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魔法使い(♀)「リアル男子とか無理なんで理想のショタを魔法で作ろうと思う」
- 1 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:26:39.655 ID:CTVOl+ey0.net
- みたいな
- 2 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:27:11.743 ID:P5TZErS10.net
- 後輩の人か?
- 3 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:27:48.009 ID:7YLDMcsza.net
- ぁだたとぁ
- 4 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:29:02.235 ID:P5TZErS10.net
- 前回にならって
こうはーーーい!好きだーーー!出てきてクレー!
- 5 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:29:48.431 ID:CTVOl+ey0.net
- ただの立て逃げやで
- 6 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:33:12.838 ID:P5TZErS10.net
- なんやて
俺のこの気持ちをどうしてくれるんだ
- 7 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:40:42.557 ID:LBOCh7lAK.net
- 今書いてるのかもしれない
まだ20分しか経ってない
チャンスはまだある
- 8 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:41:53.412 ID:P5TZErS10.net
- それを信じよう
- 9 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:43:32.917 ID:CTVOl+ey0.net
- VIPには乗っ取りという風習がありましてね
- 10 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:44:39.190 ID:J4L/O2u9a.net
- 魔法使い(92)
- 11 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:44:51.067 ID:P5TZErS10.net
- つまりあなたが書くんですね
- 12 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:58:49.779 ID:LBOCh7lAK.net
- まだ30分
- 13 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 05:59:09.538 ID:P5TZErS10.net
- 頼む・・・頼む・・・
- 14 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 06:08:35.640 ID:P5TZErS10.net
- 来てくれ
- 15 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 06:10:10.547 ID:mIDm3KYc0.net
- 魔法使い♀「えっ魔術師との合コン!?やだやだ!!」
魔法使い♀2「え〜トメかわいいんだから大丈夫だよ〜」
トメ「え〜!無理だってほら、あたし調合しなきゃだからじゃあね!」
サチ江「あっ待って」
トメ「ふぅ・・・リアル男子とかムリだよぉ」
トメ「でも、魔法以外のお世話してくれる子がほしいなぁ」
「どうせなら美少年がいい・・・!」
トメ「リアル男子とカムリ名で理想のショタを魔法で作ろうと思う」
- 16 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 07:07:26.681 ID:LBOCh7lAK.net
- ―― 24年 ――
魔法と錬金術の修業に身を置いた月日。
「もう独りでやれるだろ、出ておいき」
異性と関わる暇もない地獄の日々に終止符を打ったのは、呆気ない一言だった。
数日生き延びるだけの食糧と、端金。
「使い魔に」と、与えられた鳥だか猫だかよく解らない不思議な生き物。
途方に暮れつつも、アタシは生き延びるために動いた。 動かざるを得なかった。
住み心地の良さそうな森を探し、家を作り、使い魔を職安に送りつけて収入源を掴んだ。
後は、のんびりと魔法学と少しばかりカジった錬金術で、化学では作り得ない不思議な薬を生成しながら日銭を稼ぎ、晴耕雨読の日々を心行くまで味わう……。
そう、……心行くまで。
ところがどっこい、魔法使いと謳ってはいても、所詮は人間。
何の刺激も無い生活は、やはり修業時代とはまた別に、地獄のような日々なのだ。
- 17 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 07:21:36.950 ID:LBOCh7lAK.net
- いつも通りに作った薬を使い魔に持たせ、入り用の品書きと巾着も預け、街へ飛ぶ姿を見送る。
イッテコイと名付けた使い魔を見送った後は、もう、それはもうお決まりの作業が待っている。
朝食、薬を調合し、昼食、また薬を調合し、夕飯。
たまに変わった事があるとすれば調合に必要な素材を求めて森を彷徨うか、リンチに遭って手ぶらで帰って来た使い魔の治療をするくらい。
出産適齢期を超えようと言う女の暮らしではない。
昼食を済ませ、ダラダラと流れる雲を眺めながら、ため息を吐いた。
――もう、このままただ薬を作り続けて何の縁も無く、誰に看取られる事も無く死ぬのだろうか。
そんな風にぼそりと呟いた、その時だった。
- 18 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 07:33:01.158 ID:LBOCh7lAK.net
- アタシの脳天に、割と強い衝撃が襲いかかった。
頭をぶつける事こそ有れど、こんな風に縁側で脚をブラブラとさせながら空を眺めていて後頭部に衝撃を味わうなど、ちょっと有り得ない出来事である。
秘境中の秘境であろう我が家でまさか物盗りであろうはずもなく、振り返ってみれば、情けない顔をした使い魔がそこにいた。
だが、ちょっとばかり風体がおかしい。
持たせた薬は無い。
巾着は……、いつもより少し大きい?
で、だ。
麻で編まれた吊し鞄。 それが明らかにおかしいのだ。
品書きに書いた物は、確かに収まっている。
だが、それ以外の物が、それ以上に詰め込まれているのだ。
- 19 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 07:45:23.898 ID:LBOCh7lAK.net
- ――あんた、コレどうしたの……?
疑惑の目を向けるアタシから逃げるように、使い魔は洗面所へと逃げて行ってしまった。
訝しく思いながらも、麻袋の中身を調べてみる。
リンゴ、羊肉の燻製、胡椒、麻の種。
頼んだ品物は完璧である。
問題は、その下から出て来た品々だった。
華美な装飾の施された時計、腕輪、指輪にドレス。
巾着を開けば、持たせた薬の代金には不釣り合いな価値の硬貨がギッシリだ。
子供やカラスに襲われて……という事は何度もあって、使い魔が悲惨な姿で帰って来ることには、そう驚かなくなっていた。
だがこれは……。
と、硬貨を手にして、巾着の中にまだ何かが有るのに気が付いた。
――……手紙……?
- 20 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 07:55:21.168 ID:CTVOl+ey0.net
- ほう
- 21 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 07:57:49.557 ID:LBOCh7lAK.net
- その封筒は蝋で閉じられた、一目で高級と解るそれだった。
差出人は綴りからすると男性。
流れるような美しい字体だ。
宛名には、まだ見ぬ魔法使いの君へ。
何と書くか悩んだのか、差出人の名とは違って、一語一語が途切れている。
これはこちらの素性が解らぬよう、使い魔には余計な物を持たせないようにしているので無理もない。
だが、ただでさえ刺激の無い日々に物理的な衝撃を伴って舞い降りた贈り物だ。
楽しまない訳にはいかない。
高揚する気持ちを抑えながら、開いて便箋を取り出すと、目を疑う一文が飛び込んだ。
――私は、恋をしてしまいました――
- 22 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 08:13:54.392 ID:LBOCh7lAK.net
- 後頭部を襲った衝撃をはるかに超える衝撃が網膜を貫通し、脳髄を揺さぶり、アタシの口から小さな悲鳴を漏らすに至った。
心臓が張り裂けんばかりに脈動し、下腹部が炊き上がるように熱をもつ。
手が、震えた。
恋。 恋である。 どこの誰とも、殿方とすら確証の付かぬ相手からの一文。
それでもアタシは、その一文に恐怖にも似た歓喜を抱いてしまったのだ。
……そして、次の一文が、アタシを絶望の谷底へと蹴り落とす事になる。
――ワタシは、アナタの使い魔に、恋い焦がれてしまったのです――
「は……?」
魔法で時を止める事は出来ない。
だけどアタシは、その一文を読んだ瞬間、魔法学の三万年という歴史を覆す事がこんな手紙の些細な一文で可能になるという事実を、身を持って味わったのだ。
- 23 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 08:29:17.467 ID:LBOCh7lAK.net
- どれだけ硬直していただろうか。
何度読み返しても、逆から読んでも、逆さにしてもその手紙は、使い魔であるイッテコイに宛てた恋文に他ならなかった。
後頭部を直撃したのであろう割れたリンゴが、その肉の色を変えて、床に鎮座している。
微かな、布切れの音。
音の方、洗面所の方へ目をやると、……そこに、見知らぬ少女が立っていた。
――誰……? 年の頃は12……いや3……? 髪長……肌綺麗……へ? や、いや……、……誰?
床に引き摺らんばかりに伸びた透き通らんばかりに美しい金髪。
絹に雪をまぶして、白粉を塗りたくったかのような肌。
師匠である大婆様の家で一度だけ見せてもらった西洋人形のような整いすぎた顔立ち。
自分がどんな顔をしているのか、自分自身ですら解らなかったが、なるほどなるほど。
目の前の少女がアタシを見る表情で、だいたい何となく読めてきた。
手紙の真の愛しき君は、コイツの事だ。
- 24 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 08:47:43.304 ID:LBOCh7lAK.net
- すり潰した実を濾す布で、申し訳程度に身を包むフリをしながら、少女はアタシの前に跪いた。
言葉無く、ただただ元から華奢なその身を更に小さくさせ、顔を伏せている。
「あんた、人間に化けれたのね」
全く……、全く知らなかった。
使い魔がどうやって物品のやり取りをこなすのか、猫だか鳥だか判別つかない生き物相手に街の商人が硬貨を素直に渡すのか、微塵も疑問に思わなかったと言えば嘘になる。
だがそこは魔法使いの使い魔だ、何とかしているのだろう、と特に気には留めなかった。
仕事はこなして帰ってくるのだから、手段を聞くのも野暮である。
――……だけれどもこれは……っ、これは無いでしょう……。
明らかに自分より女として、雌として秀でた容姿の少女が、今自分の目の前にいる。
その少女は自分の使い魔だ。 言ってしまえば使いっぱしりだ。 奴隷だ。
それが主人であるアタシが刺激皆無の絶望的な未来を見出しかけた、よりにもよってその記念すべき日に、何処の誰かも解らないが金持ちで教養の有りそうな殿方から求婚を受けたなんて。
――そんな現実あって良いはずがない。
- 25 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 09:16:46.310 ID:LBOCh7lAK.net
- 戦場魔法学を学べば良かったと、今更ながらに後悔した。
手堅く稼げて直接的な身の危険もない、そんな選択をした過去の自分を呪った。
薬学魔法士は性質上、その身を狙われやすいというリスクは確かにある。
が、それ故に、その身は秘境に潜めたまま魔術の専修に勤しみ、秘匿されたまま、また秘境で暮らし続けるのだ。
人里とのやりとりは使い魔による交易に徹し、孤独を貫く。
魔法使いは修学する魔術に合わせ、三年かけて体内の元素を構築し、そしてそれが終われば他種の魔術に使用する元素を扱えなくなるという大原則がある。
3年修業すれば人生の6割が決定されるようなものなのだ。
そして、当時のアタシは、それを良しとし、最良の選択だと決めつけていた。
早くして子を成し、男をとっかえひっかえしていた戦場魔法士である母の姿があったからだ。
男に媚びを売るその姿が、当時のアタシには醜悪に映ったのだ。
人の命さえ奪う戦場魔法学に、侮蔑の念すら抱いていた。
魔法士として、人として、また女として、清廉潔白な身であろうと、心に誓ったのだ。
- 26 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 09:30:49.837 ID:LBOCh7lAK.net
- それがどうよこの現実。
三十路過ぎてからの日々の脱力感、無力感。
安穏とした日々には感動も何も無く、ただただ誰のためかも定まらない薬を作り続ける毎日。
出逢いなんて向こうから来る? 来るわけ無いわ、無い方選んじまった上に他人との接し方すら忘れてるんだアタシは。
現に人に化けただけの使い魔相手に軽くキョドってますわ。
今まで散々こき使ってきた相手なのにね、可笑しいよね、笑っちゃうよね、笑えよこらイッテコイこのやろう。
挙げ句……その相手に先を越され……っ、あぁああもうナニモカンガエタクナイシニタイ殺せいっそ殺せぇええぇっ!!
後半から全て声に出していたらしい。
我に返って使い魔を見れば、もうどうしようもなく悲しいという表情でこちらを眺めている。
絶望感に捕らわれている私を悲壮感だだ漏れの眼差しで見つめてくれるのだ。
いつもの猫だか鳥だか判別つかない生き物でなく、信じられないような身体的且つ外見的、見た目年齢的上位の少女が。
何かを叫びながら、何かを嘔吐しながら、アタシは意識を失った。
白む視界の縁に、使い魔だった少女が駆け寄るのが、見えた。
- 27 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 09:42:12.207 ID:LBOCh7lAK.net
- 身を起こしたら、窓の隙間から光がこぼれていた。
朝だ。
それも昼に近いらしい。
テーブルには手付かずの朝食と、部屋には昼食の下拵えであろう匂いが漂っている。
使い魔用の小さなテーブルにも、朝食がそのまま置かれていた。
――……ぁぁ。
意識を失う前の自分が全て、そのまま脳内に描かれた。
とんでもない失態だ。
情けなくて涙が出る。
調合材の棚、その脇に、昨日の品々が綺麗に並んでいる。
とにかく、食事の前に仕事の準備を……、そう思い、気怠い身体を寝床から引き剥がすと、麻袋に手を伸ばす。
――と、廃材入れの中に見慣れぬ色がある事に気が付いた。
目を凝らさなくても解るそれは、 細かく刻まれた、手紙の色だった。
- 28 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 09:55:00.095 ID:LBOCh7lAK.net
- 食器のぶつかり合った音に思わず体が跳ね、音の方に目を向けると、『いつもの』使い魔がいた。
短い手足で器用に皿を並べている。
アタシをチラリと見ると軽くお辞儀をして、そそくさと自分の食事場に移動する。
正直、少女の姿でこんな真似をされていたら、今のアタシは食事に付こうとはしなかっただろう。
昼食は、アタシの大好きな、鮭肉入りのシチューだった。
朝食も好物のアップルパイだった。
冷めてしまったパイとシチューを、すっかり空になった胃袋に、交互に流し込む。
――……あんたさぁ、……。
言いかけて、止めた。
つまりは、そういう事なのだろう。
これ見よがしに捨てられた手紙も、アタシの好物で固められた料理も。
使い魔の手配、……手続きどうするんだっけか。
大好きなパイもシチューも、今日はただただ、舌を素通りして行くばかりだった。
- 29 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 10:04:47.619 ID:3qaycWyia.net
- 目が滑る
- 30 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 10:07:18.567 ID:LBOCh7lAK.net
- ――驚愕の出来事から、ひと月が過ぎた。
流石にアタシの精神状態も以前と同じくらいには、治まった。
だが、使い魔はキッチリ使い倒してやった。
倍の仕事だ。
当然だ。
主人であるアタシに、アレだけの精神攻撃を仕掛けたのだ。
償って貰わなければ割に合わない。
ただ、アタシだって鬼ではない。
今日の仕事が終われば、久しぶりに休ませてやるつもりでいるのだ。
西の空が真っ赤に染まる、そのただ中を、フラフラと影が近付いてくる。
いつもの影が、今日は2つ。
――さて、イッテコイの好きな食べ物って、何だったけな。
ぼんやりと、長い付き合いだった使い魔の帰りを見ながら、アタシはぼんやりと、そんな事を考えた。
- 31 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 10:19:01.223 ID:ZtM1ONnx0.net
- みてる
- 32 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 10:19:33.290 ID:LBOCh7lAK.net
- 連れ添って来た新しい使い魔は、イッテコイと同種のようだった。
つまりはまぁ、コイツも化けられるのか。
流石にイッテコイの人の姿を見てから、新しいパートナーに適当な名前を付ける気にはなれない。
追々、熟慮してから命名しよう。
契約でもある命名を適当に決めた負い目が、今更になって湧いた自分に、少しばかり苦笑した。
つぶらな瞳の使い魔2匹は、そんなアタシを見て小首を傾げる。
夕飯としてテーブルに並べたのは、めったに作らないピッツァ。
食材が高価だが、イッテコイが目を輝かせながら食べていた姿を思い出して、ちょっと無理をしてみたのだ。
その分ガッツリ働いてもらったのでプレゼントとは言い難いが、同じテーブルの向こうで嬉しそうに頬張る姿を見ると、深く考えかけたのが徒労に思えてしまう。
素直な、良い娘だよ、アンタは。
- 33 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 10:29:26.088 ID:LBOCh7lAK.net
- 仕事の合間に麻袋や巾着へと紛れ込んでくる手紙には、アタシへの許諾を一心に願う誠意が綴られていた。
気を使ってか、イッテコイは最初の数日は手紙を途中で捨てていたらしい。
そんな事を向こうも察したのか、匂わせるような事も書かれていた。
よくもまぁ、正体がこんな猫だか鳥だか判別つかない生き物相手に、これだけ恋い焦がれられるものだ。
食事を終え、寝床に潜り込む。
目を瞑ると、鼻腔の奥がツンと痛んだ。
ジワリと、枕が濡れていくのが解る。
イッテコイは心配性だから。
明日の朝までには、空っぽにしておくから。
雑な付き合いだったとは言っても、ん十年来の付き合いなのだ。
寂しいものは、寂しいのだ。
- 34 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 10:52:40.979 ID:LBOCh7lAK.net
- 最近飼い始めた鶏が、けたたましく鳴き声を上げる。
その鶏声に目を覚まし、いつも通りに顔を洗って、いつも通りに朝食を済ませる。
次は仕事だ。
仕事の前の、ひと仕事。
契約終了の書類に名前を入れ、判を押す。
このためだけにあつらえた小さな麻袋に書類をしまい、イッテコイの首にかけた。
手続きを済ませたら、もうその後は彼の所へ真っ直ぐ飛んでいけば良い。
人と精霊や魔獣の色恋など読み物の中だけだと思っていたが、いざ自分の身近で起きてみると不思議なもので、当たり前でいて、美しいとすら感じてしまう。
あれほど妬んで僻んでいた数日前までの自分が嘘のようだ。
親より長い付き合いの使い魔を寝取られたのだから失神くらいは当たり前だと、アタシは自分に言い聞かせる。
いつものように。
いつものように見送った。
せいぜい幸せになんなさいよ。
主人を差し置いたのだ、幸せになってもらわなきゃ、余計に惨めってものだ。
- 35 :西村博之\(^o^)/←を殺す:2015/05/24(日) 11:08:40.693 ID:cI9C4B2g0.net
- はよ
- 36 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 11:15:11.952 ID:cI9C4B2g0.net
- ほ
- 37 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 11:16:52.738 ID:LBOCh7lAK.net
- さて、イッテコイがイッタキリになってから、かれこれ半年。
アタシは女としての寂しさがピークを迎え続けて気が狂いそうになっている。
新たな使い魔も、即日化けさせてみれば、悲しい事に♀と判明したから悲しみも激増である。
この種族は人に化けると皆美しくなるのが原則なのだろうか……、憎たらしい事この上ない。
そんな日々の悶々とした気分を払拭する為に、新たな学問に手を出すことにした。
魔法学とは構造が真逆の、錬金術である。
人体そのもので元素を構築し、触るものに変化を与えるのが魔法だが、錬金術は違う。
身の回りの物質全てを用いて、物質その物が保有する元素を利用し、変化を成すのが錬金術だ。
体感で何となく理解する魔法と違い、錬金術は理を覚える事から始めなければならない。
創造する為に消費するための元素を調整し、想像を実体にするまでの構築順序を……。
――と、とにかく理詰めの学問なのである。
元素に関する基礎知識はあれど、似たようで畑が全く違う技術なだけに、魔法学を一度学んだ者は、普通は手を出さぬ道である。
一生を費やしても何も成せぬ学問とも言われているのだ、そうでなくても進んで飛び込む者はいない。
それでもアタシは、その学問に飛び込んだ。
- 38 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 11:28:20.562 ID:cI9C4B2g0.net
- ほ
- 39 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 11:39:07.153 ID:LBOCh7lAK.net
- 現実問題として、アタシはもう異性との出逢いなど不可能だ、と結論づけていた。
もう32だ。
今更、人里に降りて好みの男性にアタックし、結婚妊娠出産なんて狙える体力も知識も余裕も無い。
外見的にも毎朝鏡でおはようございますと見慣れた身なり、偶に使い魔が拾ってくる雑誌を見れば、劣っているのはイヤでも解る。
面倒そうな親戚付き合いやら、薬学魔法士としての身の危険もある。
ならば、ならばだ。
もういっそ魔法で自分好みの性格を神経植物芽で作り上げて、それに錬金術で大好きな7〜8歳の理想の肉体に合わせちゃえば、ホラ?
どうせ秘境だし咎める人なんていないし、ね?
そう、ただただその下心丸出しの一念のみが、修羅の道である練金道へと、アタシを駆り立てるに至ったのだ。
何年かかろうが、絶対に成し遂げてみせる。
死ぬ前に理想の少年と恋をして死ぬんだ。
死んだ後の事? ――…… 知 る か !
その決意は、ただならぬ外道への、第一歩であった。
- 40 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 11:55:36.775 ID:4/CYWf2Qa.net
- ほ
- 41 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 12:06:50.824 ID:t5JPDAh20.net
- 見てるよ
- 42 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 12:07:16.767 ID:LBOCh7lAK.net
- とは言え、今まで通りに仕事は続けなければならない。
自らの商品である薬に責任と自信を持っているからだ。
そうして積み上げてきた顧客の信頼は、どんな理由であれ失えば二度とは戻らない。
最悪、使い魔に化けさせて身を売らせれば見た目11、2歳なんだしかなりの儲けになる。
イッテコイの嫁ぎ先に押し掛けてイッテ住んじゃう。
……などというゲスが反吐はき軽蔑するような考えも、脳裏を過ぎりはしたが、そればかりは最後の最期に回すべきだと思いとどまった。
だが、それほど思い悩むまでに、人体を正当な手順に従わずに造るという事は、困難を極めたのだ。
まず、薬物や鉱石を造り上げるような、単純なパズルゲームとは次元が違った。
人間の中にある小さな、極小の更に小さな世界、その中で蠢くモノを理解しなければならない。
琵琶に毛が生えて自走する謎の存在だ。
その謎の存在を構築するモノを知り、ソレが何を成すために存在するのかを理解しなければならない。
途方もない知識量が必要とされるのだ。
毛先にすら及ばない、人体を構成するために必要なのか定かでもないモノのために、ソレを構成するためだけに失われていく数ヶ月。
常人なら気が狂っていてもおかしくない。
そして、立ち塞がるのは錬金術だけでは無かった。
- 43 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 12:24:19.963 ID:LBOCh7lAK.net
- 薬学魔法士としての十八番である、植物粉精製の延長であると踏んでいた神経回路の精製にも、手も足も出ない状況に陥っていたのだ。
言ってみれば、単に神経だけなら自身の神経を複写して植物芽を混ぜてしまえば機能としては動くのだ。
ただ……、動くだけなのだ。
AからBへ、信号は通じる。
だが、それだけ。
増えもしなければ、返信もしない。
人に合わせようと調整するだけで、植物ですらない、何か得体の知れない管に成り果てる。
必死の作業、それでも手掛かりを探すだけに浪費されていく膨大な時間と体力。
むしろ里に素直に素性を隠して降りてから、見合いでもしてた方がマシ立ったんじゃないかとすら思える苦行。
アタシを、そんな考えに逃げる事無く、半ば半狂乱になりながらも支え続けたのは、作業前にしたためた理想の男の子の下書きだった。
――……絶対アタシに依存しまくって死ぬまで愛し続けてくれる面倒見の良い肉体的には成長しない男の子を生み出す。
もはや、狂人以外の何者でもない信念を糧に、彼女は人生を浪費し続けた。
- 44 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 12:36:21.668 ID:cI9C4B2g0.net
- ほ
- 45 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2015/05/24(日) 12:42:30.752 ID:LBOCh7lAK.net
- 7年。
39歳。
ギリギリの歳である。
自身の卵子と、使い魔に手段不問で入手させた精巣。
それをベースに、組み上げた肉体に神経を這わせ、全てを合致させていく。
挙動を万遍なく確認し、脳を含めた全ての臓器に、受精卵を溶かしていく。
永かった苦難の道に、光が射し込もうとしていた。
――……目を、……目を開けて……お願い……。
固唾を飲んで見守るのは、更年期障害手前の魔法使いだけではなかった。
身を粉にして彼女に助力した、使い魔。
――と、その子ども達。
その場にいる全ての者が、ベッドの上に横たわる美少年風の何かを見つめていた。
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