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嫌いなもの

1 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/17(木) 20:25:23.13 ID:cGwy0L410.net
僕の隣にやってきた転校生は、青い目をしていた。その子は常に怒られていたが、笑った顔以外は見たことがない。

「ねえ、なにが好き?」その子は、高校生にもなってみんなに聞いた。だからすぐに周りから人が去っていったし、もちろん友達なんていないようだった。それは馬鹿みたいで、なぜか心が疼いて、僕は質問に「全部嫌いだ」と答えた。
答えた後、その子が一瞬沈黙したから、泣くかと思った。そんな場面じゃなかったけれど、僕はなぜかその子がとても可哀想に見えた。
だけど、やっぱり次の瞬間には笑っていて、「答えてくれるんだ、面白いね」なんて言った。
僕たちが言葉を交わしたのは、後にも先にもその一度だけだ。

2 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/17(木) 20:26:45.09 ID:cGwy0L410.net
その頃の僕は、本当に全てが嫌いだった。友達も彼女もいたし、勉強も苦手じゃなかった。それでも、何か納得がいかなかったのだ。
高校生の間しか役に立たない肩書きを得ることに必死になっていたからかもしれないし、反抗期だったからかもしれない。とにかく、今なら人生そんなもんだ、と割り切れるようなことが当時の僕には大問題で、絶対に見過ごせなかった。
だから、自由で楽しそうなその子のことが少しでも羨ましいなんて、どうしても認められなかったのだ。

修学旅行を目前に控えた頃、僕は親友と喧嘩した。せっかく決まったグループ分けも変えるなんて言い出すし、もう滅茶苦茶だった。当日まで仲直りはできなくて、結局他の友達とひたすら騒いだ。

3 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/17(木) 20:27:33.94 ID:BMh5JC6i0.net
瀬戸百香

4 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/17(木) 20:27:38.87 ID:cGwy0L410.net
夜、ゲームで負けてコンビニに食べ物を買いに行かされた時だと思う。僕は「あの子」を見つけたのだ。転校して、隣の席に来たあの子だ。
あの子は普通やることが尽きないような修学旅行の夜中に一人で、ホテルの外のベンチに座っていた。
なぜか強く心惹かれた僕は、しばらく遠くで突っ立ってそれを見ていた。しかしあの子はそれに気が付いていたのだろう。何分か経ったのちに、僕に微笑みかけたのだから。
なにも喋らなかったし、他になにもしなかったけれど、確かに互いを理解しあったような気がした。
あの子の笑顔は泣く代わりだった。僕の笑顔は虚無感の表れだった。

5 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/17(木) 20:28:37.43 ID:cGwy0L410.net
今、大学生になった僕は、毎日をバイトと合コンに費やす。夢はなく、趣味は家具や食器を集めること。特筆すべきことなどほとんどないような日々だ。
でも、そういえば一つだけ、嬉しかったことがある。
マグカップを買おうと雑貨屋を巡っていた時、全く趣味じゃない店に入ってしまったことがあった。すぐ出ようと思ったが、壁の隅に一枚の絵が貼ってあるのを見つけたのだ。
それは、女の子が踏み荒らされた花畑に佇んでいる絵だった。下に、名前が書かれた四角いカードも貼られていて、「1年間ありがとうございました!これからアメリカの大学に行きます。近くに来たら寄ってくださいね」と殴り書きのようなメッセージもあった。

確かにそれはあの子の名前だった。
ずっと見ていた僕に気がついた店員さんが、「それ、前バイトに来てた子が書いたんですよ。全部好きじゃないものにしちゃうんじゃなくて、嫌いなものか好きなものにできればいいって言って、故郷に帰っちゃったんですけど。」
彼は気に入ったならあげてもいいと言ってくれたがそれは断って、マグカップだけを買ってそそくさと店から出た。

空は僕の嫌いな曇り空でむしむししていたからだろう。あの子はもう泣けるようになっただろうか、なんて思った。
僕の中で何かが再び疼き始めるのを感じた。それが何なのか、僕はすぐに気がついて、暗い気持ちになった。それが、高校生だったころ好きだったものが何か、気付かせたからだ。
初恋を知った日だった。

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