女「はい！この人痴漢です！」　俺「！？」

以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします

女「捕まえました！ワタクシついに捕まえましたわ！電車通勤2年目にしてついに！ついにやりましたの！
　　思えば上京したあの2年前の春のこと！初めての乗車でまさかまさかの痴漢に遭遇しましたの！
　　あまりの衝撃で棒立ちになっていたワタクシに痴漢の手は容赦なく侵攻してきましたわ！
　　ぎゅうぎゅ詰めの人だかりの中で！どこから手を伸ばしているのか皆目見当もつかず！まさに魔の手とはこのこと！
　　あれから毎日毎日電車に乗っては触られて！痴漢に悩まされる日々を送ってまいりました！」

女「ワタクシは考えました！どうやったら痴漢に遭わずに済むのかと！
　　スカートをやめて色気の無いジーパンを履きました！触られました！
　　角の隅に寄って死角を減らしました！触られました！
　　女性客に囲まれて肉壁を作りました！触られました！
　　思い切って化粧をせずにすっぴんで攻めてみました！触られました！
　　もはや万事休す！絶望の淵へと叩き落とされたのです！」

女「しかし、ワタクシは気付きました！何故痴漢から逃げる必要があるのかと！
　　そうなのです！全ての諸悪の根源は痴漢の方なのです！ワタクシに罪はありません！
　　痴漢という厄災から逃げるなどという発想からして負けの思考なのです！
　　ならば立ち向かうべきです！邪を払い、悪を滅すことこそがワタクシに与えられた使命であると！」

女「それからワタクシは来る日も来る日も対痴漢用撲滅トレーニングを続けました！
　　天井から吊るしたタコ糸にコインを結びつけ回転させ、目隠しでそれを掴むことから始まり！
　　フライパンで熱し、飛び散るポップコーンを瞬間中空で拾い集めることに発展し！
　　オオスズメバチの巣に石ころをぶつけ、襲いかかる無数の蜂を一匹残らず握り潰すことで修了としました！
　　そしてついに今日という日を迎えたのです！ワタクシの血の滲む努力は今この時をもって報われたのです！」

女「さあ、観念なさい小悪党！ワタクシの魅力に惑わされたとはいえ、あなたの行いはとうてい社会的に許されるものではありません！
　　この電車が止まった次の駅でこの車両からあなたを引き摺り下ろします！そして駅員が駆けつけるまで大人しくすることです！」

俺「・・・その必要はありません。あなたは私が与えた試練を受け、そして見事に乗り越えたのです」

女「何ですって・・・？」

俺「御覧なさい。私の右手首を掴み、刹那に骨を砕かせたその己の掌を」

女「これがワタクシの手・・・。これほど強靭に鍛えられていたなんて・・・」

俺「社会にはあなたが想像もつかないほどの艱難辛苦に満ち溢れています。私はあなたに強くなって欲しかった・・・」

女「で、では今までのことは全てワタクシを成長させるため・・・？」

俺「にこり」

女「あ・・・りがとうございました・・・。ありがとうございました！ありがとうございました！！ありがとうございました！！！」

乗客「パチパチパチパチパチパチパチパチ！！！！」

俺「さて、電車が止まったようですね」

女「どこへ・・・？」

俺「どの道私はこの駅で降りるつもりだったのです。行く先は闇の向こうか地の果てか。神のみぞ知るといったところ。
　　あなたは出勤中なのでしょう？お仕事、頑張ってください！」

女「・・・・・・・」

女「はい！！！！！！！！」

完

女「はい！この人痴漢です！」 俺「！？」

女「はい！この人痴漢です！」　俺「！？」