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レーゾンデートル・ランド

1 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:42:06.47 ID:HTkesRGN0.net
レーゾンデートル・ランド………。
そこは多くの人々が当たり前のように生き、当たり前のように暮らす世界。
だがそこに暗雲が覆い始めたとき、俺はこの世界に降り立った。
日本での俺はただの普通の人間だ。決してアスリートでも、芸能人でもない。
だがこの世界では俺は「伝説の勇者」として、歴史に刻まれることだろう。
これは、この世界で末代まで語り継がれている物語である。

2 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:42:56.95 ID:HTkesRGN0.net
漆黒の夜空にちりばめられた幾千の星。その光の下に立つ二人の姿があった。
二人の立つ茫洋たる草原には一つの的が設けられている。
二人のうち一人の少女はゆっくりと弓を的に向けて構え、弦を強く引き絞ると手を離した。
ひゅうと音を立てながら矢は的をそれて地面につきたった。
肩を落とす少女にもう一人の少年が言う。
「エリス様まだだめですよ。──ほら、もう少し肩の力を抜いて。的を目で見てはいけません。心でみるのです」
「心でみるって、一体どうやるのよナオト!」
エリスという名の少女は頬を膨らませながら反駁する。

3 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:43:54.85 ID:HTkesRGN0.net
少女は黄色のショートヘアーにスカートをはき、両腕には腕輪をはめている。頭には精緻な装飾を施したティアラをかぶっている。そうして、輝く空色の瞳で少年を睨みつけた。
一方、ナオトという名のの少年は銀色の鎧にふとふりの長剣を装備し、黒髪に黒い瞳と、少女とは姿が異なって見える。
ナオトはエリスの弓をとると矢をつがえ、照準をあわせた後、放った。矢は狙ったとおりのところに命中した。
エリスは驚きの声を上げてナオトに寄り添う……。
ナオトもまた、エリスの肩に手を回してしっかりと抱きしめる……。

4 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/13(日) 21:45:06.39 ID:HTkesRGN0.net
これが、田嶋尚人が見た夢の話である。最近はこの夢ばかり見る。夢の中に出てきた少女は《アリッシア大帝国》という国の姫君であって、自分は彼女の護衛隊長なのだ。

5 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:47:34.57 ID:HTkesRGN0.net
姫はとても美しく、その美しさはこの世にいる女性に例えることができないほどだ。

6 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:48:24.34 ID:HTkesRGN0.net
俺と姫とはもはや恋人同士なのだ。これが夢だとは自覚している。けれども、現実世界で彼女などできたこともない俺にとってはそれがたとえ夢であったとしても、人生で初めてのことなのだ。

7 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:48:52.49 ID:HTkesRGN0.net
最初はちょっとした出会いから恋が始まり、後々になって彼女が姫君だと知り、役職を与えられて今に至っているということだ。

8 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:49:43.49 ID:HTkesRGN0.net
しかし、なぜだろうか。このような夢を毎晩見るということは自分に何か関係のあることかもしれない。一抹の不安を抑えきれずにいるが、この夢を見ることが自分にとって一つの楽しみとなっていることも否めない。
ある日の夜、いつも見た夢とは異なり、その日の夢は尋常ではなかった。
いつも通りの光景から空は急に暗雲に覆われはじめ、あまつさえ雷鳴が轟き、雨まで降り始めたのだ。
そして、暗雲がぽっかり口を開けてそこから幾筋もの稲妻が地に落ちた。途端、それは人の形になり、こちらに襲いかかってきたのだ。
それも大勢。
奴らの形相はもはや人と思えぬもので、まさに「魔軍」であった。

9 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:50:49.64 ID:HTkesRGN0.net
数十人しかいなかった護衛隊は魔軍にあえなく敗走。俺は果敢に剣をふるって敵を切り倒していく。到底一人では支えきれない数であった。
その中に見た。この軍の頭と思える者を。
全身黒色の鎧で身を包み、胸元には紅色の宝石がはめこまれ、手には大剣を持ち、馬に乗っている。
あいつさえ倒せば、俺たちは勝てる、そう思った俺は敵の猛攻をかわし、親玉に向かって渾身の一撃を放った。だが、いとも簡単に攻撃は太い刃に弾かれてしまう。その衝撃で俺は空中を弧を描きながら飛ばされた。
その力はまさに魔王と呼ぶべきのものだった。

10 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:51:23.03 ID:HTkesRGN0.net
すぐに立ち上がっておびえている姫の前に立ちはだかった。すると魔王は微笑を浮かべながら、
「脆い、お前たちは弱すぎる。強者たちを集めたのち、再び私に挑むがよい」
と言って、一瞬にして魔軍もろとも姿を消した。
何とか姫の命は守ることができた。だが、恐怖はこれで終わりではなかった。
魔軍はアリッシア大帝国の首都「フラルーベ」に大挙して攻め、都はわずか五日足らずで陥落し、王とその王妃は隣国《チェリーヌ王国》へ亡命した。こうしてアリッシアは言うまでもなく滅亡となった。
王はこのまま諦めはしなかった。親密な関係のある国々に檄を飛ばし、多くの兵を率いて、元アリッシア大帝国のあった場所へと攻め込んだ。
軍は首都であった「フラルーベ」で魔軍と対峙した。
これは昨日見た夢である。

11 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:52:06.79 ID:HTkesRGN0.net
エリス姫は多くの兵士を広場に集めるように命じ、自ら先頭に立って進軍を開始した。あの時ははっきりと覚えている。
戦場付近の谷間に差し掛かった時、四方八方から矢が飛び交い始めた。
すでに待ち伏せされていたのだった。
「逃げてはいけません! 逃げずに戦うのです!」
姫の言葉は誰の耳にも届かなかった。俺も剣を抜いて応戦する。弓矢などお構いなしに突っ込んでいき、敵兵を切り倒していく。が、ついに矢が俺の脚に擬せられた。鋭い痛みが走り、倒れそうになるが、その体を支えてくれた姫の姿があった。
「ナオト! 大丈夫?」
ああ、大丈夫だよと答えようとしたその時だった。ひゅうという音がやってきて、矢が姫の体を貫いた。
「ぐっ! ナオト……」
「エリス!」
姫の体を抱きかかえて立ち上がり、前を見た。兵士の波の中にあの魔王が巨大な弓を構えて微笑を浮かべているのが見えた。
「野郎ッ!」
俺は毒づくと、刺さっていた矢をポキリと折り、ただひとり魔王に突撃を開始した。

12 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:52:35.74 ID:HTkesRGN0.net
「ほう、大した度胸だ。ならばその度胸を買ってやろう」
そう言って魔王は兵士らに道を開けるように言い、背中から剣を抜き、こちらに向かってきた。最初の一振り。
ガアァァン!
魔王と俺はつばぜり合いになった。ギリギリと金属同士が擦れ合う音とともに俺の足が次第に後ろへ下がっていく。
──なんという力だ!
このままでは後ろに転んでしまい、斬られて終わる。そこで自ら競り合いを中止し、下からの切り上げ攻撃を繰り出した。
「ぬっ!」
さすがの反応速度だった。下から上がってきた刃を上から見事に弾いたのだ。更にその圧倒的な力によって剣が、俺の剣が折られてしまったのだ。
「ここまでだ少年よ!」
横から向かってきた大剣によって深く腹をえぐられ、投げ飛ばされた。俺は近くの岩に衝突し、力尽きた。
しばらくして目が覚めた。体中痛みが走り、起き上がるのがつらい。空は依然として灰色の雲に覆われていて太陽の光は一筋も射さない。あたりを見渡すと、多くの兵士の死体、地面に突き刺さった剣、そして無残に引き裂かれたアリッシアの旗……。
──そうだ、エリスは? エリスはどこにいるんだろう?
探してみるが、どこにも見当たらない。
沈黙の荒野に一人、想っていた人もなく立ち尽くしてた。
やがて、漆黒の大空から大粒の雨が降り、俺の頬を濡らした。
あまりにもストーリーがしっかりしていてそのことを話すと、夢ではなくお前の妄想だろと友人に言われたが、これは妄想ではない。夢だ。
だが、今は夢ばかりに集中してはいけない。俺は高校一年生で公立高校に通っている。部活は弓道部。幼い頃からやっていて、今では全国大会でも優勝するくらいの技量をもっている。成績もそこそこで、国公立の大学に進学することを目指している。

13 :才野梨 ◆tsGpSwX8mo :2014/07/13(日) 21:53:12.19 ID:HTkesRGN0.net
「おい田嶋! 聞いているのか?」
先生の声によって現実に引き戻された俺はあまりにも唐突だったので。
「は、はいっ!」
と叫び、席をガタンと立ちあがってしまった。それにクラス全員が笑う。
そんな嘲笑に耐えながら座り、再び思索にふけった。
学校が終わり、外に出る。今日も帰って早く寝て、あの夢の続きを見たいと思い歩こうとすると急に激しい頭痛に襲われた。普段そんなことはないはずなのに今日は何かがおかしい。これがまるで何かの兆しであるかのようだ。
次第に意識が朦朧とし始め、声も出なくなってきた。
「だ…れか……た、たすけ……」
不運なことに外には俺以外誰の姿もない。
意識が暗転した。

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