG
- 近年稀に見る良スレ
- 160 :四八歳:2022/01/17(月) 07:44:19.85
- 素晴らしかった
保守
- 161 :以下、VIPがお送りします:2022/01/17(月) 16:27:56.98 ID:w/nJzIsxA
- ほう
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