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女「本の中では饒舌なのにね」

1 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:23:54.425 ID:zRE51oEz0.net
 あいつが学校に来るのは、三日ぶりだった。
 珍しいことじゃあない。病弱なわけではなく、単に面倒臭がり屋なのだろう。元来面倒臭がり屋な彼だったのだが最近ではそれに拍車が掛かったらしく、笑うことすら煩わしくなったのだろう。
 腫れものに触れるようなよそよそしいクラスメイトの挨拶に、切れのある流し目をぴくりとも動かさず、慇懃的に小さく首を下げて応対し、歩みを止めることなく自分の席へと進む。


 私はその途中に躍り出て、机と机の間に立ち、狭い通路を塞ぐ。私から視線を外して方向転換しようとしたあいつに、声を掛ける。

「ねえ、**……久し振りにさ、休日一緒に出掛けてみない?」

 心臓が破裂しそうなほど緊張したけれど、それは表には出さずに済んだ。なんともないことのようにを意識し、わざとらしいほどのあっさりを演出する。
 幼馴染みとはいえ、高校に入ってからはほとんど話などしていない。入学してからすぐに起きたとある事件以来、昔の活発な彼とはまるで別人のように変わってしまい、話し掛けるのが怖くなったのだ。
 それから機会を掴めずに二年になり、クラスが同じになった。これは天啓だとわずかばかりの勇気を振るったのだが、相手の反応は芳しくない。

「悪いけど、やりたいことがあるんだ」

 こちらの顔もまともに見ずにそう言って、私を避けて自分の席へと回り込む。

「あ、そ、そっか! やりたいことって……」

 とにかく会話を続けようと糸を手繰るよう新たな会話を引き摺り出すが、彼はもう、私の言葉など聞こえていないようだった。
 クラス中の目が、私へと向けられていた。気恥ずかしさやら悲しさやらで涙腺が緩むが、それを堪え、人気のない廊下へと走る。

 教室の外に出てから、中から見えない位置の壁に背を着け、そこに凭れる。自然と足の力が抜け、その場にへたれ込んだ。手で顔を覆って隠してしまうと、その途端、抑えられなくなった涙がだらだらと零れ落ちてくる。
 泣いて視界が霞むと、ぼやけた空間が歪み、あいつの顔の形をなした気がして、悔しくて、悲しくなった。そこでふと、妙に冷静に先ほどの彼の風貌が繊細に脳内に浮かんできた。
 彼は中指の皮膚を、親指で擦っていた。豆でもできたのだろうか? 帰宅部の彼が?

「ペン……ダコ?」

 呟くと、不思議と涙が止んだ。思考が他所を向いたからだろうか。顔を上げると、クラス委員の畠中がこちらの顔をのぞき込んでいた。

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