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港町の山手にあるレストランは午後四時に開店した。開店して間なしに夫婦づれらしい中年の男女が入ってきた。ふたりは若い

1 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:16:12.985 ID:gczD/OB20.net
ボーイに案内されて壁際の席についた。
ボーイはふたりを向かいあわせにすわらせようとしたのだが、
男は強引に壁ぎわのソファへ、女と並んで腰を据えてしまった。

2 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:16:50.194 ID:gczD/OB20.net
ボーイがメニューを持ってふたたび客のテーブルの横に立ったとき、
それまで黙り込んでいたふたりが突然話しはじめた。
「ここへ来たことがあるんだな。お前は」
「ええ」
ボーイは険悪さを察知した。
ボーイは部屋の隅に戻った。

3 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:17:28.122 ID:gczD/OB20.net
妻が片手をあげてボーイを呼ぶ。
「お決まりでございますか」ボーイは妻のかたわらに立った。
「ここへ、何度も来てるんだな」夫がことばをはさんだ。
「いいえ。そんなに何度もってことは」
「何度も来とるんだ。そうだろう」
妻は答えず、料理の注文を続ける。

4 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:17:52.387 ID:gczD/OB20.net
「何度も来とるんだ。そうだろう。あの男とも、来たんだな」
「来ていません」妻はいそいで注文を打ち切る。「それだけで結構です」
「かしこまりました」ボーイが料理を復唱する。

5 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:18:11.376 ID:gczD/OB20.net
「あの男とも、来たんだ。そうだろう」ボーイが料理を確認している途中で、夫が大声を出す。
「いいえ。そんな。来ていません」
「来たと言え」
妻が絶句した。

6 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:18:57.616 ID:gczD/OB20.net
ボーイが夫婦のテーブルへオードブルを運んでいくと、夫が喋り続けていた。
「あの調停委員の女にはわかっとらんよ。女だからな。
女房をほかの男に寝取られた亭主がどんな気分のものかってことがな」
「あなた」ボーイを気にして妻が夫をたしなめる。
「そうだろう」夫が妻へ向きなおり、腹立たし気に念を押す。「わかっとらんだろう」
「ええ。ええ。わかりません」妻は夫を黙らせようとして大きくうなづく。

7 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:19:40.598 ID:gczD/OB20.net
「そうだろう。お前だってわかっとらんのだからな」
「本日のオードブルは鳥貝にパセリをかけたものでございます」
「そうか」ボーイにうなづいた夫は、すぐさま妻に向きなおって話し続ける。
「心の傷だとか、痛みだとか、時間が解決してくれるだとか、あれはなんだ。
ドラマのセリフか。あの女は馬鹿か」
「貝のままで塩水に漬けこみました鳥貝を焼きまして、
それから、裏ごししたパン粉と、にんにくのみじん切りと、パセリのみじん切りを炒めまして」

8 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:20:17.172 ID:gczD/OB20.net
眼を丸くした夫が奇異なものを見るようにボーイに向きなおり、まだびっくりしたままだ。
「これをまぜあわせ、強火でかきまぜて炒めたものでございまして」
「お前はわざとここへ、オレを連れてきたな」
「鳥貝は今朝がたとれたばかりのものでございます」
「こんなごたいそうな店へ、お前は一度もオレにつれて来てもらわなかったと言いたいんだろう」
「そんな。違います」
「だから男をつくって、そいつと一緒にここへ来やがったんだ。そう言いたいんだ」

9 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:21:09.674 ID:gczD/OB20.net
オードブルの皿をとりにいった時も、夫はまだ妻に告白を求め続けていた。
「ホテルで会ったことをしゃべったくせに、この店へ一緒に来たことくらい、なぜ正直に言えないんだ」
「だって、ほんとに来ていないんですから」
「来たと言え」
夫は妻の腕を彼女の背中にまわし、ねじっているようだった。
厨房に入っていくボーイの耳に、裏声まじりの妻の声が聞こえてきた。
「来ました。来ましたから」

10 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:21:48.259 ID:gczD/OB20.net
「スープ・ド・ロスコフでございます」
「それはホテルへ行く前か。行ったあとか」
「何がですか」
「とぼけるな。この店へ来たときのことだ」
「それはだって、あなたが来たと言えとおっしゃるから」
「これに入っておりますのは、お酢に漬けたアーティチョークの芯と、
うす切りにいたしましたポロねぎと」
「どうせホテルへ行ったことに変わりはないんだから、
こんな店に来ていようが来ていまいが、どうでもいいはずだとお前は思うだろうがな」
「それから、じゃがいもとバターで炒めたすい葉でございます。
スープには卵の黄身と牛乳が入っております」

11 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:22:18.911 ID:gczD/OB20.net
スープ皿を下げにいくと、夫婦は半ば向きあっていた。
「離婚しなかったら手柄になるんだ。あの調停委員は」
「そんなことないでしょう。ただ、離婚したからって問題は解決しないでしょって言ってるだけでしょ」
「その通りだが、あの女にはオレの苦しさはわからん。
お前にもな。離婚しなきゃなおさら地獄だってことがな」

12 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:22:55.880 ID:gczD/OB20.net
「地獄だなんて。そんな」
「地獄だ。お前は地獄じゃないのか。地獄にしてやろうか」
「そんな。ええ。ええ。地獄です。地獄です」
ボーイがサラダを運んでいったとき、
夫は妻の背中を断続的に殴りつけながらなじっていた。
「言え。その男のほうがオレよりよかったと言え」
「そんな。そんなことありません。よくありません。よくありません」妻は泣きじゃくっている。
「むきエビととうもろこしのサラダでございまして」

13 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:23:38.886 ID:gczD/OB20.net
「白状せんか」夫はまた妻の腕をねじあげる。
「これはウイスキーに干しぶどうを漬けこみまして」
「折れます」
「折られたくなかったら言え。よかったと言え」
「卵の黄身とマスタードの入ったマヨネーズでこの干しぶどうを、
むきエビととうもろこしと、それからアボカドと一緒にまぜあわせまして」
「痛い」
「そうか。よかったと言え」

14 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:24:12.601 ID:gczD/OB20.net
身をのけぞらせて妻が悲鳴を上げた。
「よかったです。よかった。よかったわ」
「地獄じあ。地獄じあ」夫が泣きながら立ち上がった。
機械人形のような動作で両のこぶしを同時に、
何度も妻の頭頂部へ間断なく振りおろした。「地獄じあ」
縦にブレる妻の顔はいささか平たくなって横に走査線が走っているかのようだ。

15 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:25:02.566 ID:gczD/OB20.net
「これにパプリカを振りかけまして、それから冷やしたものでございます」
夫は妻の腕を背中にまわし、肩甲骨のあたりまでねじりあげていた。
「言え。早く言え。そいつの方が、オレのより大きかったと言え」
「そんなこと。わかりません。わかりません」

16 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:25:51.022 ID:gczD/OB20.net
「大きかったんだろう。そうだろう。そうにきまってるんだ」
自分の言ったことで自分のした想像がふくらみ、彼はそれに耐えかねた様子でわっと叫んだ。
あきらかに妻の腕は折れたようだ。
「殺してください」震えながら妻は言う。「大きかったわよ。
あなたのとなんか、比べものにならないくらいだったわよ」
「地獄じあ」夫は泣きわめき、妻の頭頂にこぶしを振りおろす。

17 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:26:34.722 ID:gczD/OB20.net
やがて彼は、いったん眼の高さに振りあげた握りこぶしを力まかせに、
交互に振りおろしはじめた。「地獄じあ。地獄じあ」
妻の口からは乳白色をしたエクトプラズムの如きものがどろどろとテーブルの上へ流れ出してとぐろを巻いた。
妻自身の頭部も平面に近くなり、粘性を伴いはじめている。

18 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:27:03.617 ID:gczD/OB20.net
同じ動作を続けながら夫はもう泣いていず、真顔に戻っていた。
妻がまっ白になり、自らの吐き出したものと混じりあうかたちでテーブルの上に盛りあがった。
夫は腰をおろし、不定形の妻をかかえこんで「南無……」などと言いながら、
何やら仏像の如きものをこねあげはじめる。



19 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:29:44.321 ID:S4+eSUNMd.net
次はラブラブJKハーレムエンドでたのむ

20 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:38:14.389 ID:yvXjvMTP0.net
つまりどう言う事だってばよ

21 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/02/01(月) 16:41:22.217 ID:PfaRMitb0.net
ナポリタンかと思ったら違ったようだ

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