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心霊研究部とかいう部活www

1 :1:2014/09/09(火) 11:05:56.79 ID:fm+cCKNY0.net
 近頃、胡隈結奈にはどうも感動がない。ここ最近、近所ではオカルトな噂がまったくわ
かない。彼女が小学低学年くらいのときだから、もう9年近く前になるだろうか。テレビ
で霊能者がこの街を「霊の集まりやすい場所」と言った。それが真実だからなのか、それ
ともそれが発端なのかは定かではないが、半年前くらいまでは近所で心霊現象が起きた、
と度々騒がれていた。

2 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:06:19.41 ID:aHhF7ey8i.net
長い産業

3 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:07:15.97 ID:fm+cCKNY0.net
 その現場は小さな診療所跡であったり、学校であったりと様々だったが噂を聞く度に現
場に足を運び、過去にその場所でなにか事件や事故がなかったか調べたりを繰り返した。
それほど、彼女は根っからのオカルトマニアだ。(心霊が主だがUMAや黒魔術なんかに
も興味はある)
 しかし、そんな結奈をワクワクさせてくれる「噂」が最近はめっきり少なくなった。だ
から最近はこうして、部室で恐怖体験の本を読んだり、稲川淳二のDVDを見たりして時
間を浪費していく無意味な部活動を繰り返している。
「ねえ、結奈」
愚痴によく似た考え事をしていた結奈を呼ぶ…人ではない者。思えば一番最後にワクワク
したのは、彼女との出会いのときだった。

4 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:08:33.58 ID:aZWAxT2b0.net
最初の台詞を「ねえ、」から書き出してはいけないとあれほど

5 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:09:08.87 ID:fm+cCKNY0.net
「ん?どうかした?メリー」
「たまには散歩でもしない?いい天気よ」
「…そーだね、たまにはそれもいいか」
結奈を散歩に誘った彼女は、メリーさん。そう、あの有名な都市伝説のメリーさんだ。ど
うやって出会ったか。そんなのは長々と説明する必要もない。本当に「ばったり」出会っ
た。彼女は可愛らしいし、恐怖は感じなかった。霊魂の存在を本当に心から信じていた結
奈は、やっぱりいたんだ!とだけ思った。メリーはメリーで、心霊部の静かな空気を気に
入ってくれたらしく、ちょくちょく顔を見せるようになった。漫画が好きだったり、恐い
画像に驚いたり、となかなか霊魂らしくない霊魂で、仲良くなるのに大して時間はかから
なかった。
 メリーは今、金髪碧眼のビスクドールを依り代としていて、パッと見ると可愛らしい女
の子に見える。(彼女曰く、仮初めの「受肉」とやらで人間に化けられる?とか)

6 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:11:29.44 ID:fm+cCKNY0.net
「部長!ぶちょー!!」
部室を出た結奈たちに、廊下の向こう側から大きな声で駆け寄ってくる男子生徒。彼の
名前は十兵衛。結奈を除けば、心霊部唯一の部員だ。
「十兵衛…どうしたの?」十兵衛は結奈たちの隣に立ち止まると、ハアハアと大きく肩で
息をしながら爛々と目を輝かせガッツポーズを作った。
「来ました来ました!メリーさんとの出会い以来のワクワクが!」
その言葉を聞いた結奈は、十兵衛のそれを遥かに上回る目の輝きを見せた。
「なに!?どこ!?」
思わず十兵衛の手を取った結奈の発した言葉はそれだけだったが、十兵衛は理解したよう
で、その4文字の質問に答える。
「最近、何か不思議なものを見たり聞いたりしてないか、のアンケートを1年生を対象に
実施しましたところ、40人からの返答がありまして、その内の7人からの体験談に、
ある共通点がみつかったのです!」
「へぇ…ナイスよ、十兵衛!私にも言わずに頑張ってくれてたなんて…。あなたがそんな
に心霊研究部に熱心になってくれるとは、正直思ってなかったわ」
十兵衛の意外な熱心ぶりに、結奈の口から思わず感嘆の言葉が漏れた。
「はい。精力的に部活動を行えば、部長の電話番号を教えてもらえる約束ですから!」

7 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:14:10.54 ID:se6nj7Q60.net
じゃあ俺人面犬の役やるわ

8 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:15:37.76 ID:fm+cCKNY0.net
「…そんな約束したかしら?」
「とぼけたってダメですよ!!精力的に活動してくれれば連絡を密にとる必要もでてくるだ
ろうし、と間違いなく言ってました!」
 入部当初、あまりに下心丸出しだった十兵衛に身の危険を感じた結奈は、フリーメール
のアドレスを教え電話番号は今だに教えていなかった。
「まあいいわ…。それより、共通点って?」
「はい!えっと、その7人全員の目撃談の舞台が、学校の裏山なんです。そして、その内
容に共通点があって、女の人の泣き声を聞いた、とか、泣きながら歩き回る女の人を見
た、などなど…“女の人が泣いている”と言うんですよ!」
「確かに不気味な体験談ではあるけど…生きている女の人、ってことはないの?」
「そう考えるには不自然な点があるんです」
結奈の指摘に、十兵衛はニヤリと笑みを浮かべた。
「目撃者の証言に出てくる女の人は、いずれもウチの高校の制服を着ているんです」
「…それのどこが不自然なのよ?ウチの学校の生徒なんじゃないの?」
「夏服なんです」
「…今は12月よ?」
十兵衛は「だからですよ」と返すと、にやりと笑った。

9 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:23:37.84 ID:fm+cCKNY0.net
 夕方、5時…と言っても12月になると、もうかなり日は落ちてしまっていて、まして
や山の中となると、もうほとんど夜といっても過言ではない。そんな場所に3人はいた。
「メリー、どう?なにか感じる?」
「ん…確かにいるわね」
メリーの一言で、結奈の身体に一気に緊張が走る。
「ちょっと…冗談じゃないですよ…僕は現場には行きたくないって…」
「しっ!」
 怯える十兵衛を結奈が一喝する。もともと怖い話なんかが好きではあるが、同時に怖がり
でもある十兵衛は、さっきから上着の袖を握ったままだった。

・・・こ・・・・・・ど・・・こ・・・・・・・・・・・・どこ・・・?

10 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:26:25.41 ID:fm+cCKNY0.net
「…!!」
 3人は思わず身構えた。確実に、聞こえた。自分たち以外の声が。
「…みつけたわ。ホラ、あそこ…」
 メリーがそっと3人の右斜め前を指差した。
「…な、なにも見えないよ?」
「…私も」
 結奈と十兵衛は必死にメリーの指差す方を見つめるが、そこには何も見当たらない。
「十兵衛はともかく、結奈には見えるはずよ?もっと神経を研ぎ澄ませて…」
「え…?…わ、わかった…」
 メリーの言ったことの意味はわからなかったが、とりあえず神経を集中させる。
深く深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。ただ本当に目で見ようとするのではなく、そこ
に見えるものをあるがままに頭の中に取り込む。そう意識した。
「…あ…見えた…かも」
「え!?どこどこ!?わかんない…僕には見えないよ?」
「ちょっと静かに!」
 またしても十兵衛に結奈が一喝。
「泣いてる…声もさっきよりはっきり聞こえるわ…。ウチの制服着てる…夏服だわ。でも
どうして?正直言って…霊感なんかないと思ってたのに…」
 霊が見えたことに感動しながら、同時に驚きの表情を結奈は浮かべた。興奮で顔が熱を持
つ。ふと吹いた冷たい風が熱くなった顔を撫でて、少し気持ちよく感じた。

11 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:26:48.50 ID:Q/RQ+rNX0.net
わろたwwwwwwww

12 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:32:30.91 ID:fm+cCKNY0.net
「まあ…もともと結奈には素質があったんだけど、私みたいな霊体と一緒にいたから私の
霊気に感応したのね。強い霊気に長い間触れてると、霊力が身につくものなの」
そうなんだ、と小さく呟くと、結奈はもう一度右斜め前に視線を向ける。そして少しの間
その姿に見入っていた。と、不意に口を開く。
「ねえ、メリー。あの霊って…人間に危害を加えそう?」
メリーは少し驚いた表情を浮かべた。今自分が口にしようとしたことを結奈が口にしたか
らだった。
「感じたのね?…そう、あの人が人間に危害を加えることはまずないでしょうね」
「わからない…ただ、あんまりこっちを気にしていない…そんな風に感じたから」
12月だと言うのに、結奈の肌は少し汗ばんで見えた。
「半分、正解。確かにあの人は、私たちを気にしていない…というよりも眼中にない、っ
て感じかしら。草木と変わらないように思ってるわ。それに…何かを探してるみたい」
メリーのその言葉にハッとしたように十兵衛がメリーに顔を向ける。

13 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:35:40.30 ID:fm+cCKNY0.net
「そうか!さっきから聞こえてるこの“どこ”ってのは…」
「…どこにあるの?…もしくはどこにいるの?…ってことか」
十兵衛の言葉を引き継いで結奈が言った。
「そうね、そういうこと」
「ねえメリー。何を探しているか、わからない?あの霊と会話はできないの?」
結奈がずっと右斜め前に向けていた視線をメリーに移す。
「試してみるわ」
そう言うとメリーは2,3歩女の霊に近づいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
場には長い沈黙が流れた。永遠に続くかと思われるようにさえ感じる長い沈黙を破ったの
はメリーだった。
「…ダメね。話しかけても相変わらず私たちは草木同然。完全に無視されてしまうわ」
結奈たちの方向に向き直ったメリーは、どこかつまらなそうな顔をして結奈の隣に戻った。

14 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:37:07.13 ID:iN0tN2uU0.net
乙!感動した!

15 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:41:02.10 ID:fm+cCKNY0.net
結奈たちが学校の裏山で嘉原高校の制服を着た女の霊を見た日から3日が経っていた。
あの日以来、結奈はメリーをつれて毎日裏山の女の霊のところに通った。なにを探してい
るのか?なぜここで探しているのか?その他いくつかの質問をしたが、相変わらず彼女か
ら返事が帰ってくることはなかった。
十兵衛はその間、図書館で古い新聞を手当り次第読み漁っていたが、夏服、と言うヒン
トだけで当たりを見つけることは当然難しく、彼女と繋がりのありそうな事件や事故の記
事はみつけられないでいた。そもそも、メリー曰く夏服を着ているからと言って、彼女が
この世の住人ではなくなったときに夏服を着ていたかどうかはわからないらしかった。単
に、生前強く思い残したことがあった季節が夏だっただけかもしれない、と言うのだ。
もちろん、嘉原高校の卒業生である教師やずっと長い間この学校に勤めている教師にも
話を聞こうとしたが、何もそれらしい答えは返ってこなかった。
「今日も何も言ってくれなかったね、あの人…」
裏山からの帰り道、学校の裏門から学校の敷地内に入り、結奈は溜息混じりに言った。
「ええ。多分このまま続けていても状況は変わらないわ。人間の結奈を無視するのはとも
かく、同じ霊魂である私をあそこまで気にせずにいられるなんて、はっきり言ってちょ
っと普通じゃないもの。」
そっか、と小さく独り言のように呟いた結奈を、男の声が呼んだ。

16 :1:2014/09/09(火) 11:52:49.65 ID:fm+cCKNY0.net
「おい!胡隈ー!」
「あ…六波羅先生だ」
六波羅は嘉原高校の教師。結奈には日本史を教えていて、一応、御座成りではあるが、
心霊部にも顧問はいて、彼がそうだった。
「どうしたんですか?先生」
少し駆け足で結奈に駆け寄ると、六波羅は結奈の頭にポンッと手を置く。
「お前なあ…もうテストも近いってのになにやってんだよ」
「部活ですけど?」
「部活ですけど?じゃないだろ。なんだか教頭なんかに色々聞き回ってるらしいじゃない
か。俺が怒られたぞ?」
そう言うと、視線を結奈の隣の少女に移す。
「暫らく大人しくしてたと思ったら、今度はこんな子供まで連れ込んで…誰なんだ?」
「ああ、この娘はメリーさ…」
思わず口に出しそうになって、思いとどまった。説明するのもややこしい。

17 :1:2014/09/09(火) 11:54:48.90 ID:fm+cCKNY0.net
「メリー??」
「違う違う。めいり。明理ちゃん。私の親戚の子供です。子守を任されちゃって」
「だからって学校にまで連れ込むんじゃない」
「ごめんなさい」
六波羅は元々霊感体質で本人曰く心霊現象もいくつか体験があるらしく、他の教師と違
って結奈の話をわりとまともに聞いてくれる数少ない人ではあるが、今ここにいる女の子
がビスクドールに憑依した都市伝説のメリーさんだと言っても、流石に信じてはもらえな
いだろう。そうなれば、素直に謝って話をさっさと切り上げるのが得策だ。
「じゃあ、もう家に帰りますねー。明理、帰ろー」
メリーの手を握ると、それでは、と言って早足で部室に向かう。
「あ、おい胡隈!さっき十兵衛に…」
「はいはーい!十兵衛も色々聞いて回ってますよねー?私からもキツーくお灸を据えとき
ますので安心してくださーい」
六波羅の言葉をワザと遮るように言うと、結奈は更に足を早めた。

18 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 11:58:26.44 ID:2nHWbVmD0.net
               秘封倶楽部
                            ,.-──- 、.,_
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く _,,r'´ハ ,!‐_ ! ハノ'ィ'!lハ ハ!       !/レ;::イ{'iゝ レ' _.!ニハ::::ハ::::ヽ:::::::',
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19 :1:2014/09/09(火) 11:58:27.80 ID:fm+cCKNY0.net
「なーにやってたんですかあ!!遅いですよ!!」
部室に戻った結奈とメリーを十兵衛の大声が迎えた。
「なによ大声出して!」
「ふふふ…その様子じゃ今日も裏山チームはなにも成果を挙げられなかったようですね」
十兵衛は結奈とメリーの顔に視線を送ると、ふんっと鼻で笑った。
「なに?じゃあ、あなたの方はなにか進展があったの?」
ムッとしたのが7割。期待3割といった感じで結奈が言った。
「ありましたとも!17年前、この学校の女生徒が死亡する事故がありました!」
人が死んだ事故の話を、嬉しそうに話す十兵衛に結奈が釘をさそうとしたとき、二人のや
り取りを見ていたメリーが口を挟んだ。
「この学校、相当長い歴史のある学校なんでしょ?事故にあって死んだ生徒がいたって不思
議じゃないと思うわ。17年前のその女生徒の他にも、いるんじゃない?」
とたん、十兵衛から勢いがなくなって行く。
「いや、そりゃあまあ…そうですけど…。僕もそれくらいわかってましたけど…」
「けど、なに?」
結奈が尋ねる。

20 :1:2014/09/09(火) 12:00:30.67 ID:fm+cCKNY0.net
「えっと、その女生徒、裏門から裏山に続く道の途中の狭い交差点で車に跳ねられて死んじ
ゃったんですよ。その事故の起きた季節は夏だったって言ってたし…そのとき女生徒の着
てた服は制服だったとも言ってたし…」
自信なさ気にボソボソ喋る十兵衛に、結奈がズズイと近づき、尋ねる。
「誰が言ってたの?それ」
「え…六波羅先生ですけど…」
急に眼前に近寄った結奈の顔に少しびっくりして、ちょっと照れながら十兵衛は答えた。
「え!?あの人この学校の卒業生なの!?」
「はい。その事故があったとき、先生は1年生だったそうです」
「そうだったの…。でかしたわ、十兵衛!」
結奈の眼に力がみなぎる。
「いや、あの。部長…さっきは僕もちょっと興奮気味でしたけど…でも…メリーさんの言っ
たとおり、この事故があの女の人の幽霊に関係あるかどうかは…」
「裏山に近くて!夏服を着ていた!ちょっとでも条件に近いことがみつかったなら、とりあ
えずそれを調べてみるのよ!」
「でも結奈、この前も言ったけど死んだときに夏服を着てたかどうかは…」
急に元気になった結奈に少し戸惑いながらメリーが口を開いた。が。
「少しでも可能性があるなら!」
グッと拳を握り、堅いの決心の表情をした結奈に、それ以上何も言えなかった。
「明日は土曜日!朝から図書館で17年前の夏の記事をしらみつぶしに調べるわよ!」

21 :1:2014/09/09(火) 12:08:49.91 ID:fm+cCKNY0.net
翌日、土曜日の朝。結奈は昨晩結奈の家に泊まったメリーと一緒に、図書館に向かう。
「今日こそ、真実に近づくのよ!ね?メリー」
「そうね。私も同じ霊魂として、あの女の人には少し興味があるわ」
図書館は学校を過ぎて、3分くらいのところにある。結奈の家からだと歩いて15分く
らいの距離だ。
「それにしても…今日は冷えるわね」
メリーは冷たくなった手に息を吹きかけた。
「手袋してくればよかったかな?…なにか温かい飲み物でも買おうか」
結奈は近くにあった自動販売機に駆け寄った。
「あら?結奈ちゃん。おはよう」
と、すぐ近くの家から顔を出した一人の老婆が、結奈に話しかけた。
「あ、上原のおばあちゃん。おはようございます」
「おや?その可愛らしい女の子は?」
結奈に“上原のおばあちゃん”と呼ばれた老婆は、結奈のすぐ後ろにいるメリーさんに気
が付くと、ニコっと笑った。
「ああ、紹介します。私の親戚の子供の明理ちゃんです」
結奈の紹介を受けて、メリーはペコリと頭を下げる。
「この人は上原おばあちゃん。いつもニコニコしてて、元気でウチの学校の生徒にも大人
気のおばあちゃんだよ」
「ふふ…ありがとねぇ、結奈ちゃん」
上原は、結奈の言葉に少しだけ照れの混じった笑顔を見せた。
「あ…猫…」
メリーが指差した方に、結奈と上原も顔を向ける。上原の家の玄関から、黒猫が一匹、
顔を覗かせてメリーと結奈を見ていた。
「ああ、この子はクロって言うんだよ。おばあちゃんの家族さ。可愛いだろ?」
「おーい、クロー」

22 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 12:10:03.97 ID:VNfVW3ab0.net
どこのトワイライトシンドロームだよ

23 :1:2014/09/09(火) 12:12:49.41 ID:fm+cCKNY0.net
結奈はしゃがんで腰を落とすと、軽く手を前に出してクロを呼んだ。クロは視線を送った
だけで、近づいてくることはなかった。
「ごめんね、最近はもうずっとこんな調子でね。もうクロもおじいさんだから…。でも今
日は元気のあるほうよ。いつもは玄関にだって出てこないのに。珍しいわね」
「…クロ、ひょっとしてメリーのこと変に感じてるのかな?ホラ、猫って人間よりもずっ
とそんなのに敏感だっていうじゃない?」
なんだかクロがずっとメリーを見ているように感じて、メリーにそっと耳打ちをする。
「…うん。そうかもしれないわ…早く行きましょう」
「そうだね…。じゃあおばあちゃん、私たちちょっと今から用事があるので」
「はいはい。気をつけてね」
手を振って上原と別れた二人は、少しだけ早足でその場を離れた。途中、クロがついて
きていないか、と思い振り向いたが、それは杞憂に終わった。
「ねえ、あの猫何歳かしら?」
不意にメリーが口を開いた。
「さあ…。あのおばあちゃん、私が生まれるちょっと前に旦那さんを亡くしちゃってるん
だ。私の両親が言うには、やっぱり物凄く落ち込んでたみたいで、全然元気がなくなっ
ちゃってたんだって。でも、そんなときにクロを拾ったらしいの。それからね。新しい
家族ができた、って喜んで…元気が戻ったんだって」
「そう…。もう本当に長生きしてるのね、クロ」
「そうだねー。大人しくてのんびりしてて。おばあちゃんとお似合いだよね」
「クロ、もうすぐ死ぬわ」
驚くほど冷たいメリーの声を、結奈は聞いた。顔は見れなかった。
「なんとなくわかるの。生き物の寿命…」
そして、初めて。ほんの少しだけメリーを怖いと思った。

24 :1:2014/09/09(火) 12:22:47.15 ID:fm+cCKNY0.net
図書館での調査では、大きな収穫を得ることができた。六波羅から聞いた少女のものと
見て間違いない事故の記事を発見したのだ。
記事によると、彼女は事故にあった当日、用事があるからと言いいつも一緒に帰ってい
た友達とは帰らずに、ホームルームが終わると早々に教室を出て行ってしまったらしい。
おそらく、裏山でなくした“何か”を探しに行ったのだろう。そして、その道の途中…も
しくはその日の探索を諦めた帰路の途中に、事故に合い、帰らぬ人となってしまった…。
そう考えて間違いなかった。
真相に近づいたときにも、いつもの様には結奈のテンションが上がることはなかった。
今朝メリーが一瞬見せた、確かにこの世に生きている人間のものではない、恐ろしいほど
に冷たい表情と声。考えてしまった。自分の隣にいる少女は、今までどれだけの人間を殺
してきたのか。5ヵ月程前に自分と出会ってからは、人を殺しているような様子はなかっ
たが、それも勝手な思い込みに過ぎない。一緒にギャグ漫画を見て笑った夜、自分の寝た
あとに彼女は人を殺したかもしれない。彼女にピエロの服を着せてからかった日、彼女は
怒って結奈の部屋を出ていき、次の日も姿を見せなかった。結局、その翌日に部室に姿を
見せ、お互いにやりすぎたと仲直りしたが、ひょっとすると彼女は自分の前に姿を現さな
かった日、どこかで人を呪い、殺したのかもしれない。そんな考えが次から次へと浮かび
結奈の頭にメリーへの恐怖がちらちらと顔を見せた。

25 :1:2014/09/09(火) 12:24:53.06 ID:fm+cCKNY0.net
そして今現在、夕方4時半。結奈たちは学校の裏山にいた。
「これだけ彼女に関する情報を投げ掛ければ、さすがに無視は続けられないと思うわ」
メリーのこの言葉により、その日の内にもう一度裏山の少女の霊に会ってみることになっ
たのだ。
3人は最初に少女の霊を目撃した場所で、彼女が現われるのを待った。そして、5分も
経たない内に彼女の声が聞こえてきた。
「・・・・・・こ・・・・・・ど・・・こ・・・どこ・・・」
メリーが前方のやや左を指差した。
「いたわ」
結奈も同じ方向に視線を向ける。十兵衛はその横で目を泳がせている。
「あなたは…17年前にこの下の道で交通事故にあった…黒澤沙夜子さんね?」

26 :1:2014/09/09(火) 12:27:55.49 ID:fm+cCKNY0.net
メリーが少女の霊を見据えたまま、口を開いた。
彼女はぴたりと動きを止めた。そして、メリーたちに向き直った。
「…17年前の夏。あなたは学校の裏門からこの山へ続く道路で、車に跳ねられて死んだ
黒澤沙夜子さんなのよね?そうでしょう?」
メリーが続けた。
少女は、メリーの言葉を聞いている様で、声はもう発していなかった。…が、しばらく
メリーをみつめていたかと思うと、すぐにまた“探し物”を始めた。
「どうして…?」
予想外の結果に、結奈は肩を落とした。
「駄目なのね…少しは反応してくれたけど…。彼女はそれほど探し物に執着しているって
ことみたい。…彼女が何を探してるのか…それさえ解れば…」
メリーも肩を落とした。一連の様子は見えていなくても、二人の反応で十二分に状況を
察した十兵衛も肩を落とした。
少女の霊は、再び泣きながら何かを探し始める。

「…ねえ、今…彼女なんて言った?」
結奈が小さく尋ねた。
「何って…別に変わったことはなんにも。どこ、どこ…としか」
「違うわ。今、確かに…」
3人は耳をすました。

「どこ・・・・・・どこに・・・いる・・・の・・・・・・」

27 :1:2014/09/09(火) 12:31:56.40 ID:fm+cCKNY0.net
「やっぱり!彼女、確かに“何処にいるの?”って言ってるわ!」
「物、じゃなかったのね。誰かを探して…?」
そのとき、結奈はふとある可能性を思いついた。あくまでも可能性に過ぎない、しかし
それが間違いだという証拠もなかった。だから、結奈は彼女に呼び掛けた。
「黒澤沙夜子さん!あなたが探しているのは…猫じゃないですか?」
少女の動きが止まった。「ねこ・・・・・・み・・・あ・・・・・・」
“みあ”彼女は確かにそう言った。やっぱり。結奈は小さくそう呟いて、続ける。
「私、みあのいるところ知ってるわ」
結奈がそう言った途端、少女は物凄い速さで結奈に掴み掛かった。
「どこッッッッッ!?ミアッッッッ!!!!どこッッッ!!!!」
「きゃあ!や…離してェ!!」
肩の辺りに強く掴まれる感触があった。振りほどこうと腕を振り回すが、何かに当たる
感触はなく、ただ空を切るだけだった。そして、妙な脱力感が結奈を襲った。身体中から
どんどん力が抜けていく。次に呼吸が上手くできなくなる。吸えない。吐けない。
「そうだったのね…この人が探していたのは…」
と、肩の感触がなくなった。自分の足で立っていることができずに、その場に崩れ落ち
た結奈が霞む目で見たのは、自分と少女の間に割って入ったメリーだった。
「黒澤さん!落ち着きなさい!」

28 :1:2014/09/09(火) 12:43:24.30 ID:fm+cCKNY0.net
十兵衛が結奈を抱き起こした。
「部長!しっかりしてください!部長ッ!」
「安心して。いきなり強い霊気に触れて少し生気がすり減ってるだけ。安静にしていれば
すぐに元に戻るわ。それにしても見事な直感ね、結奈。大丈夫…あとは任せて」
乱れた呼吸のままで、結奈は頷いた。メリーはそれを見て微笑み、少女に向き直る。
「落ち着きなさい、黒澤さん。ミアのいる場所はもちろん教えるわ」
「…あなたは…?」
「私、メリーさん。今、人形に憑依してるの。でもあなたと同じ…霊よ」
その言葉を聞いた少女の霊…沙夜子は、ボロボロと涙を流した。
「メリーさん…ミアが…いなくなっちゃったの…。ミアは…まだ生まれたばっかりの小さ
い頃に…捨てられてたの…。家に連れて帰って…お父さんとお母さんを必死に説得した
の…。ミルクが大好きで…首輪が大嫌いで…私の大切な友達なの…。裏山で黒猫を見た
って…友達が言ってたの…だから…私…ミアを探してるの…」
「黒猫…やっぱり結奈の直感で間違いないようね」
「メリー…黒澤さん…」
突然呼び掛けられ、2人は振り向く。十兵衛に肩を借りた結奈が立っていた。
「すぐに…行きましょう…クロの…ミアのところに」

29 :1:2014/09/09(火) 12:44:11.26 ID:fm+cCKNY0.net
結奈の身体のこともあり、上原の家に着いた頃にはもうすっかり日が暮れていた。ミア
は家の庭に面した縁側に座っている上原の膝の上で丸くなっていた。
「ああ…間違いないわ…ミアだわ…ミア…」
庭と道路を隔てるブロックを擦り抜け、黒澤はゆっくりミアに向かっていった。…と、
ミアは何かに気付いたように顔を上げ、上原の膝から降りた。そして、ゆっくりと黒澤の
いる方に、ヨロヨロと歩き始めた。
「クロ?…どうしたんだい?」
急に庭の中央に向かって歩きだしたクロに、不思議に思った上原が呼び掛けた。クロは一
度上原の方に振り向いて、また向き直り、その不確かな足を進めた。
「ミア…」
庭の中央近くで、黒澤とミアは止まった。黒澤の手が実体を持っていたならミアの頭を
撫でた。ミアは横になり、ゆっくりと目を閉じた。
「あ…ミア…」
そして、そのままもう二度と動くことはなかった。
「よかったね、クロ」
そう言って涙を流しながら微笑んでいた上原の顔が、結奈にはとても印象的だった。

30 :1:2014/09/09(火) 12:46:29.67 ID:fm+cCKNY0.net
「部長…。クロ…いや、ミアは待ってたんですね、黒澤さんのこと」
もうすっかり真っ暗になった公園で、結奈とメリー、十兵衛はベンチに座っていた。
「うん…私もそう思うわ…」
「それと、上原のおばあちゃん…黒澤さんが見えていたんですかね?」
「どうかな…見えてはいなかったけど…なんとなく解ったんじゃないかしら」
黒澤は、動かなくなったミアを何度も撫でて、すっと立ち上がった。その手にはミアの
霊体が抱えられていて、結奈たちに礼を言うように元気にニャア、と鳴いた。
「ありがとう」
黒澤は結奈たちにそう言うと、ミアと共に消えていった。
「あ!?メリーさん泣いてる!」
突然十兵衛が声を上げメリーを指差した。結奈も思わずメリーに目をやる。
「な、なによ…仕方ないでしょう…」
少し恥ずかしそうに涙を拭うメリーを、十兵衛はさらにからかう。
「しつこいわね…!もう半年ぶりくらいだから、苦しませずには殺せないわよ?」
「うわーごめん!冗談だよー」

31 :1:2014/09/09(火) 12:47:40.59 ID:fm+cCKNY0.net
半年ぶり。メリーはそう言った。
「ちょっと…結奈?どうしたの?」
思わず、メリーのことを抱きしめていた。
“メリーさん”は、都市伝説を信じて恐怖する人間の念が生み出した霊体で、それ故に元
となった都市伝説の内容通り、人間を不幸な目に合わせる存在になるのは必然だった。そ
れは鳥が空を飛ぶように自然なことなのだ。
しかし、メリーは結奈に出会ってからはその“必然”を行っていない。これは結奈の勝
手な思い込みに過ぎないかもしれないが、メリーが人間を尊いものと思い始めてくれてい
るのではないだろうか、と。そう感じた。
「ちょ、ちょっと本当にどうしたのよ結奈!」
「別に!大好きだからこうしてるだけだよ!」

おしまい

32 :1:2014/09/09(火) 12:49:23.26 ID:fm+cCKNY0.net
くぅつか

33 :1:2014/09/09(火) 12:54:33.14 ID:fm+cCKNY0.net
さいごのあげです

34 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 12:55:19.74 ID:hsUcBiLt0.net
おしまい

まで読んだ

35 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/09(火) 12:57:47.73 ID:ko7g5Fuo0.net
>>34
全部読んでんじゃねえか

まあ普通に面白かった

36 :1:2014/09/09(火) 13:03:31.73 ID:fm+cCKNY0.net
ありがとうございます。

今はこの話を基礎にして創作同人で漫画描いてるので
もしも「あれ、これって…」みたいなのに出会ったときは
どうぞよろしくお願いします。

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