2ちゃんねる ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

僕は君を好きになってもいいですか?

1 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:03:54.245 ID:Sj4sL4ow0.net
〜君との再開〜
川のせせらぎと町のスピーカーから流れる朝のチャイムで目が覚めた。いつもと違う天井に違和感を覚えるも直ぐにそれは母親の実家であると思い出した。

 僕は小学校卒業と同時に母親と母親の実家にある田舎に引っ越してきた。理由は親の離婚だ。どっちが僕を引き取るかで何ヶ月も揉めて、仕舞いにはどちらかを選びなさいなんて言う始末。
12年しか生きていない僕にとって重要な人生の分かれ道。最終的に裁判で母親が僕を引き取ることになった。

 母親の実家に来て驚いた事と言えば、何もないこと。上は山、下は川が流れるどこにでもある田舎の風景だ。
ケーブルテレビでないとテレビも見られないというのもあり、テレビすら映らない。近くには雑貨屋、一週間遅れで入荷する本屋、小さな駄菓子屋に文房具店くらいしかない。本当に何もない町だった。

2 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:04:25.165 ID:Sj4sL4ow0.net
「いつまで寝ているの?早く顔を洗っておりてらっしゃい!」母親が大きな声で僕を促した。

 朝食を終える頃には母親は仕事に行く準備をしていた。僕は食事を終えると靴を履いて川に散歩に出掛けた。何もない町でも小川のせせらぎに目を閉じて身を委ねていると、どうでもいい風景や日常が少しはマシになる感じがしていた。

3 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:04:51.995 ID:Sj4sL4ow0.net
しばらくすると、誰かがこちらに向かって歩いてくる足音が聞こえた。

 そっと目を開けると僕と同い年かそれより少し年上の女の子が僕を見ていた。

 「豊くん…?」 僕は思わず声を出して驚いた。 「だ、誰?」僕は恐る恐る聞く。
 「え?やっぱり私のこと覚えてない?」女の子はキョトンとした後すぐに笑顔に微笑み直して「私だよ!奈緒子!」と明るく言った。

4 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:05:13.224 ID:Sj4sL4ow0.net
奈緒子…。あぁ、そういえば昔、お盆の時期に遊びに来た時に一緒に遊んでいた女の子のことを思い出した。「あの時の女の子か!」僕は一気に親近感を覚えて笑顔になった。

 しかし彼女は自分の事を直ぐに思い出せなかった僕に対して少し不満そうだった。頬を膨らませて膨れっ面になっている。

 「ごめん、ごめん。」と言いながら僕は起き上がった。

 「えっと、こっちに遊びに来たの?」奈緒子は不思議そうに僕に聞く。
 「いや、親の都合でこっちに引っ越してきたんだ…。」奈緒子は急にまた笑顔になり「えぇ?じゃあ同じ学校じゃない!」とはしゃぎ出した.。

5 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:05:35.711 ID:Sj4sL4ow0.net
僕は驚いた「奈緒子って今年から中学生なの?」奈緒子も少し驚いた顔で「えぇ!?名前だけならまだしも年まで思い出してないなんて最低!」また怒り出す。昔も喜怒哀楽が激しく表情がコロコロと変わる女の子だった。

 「それで、豊は中学の制服とか注文したの?」急に奈緒子がお姉さん振って僕に聞く。

「制服!!」母さんに何度も制服の注文を行くように催促されていたことを思い出した。「う、うそ?まだなの…?」菜穂子は驚いたというか呆気に取られた顔で僕を見ていた。
そして直ぐに「今日だったらまだ間に合うかもしれないから早く行くよ!」と言い僕の手を引っ張り走り出した。これが僕と奈緒子の再会だった。

6 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:06:01.995 ID:Sj4sL4ow0.net
〜文房具店〜
 「おばちゃんいる?」奈緒子は大きな声で叫ぶ。すると店の奥からお婆さんが出てきた。
 「いらっしゃい。なおちゃんのボーイフレンドさんかい?」とニヤニヤしながら話しかけてきた。
 「い、いえ、あ、あの中学の制服を注文したくて…」僕はなぜか動揺しながら目的を告げた。ふと奈緒子に目を向けると奈緒子も顔を赤らめて下を向いていた。

 制服の注文締め切りが今日の午前までだったのでギリギリ間に合った。奈緒子に感謝の意味も込めてチョコレート菓子を買ってあげると奈緒子はクスクスと笑い「本当に豊って昔とちーっとも変わってないんだね!」と言った。どこか奈緒子の表情が嬉しそうに見えた。

「昔から私が泣いても怒っても、いつもこのお菓子だったよね…」今度は少し寂しそうな顔をする。


「おかえり豊…」今度は泣きそうな笑顔で僕を迎えてくれた。

7 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:06:27.907 ID:Sj4sL4ow0.net
〜新学期〜

 着慣れない制服に袖を通し、鏡の前で自分をみる。少し変な風景だ。どこか懐かしくもあり新鮮で、それでいてなんか自分が大人になった気がしていた。母親も「豊も大きくなって」と涙ぐむシーンもあり騒がしい朝の始まりだった。

 「ピンポーン」と家のチャイムが鳴る。

 「ゆーたーかー!早く行くよー!」奈緒子の声だった。「あぁ、今行くからー」

 通学路でふと感じる疑問を奈緒子に聞いてみた。「新入生って何人?」奈緒子は僕に向かってピースサインをする。「なんだ、200…い、いや、ここは田舎だから20人?」奈緒子は更に笑顔になり「2人!」と言った。

「えぇ!2年生と3年生は?」「えーっとね、2年生は3人で3年生は5人だよ!」その言葉に僕は驚いた。アニメで見るような学校を思わず想像してしまった…。

8 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:06:46.804 ID:Sj4sL4ow0.net
学校に着くと、想像していた小さい学校ではなく、普通のどこにでもある学校だった。

入口には「新入生!ご入学おめでとうございます」と書かれた看板もあり、わずか2人の門出を祝うには大げさなのかもしれない。これには、さすがの奈緒子も驚きよりも照れを隠せない表情だった。

 新入生わずか2人の入学式に保護者・町民が50人以上、この町では運動会も含め全てが町ぐるみで動いており、この町ではこの風景があたりまえなのだ。思春期を向かえた僕にとっては嬉しくも恥ずかしい気持ちを隠さないでいいのが幸いだった。

 僕と奈緒子は手を繋ぎながら町の皆で作られた人間アーチを歩きながらお互いに顔を赤らめて席に着いた。

9 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:07:20.089 ID:Sj4sL4ow0.net
〜親友との再会〜
 入学式も一通り終わりに近づき、アナウンスが体育館に響きだす。「祝辞・在校生代表・青山健二君」
 どこかで聞いた名前だと思い、緊張しながら、ぎこちなく祭壇に上がる生徒の姿を見て思い出した。ケンちゃんだ。忘れもしない、二人で秘密基地を作って一緒に花火やスイカを食べていた、あのケンちゃんだった。

 「し、新入生の皆様っと言っても二人だけですが、今日は晴天に恵まれえーっと…」顔を赤くして緊張の余りカンペを持っていることも忘れて動揺していると町民の皆がはやし立てる。

「と、とにかく、いらっしゃい!」場内は一瞬シーンと静まり帰った後、どっと笑いに包まれた。ケンちゃんは照れた表情を隠すようにそそくさと祭壇を降りて自分の席に着いた。奈緒子は無邪気に笑って僕の肩を叩いていた。

10 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:07:49.407 ID:Sj4sL4ow0.net
担任の先生は五十嵐先生で中学1年生と2年生を掛け持ちの担任だった。五十嵐先生の紹介を一通り終えた後、改めて僕達、新一年生の自己紹介をした。

 ケンちゃんは僕をどこかで見たことがあるような顔でジッと見ていた。それに気付いた奈緒子は「ケンちゃん!豊だよ!夏に遊びに来てた豊!」と言うと、急に席から立上がり僕に近づいてきた。

「豊じゃないか!」ケンちゃんは嬉しそうに僕の髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら頭を撫でてニコニコしていた。僕も嫌じゃなかった。都会と違ってここではお互いが遠慮しない。

言い方が悪いかもしれないが、誰もが平等であり、影で誰かの悪口言うような人は誰も居ない。文句があるならその場で言う。それはケンちゃんが昔、僕に教えてくれたことだった。僕一人の為にここまで喜んでくれるケンちゃんを見て嬉しかった。
「ただいまケンちゃん。」これが親友との出会いである。

11 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:08:28.644 ID:Sj4sL4ow0.net
〜夏休み〜
 夏休みに入ると朝は学校でウサギの飼育当番、そして勉強、午後は川で遊ぶのが日課だった。毎日毎日、楽しくてゲームをして過ごす日々よりも充実していた。

夏休みに入る前に奈緒子と花火大会に一緒に行く約束を思い出した。それがちょうど今夜だった。
夕方になり僕は待ち合わせの橋で奈緒子を待つ。「ゆーたーかー!」息を切らしながら走ってくる奈緒子の姿が見えた。僕は笑いながら手を振って「遅いぞー」とイジワルを言っていた。

川原の土手に腰をかけ、次々と打ちあがる花火を見ていた。奈緒子ははしゃぎながら「たーまーやー・かーぎーやー」と何度も空に向かって叫んでいた。

「そんなに大きな声で叫ばなくても皆聞こえてるよ」と僕が言うと「うぅん、もっと大きな声じゃないと届かないから…」急に寂しそうな顔をする奈緒子に動揺して「誰に?」デリカシーのない質問をしてしまった。

12 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:08:48.662 ID:Sj4sL4ow0.net
奈緒子はクスッと笑うと、背伸びをしながら「空にいるお父さんに!」とだけ僕に言ってくれた。

僕がキョトンとした顔で奈緒子を見てると奈緒子もそれに気付き「大丈夫!昔の話だから!気にしないでよ!」強がっているようには見えない感じだったけど、どこか少し寂しげで、気が付くと僕は奈緒子の手を握り締めていた。

女の子の手は小さくて柔らかく、それだけでドキドキしていた。僕の心臓の音が手を伝って奈緒子に聞こえてしまうのではと思うくらいだった。それは僕がここに来て三回目に繋ぐ奈緒子の手だった。

花火が終わった静けさの中、僕達は何も語ることなく二人で手を繋ぎながら家路に着いた。僕はベッドに仰向けになって、蚊取り線香の匂いに包まれながら、奈緒子と繋いだ手を天井にかざして眠りにつくまでずっと見つめていた。

13 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:09:23.006 ID:Sj4sL4ow0.net
〜山登り〜
奈緒子と約束していた山登りの日。花火大会以来、お互いが変に意識してあまり上手く喋れてなかった。「ピーンポーン」家のチャイムに思わずドキッとする。「ゆーたーかー!また寝坊?」いつもと変わらない奈緒子の声がそこにはあった。

バスに乗って、電車に乗って、またバスに乗って目的地の山に着いた。子供でもお年寄りでも安心して登れる言わば初心者の山だ。奈緒子は僕の手を引っ張り「さぁ行くわよ!」と意気揚々としている。僕も行くぞと心に決め、最初の一歩が進みだした。

目的の山頂まで大人で30分、子供なら1時間くらいの距離だ。途中に休憩所がいくつもあり、山頂ルートまでしっかり整備されていて想像していた山登りとは少し違った。
「豊、大丈夫?辛くない?」息を切らしながら奈緒子は心配そうに声をかける。「だ、大丈夫だよ」都会暮らしの長かった僕は体力の無さを痛感した。

何度も休憩をしてやっと頂上に着いた。

14 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:09:48.033 ID:Sj4sL4ow0.net
「うーん」僕は背伸びをして山頂から望む初めての世界を見る。小さくて一人だけでは、何も出来ないと思っていた僕がここまで頑張れたのだと心の中は達成感で満たされていた。
奈緒子はキョロキョロ辺りを見渡すと一目散に目的の場所まで走って僕を手招きした。
「豊、ここから観る景色は絶景だよ!」奈緒子は両手を横に広げ何度も深呼吸をしていた。
「うわぁ」綺麗な景色に思わず声を漏らす。

「凄いでしょ?」自慢げに奈緒子は笑顔で僕に微笑んだ。
奈緒子は遥か遠くを見つめながら「この場所は、お父さんとの思い出の場所でね、お父さんが親友と呼べる友達が出来た時に、その友達だけに教えていいって言った場所なんだよ
と教えてくれた。

15 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:10:17.832 ID:Sj4sL4ow0.net
僕は何も言えなかった。けど、僕だけが寂しい思いをしているんじゃない、誰にでも寂しい思い、辛い気持ちを抱えて生きているのだと中学生にしては少し大人びた事を考えてしまった。「奈緒子、正直に言うと僕は最初、この町に来るのが嫌だった。
けど奈緒子やケンちゃんと再会して、本当によかった。本当にありがとう」
 奈緒子はキョトンとした顔をしたと思ったら今度は急に笑い出した。

「私もこの町が嫌なの。だけどこの町が好き。」今度は僕がキョトンとした顔になった。「私が矛盾してることを言ってるのは自分でもわかってるよ。けどね、本当にそうなの。
この町を嫌っていても、この町はいつでも私を迎えてくれる。どんなに辛いことがあってもここだけは私を笑顔にしてくれる。
だからこそ、この町が嫌いなの。」僕は理解出来なかった。奈緒子も僕の表情からそれを察してくれてただニコニコ笑っていてくれた。二人で見た景色は本当に美しかった。

16 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:10:56.815 ID:Sj4sL4ow0.net
〜僕だったら誰を助けるか〜
夏休みも終わりいつもの様に学校が始まった。現代文の授業である問題を出された。何もない海で船が転覆し、そこには1枚の板が漂流している。
板には2人は捕まれるが三人だと沈んでしまう。この海には大切な友人2人とあなたを合わせて3人います。あなたならどうしますか?

なんて嫌な問題だ。友達を守る為に自分が犠牲になりますって書けば確かに誰も傷つかない。だけど、もし本当にそんな事があった時に平常心で自分が死ねるだろうか。
皆助かりたくて誰かを蹴落として生きようと板に捕まるのではないか。結局、僕だけ答えが出ないまま宿題となった。

17 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:11:30.370 ID:Sj4sL4ow0.net
帰り道、奈緒子に思い切って聞いてみた。「奈緒子は誰を犠牲にしたの?」奈緒子はキョトンと驚いた顔で「自分自身だよ」と答えと。
僕はつい熱くなって「だって、本当にそんな事がおこったら…」僕の会話を遮る様に「それでも私なの。もうお父さんみたいに大切な人を失くすくらいなら自分が犠牲になった方が楽だから…」寂しげな顔をする奈緒子に胸が苦しくなりダッシュで家まで帰った。

「そんなの間違ってる!!」僕は何度も心の中で叫び、目から涙が溢れて止まらなかった。
翌日、教室に着くと奈緒子は少し気まずそうな顔で僕を見る。「奈緒子、やっぱり間違ってる!」僕はそう言うとノートを奈緒子の机の上に開いて見せた。

三人の内、誰か一人を犠牲にする事なんて出来ない。絶対に三人で生き残る。板が1枚しかなければ交代で泳げばいい。絶対に親友を見捨てない。

奈緒子は呆気に取られた顔をした後、目に涙を浮かべながら笑ってくれた。「ありがとう豊…。ありがとう」奈緒子の素直な言葉にドキッとして目を合わせることが出来なかった。

18 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:12:01.984 ID:Sj4sL4ow0.net
〜君の笑顔〜
夏も過ぎ、本格的な秋を迎えた。僕にとってはこっちに引っ越してきて初めての秋。

都会とは違いとても寒暖の差が激しく、昼間は25度夜は10度と気を抜くと風邪を引いてしまう程だった。

奈緒子には聞いていたが、こんなにも厳しいなんて...。

ピンポーンとインターホンがなると同時に「ゆーたーかー!川原いくよー!」と奈緒子の大きな声が部屋中を駆け巡った。

「あんなに大きな声だとインターホンの意味が...」と言い掛ける途中で、「お芋焼くよ!」と嬉しそうな顔で奈緒子は笑っていた。

「まったく」とあきれた口調で僕も笑うと、キョトンとした顔になり、「え?何がまったくなの?」と本気で聞いてきた。

19 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:12:27.672 ID:Sj4sL4ow0.net
女勇者「くそっ!こんな時に賢者がいてくれたら!」魔王「ファハハ」

20 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:12:59.080 ID:Sj4sL4ow0.net
「あいかわらず、奈緒子は何かに夢中になると人の話しを聞かないよね」僕は笑いながら答えると、
「ええ!!だってお芋だよ!焼き芋!」はしゃいだ奈緒子の顔を見ると僕も嬉しくなった。

川原にはすでにケンちゃんと明日香さんがいて、楽しそうに枯葉を集めていた。

奈緒子は楽しそうに無邪気に笑っている。それを見た僕もついつい笑顔になっている。

いつからだろうか、僕がこんなに人の笑顔をずっと見ていたいと思うようになったのは...。

それも全て、君の笑顔が始まりだったのかもしれない。

21 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:13:17.442 ID:td8agr0Fa.net
>>19


22 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:13:41.373 ID:Sj4sL4ow0.net
〜冬の出来事〜
「ゆーたーか−!お茶碗取って!!」奈緒子の声が僕の家で響く。

「う、うん...」心臓の音が奈緒子に聞こえてしまうのでは...と思うほどドキドキしている。

中1の思春期真っ盛りの僕は、同級生の女子が3日間も二人きりで1つ屋根の下で生活するなんて想像もしていなかった。

この町では町民の人が亡くなると、子供を除いた町民全員で、山を下りた先にある市内で葬儀を行う。しかし大雪により雪崩が発生して山道が封鎖されて帰って来れないと電話があったのは僅か1時間前の出来事であった。

23 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:14:12.850 ID:Sj4sL4ow0.net
僕の母親から、「女の子1人は危険だから家にいらっしゃい」と電話があったんだーと笑いながら奈緒子は淡々と家に上がる。

「豊の家すごくない!?冷蔵庫大きい!」まるで修学旅行に来た学生のテンションで僕に質問攻めだ。

「豊の部屋って何もないの?私はどこで寝ればいいの?お風呂は?ごはんどうする?」

楽しそうにしている奈緒子をよそに、僕は胸の鼓動ばかり気にしていた。

テレビがない我が家にとって、夜は会話がないと耳鳴りがするほど静かでラジオだけが唯一の楽しみなほどだった。

24 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:14:33.843 ID:Sj4sL4ow0.net
「ごはんは私が作るから、あなたはお風呂沸かして!」と夫婦みたいな会話をして楽しむ奈緒子。

「お風呂やったことないんだけど...」と言うと、「ええ?嘘でしょ!?」といちいち大袈裟に驚く。

お風呂、料理、布団敷き全て奈緒子がやってくれた。

「奈緒子はすごいね」僕は純粋に感激して褒めた。

「豊が何も出来ないだけでしょ!」照れながら笑う奈緒子。

奈緒子が作ったハンバーグはとても美味しく、まるで洋食屋のハンバーグの味を彷彿とさせた。

その日、奈緒子は母親の部屋で寝た。僕は同じ空間に奈緒子がいると思うだけで寝付けなかった。

25 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:14:36.142 ID:td8agr0Fa.net
王様「おお、勇者チンコの娘、マンコよ!よくきた!そなたは勇者の精子から出来たら子供じゃから勇者だ!」

マンコ「はぁ?」

王様「ほれ、マンコを開いて見せてみなさい」

マンコ「はい」ピラッ

王様「いぐーーー」

王様「さすがじゃ。ではそこの扉を開けるがいい」

マンコ「はい」ガチャ

魔王が現れた

魔王「ファハハ 」

ガチャ
勇者は扉を閉めた

26 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:14:58.912 ID:Sj4sL4ow0.net
「豊!起きなさい!何時だと思ってるの!!」

いつもの様に母親に起こされたと思い、まだ重たいまぶたを擦りながら目を開ける。

「わかってるよ...まったく、時間くらい自分で...わっ!!」僕は目の前にいた奈緒子に驚いた。
それと同時に昨日の出来事が夢ではなかった事になぜかほっとした。

「おはよ豊!お母さんは朝食の支度してるから、早く顔を洗ってらっしゃい」無邪気に僕をからかいながら笑う奈緒子は楽しそうだった。

27 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:15:27.448 ID:Vcl7SAZC0.net
このスレ>>1をNGしたらいい感じのスレになるな

28 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:15:27.870 ID:Sj4sL4ow0.net
「ねぇ、さっきラジオで言ってたけど、まだ道が封鎖されてるんだって」奈緒子がトーストをかじりながら、他人事の様に言う。

さっきの仕返しとばかりに僕は「奈緒子と二人っきりで僕は嬉しいよ」と言うと、「え...え?」珍しく奈緒子が頬を赤らめ動揺しているのがわかった。
僕がクスクス笑ってるのを見て察した奈緒子は「もう、これだからデリカシーのないお子様は!」と頬を膨らませながら少しふてくされていた。

その日の午後、奈緒子は一度家に戻るので付いてきて欲しいとお願いしてきた。
奈緒子の家は僕の3軒隣にある。都会の人は3件隣と聞くと、すぐ近くと思うかも知れないが歩いて5分かかる。これが田舎と都会のギャップなのかもしれない。

奈緒子の家に着くと、2階の部屋に案内された。「ここが私の部屋だから、ちょっと待ってて!」
それだけを言い残し別の部屋に行ってしまった。

29 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:15:58.590 ID:Sj4sL4ow0.net
かすかに香る女性のシャンプーのような匂いにドキドキしつつ、辺りを見渡す。勉強机には沢山の写真が飾られている。
幼少期から今までの奈緒子がいた。お父さんに抱っこされながら笑う奈緒子。アイスを持ちながら眠ってしまっている奈緒子。全ての写真に親の愛情を感じた。

そんな数ある写真の中で、幼稚園児の奈緒子が、同い年くらいの男の子のほっぺにキスをしている写真を見つけた。僕は嫉妬というか、少し嫌な気持ちになった。
幼いから仕方ないと思いつつも、今もその写真を大切に残している奈緒子に嫉妬したのかもしない。

「おまたせ!!」奈緒子がリュックを持って入ってきた。「なにそのリュック?」僕は少し戸惑いながら聞いた。

「だって親がいつ帰ってくるかわからないでしょ?だから洋服とか持って行くの!豊は下の部屋で待ってて!」と僕を下の階に案内する。

「別にここで待っててもいいんじゃ...」と言い掛けると

「変態!!」と言われ、下の階に行く意味を理解した。

30 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:16:28.887 ID:Sj4sL4ow0.net
しばらくすると奈緒子が降りてきた。
「もしかして私の部屋にいる時、写真見た?」少し恥ずかしそうな顔をした奈緒子が僕に聞く。
「す、少しね」明らかに動揺を隠せずに声がうわずんでしまった。

奈緒子は「はぁ〜」ため息をはいた後「そ、その、キスの写真は、思い出というか、別に意味があって残してるんじゃないから...」と頬を赤らめて僕に言う。

「あの少年は誰?」僕はとっさに聞いてしまった。

奈緒子は驚いた顔をして「え?自分の小さい頃の写真見たことないの?」

31 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:16:41.248 ID:Vcl7SAZC0.net
>>25
つまんな
面白いと思ったの?

32 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:16:59.058 ID:Sj4sL4ow0.net
今度は僕が驚いた顔をして「え?自分の小さい頃?ってことはあれ僕?」

奈緒子は頬を赤らめて下を向いたままうなずく。

僕も顔がカーッと赤くなり、下を向いてしまった。しかしあれが僕と言われても何も思い出せない。
それもそのはず、自分の幼少期の写真は特に無く、幼稚園のアルバムくらいしかなかったからだ。しかもアルバムさえ興味がなく一度見たことがあるかないかも記憶に残っていないほどだ。

けれど、あそこに映っていた園児が僕だと分かると、なぜか嬉しかった。

奈緒子は下を向いたまま「ほら!早く豊の家に行くよ!」と僕の手を引っ張り歩き出した。

「はいはい」僕は頬から思わず笑みがこぼれた。

33 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:17:36.166 ID:Sj4sL4ow0.net
奈緒子と2日目の夜を迎えた。

昼間のことは何も無かったかのように楽しい時間だけが過ぎて行った。

寝るときも、僕の部屋に布団を二つ敷き、お互いが知らなかった幼少期を語り合った。
奈緒子は今までの全ての出来事が凝縮して今を一生懸命に生きているキラキラしている存在に思えた。

川原で僕を見かけた時に、まるで夢をみているみたいだと思ったらしい。

田舎では誰かが引っ越してくると噂がすぐに広まるのに知らなかった。奈緒子がお母さんに言ったら、お母さんは知っていて奈緒子には内緒にしていたみたいだった。
そんなたわいもない話をしているうちに二人とも眠っていた。

カーテンの隙間から差し込む小さな光で僕は目覚めた。
心地よさそうに眠る奈緒子を見ながら、そっと手を握ってしまった。

すると、パチっと奈緒子の目が開き「豊君?何をしてるのかなー?」と言いながらニヤニヤしながら僕を見つめている。

34 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:18:00.066 ID:Sj4sL4ow0.net
「べ、別に!!」ビックリして手を離すと、奈緒子は起き上がって背伸びをしながら「冗談だよ!おはよう!」と笑いながらカーテンを開けた。

外は朝日に照らされて、雪が銀色にキラキラ輝いている。「これだけ天気がよければ今日中には帰ってくるかな?」布団を畳みながら奈緒子はいつになく上機嫌だ。

「ご飯の支度するから、顔洗ってシャキッとしなさいよ!」と言い残し、奈緒子は階段を降りて行った。

僕はドキドキしながら、自分の手をしばらく見つめていた。

朝ごはんを終えると、母親から電話があった。食料は大丈夫か?おそらく今日中には帰れそうだとの事。
そのことを奈緒子に伝えると「ちょっと残念だね」とだけ言い寂しい顔をしていた。

二人きりの時間をもっと過ごしたかった自分がいた。自意識過剰かもしれないが奈緒子もそうだったのかも知れない。
母親たちは夕方に帰ってきた。家の中がいつもより綺麗になっていて奈緒子に感謝していた。

この冬の出来事は初めて心の中で芽生えた温かいものだった。

35 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:18:35.962 ID:Sj4sL4ow0.net
〜新学期〜
4月を迎え僕達は2年生になった。新1年生はおらず、2年生になっても後輩はいない。とても不思議な気持ちだ。

ケンちゃんも明日香さんも3年生になり、クラスが別々になった。この学校は3年生になると別の教室授業になる。田舎の学校特有だけど、1人の先生に対して2人の生徒なので家庭教師みたいになる。それゆえに、この学校からは、いつもそこそこの進学校に行ける。

奈緒子は相変わらず真面目に勉強している。
「奈緒子は将来の夢とか考えてるの?」僕のふいな質問に奈緒子は少し考えた顔をして、「お医者さんになりたいかな」と答えた。
「お医者さん!すごいじゃん!しっかりした将来を考えているんだね!」僕は心から感心した。

「お父さんを病気で亡くしたから、私がお医者さんになって同じ様な病気の人を助けてあげたいの。」
奈緒子は真っ直ぐ見つめたままそう答えた。

36 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:19:04.566 ID:Sj4sL4ow0.net
「豊は将来何になりたいの?」

「僕か…。うーん。今はまだこれって言うのはないんだけど…。」

将来をしっかり見据えている奈緒子に対して僕は恥ずかしくなった。
「豊らしくていいんじゃない?それも豊の魅力だよ!元気出しなって!」僕の背中を笑いながらバンバン叩く。

「そういえば、豊に渡したい物があるの!」そう言うとカバンから小さなハートの形をしたキーホルダーを僕に手渡した。

「なにこれ?」僕はキョトンとした顔で奈緒子を見た。

「豊…、キーホルダー知らないの?」嘘でしょ?って顔で驚く奈緒子

「い、いや、キーホルダーは知ってるよ!このタイミングとなぜハートなのかって…」僕は明らかに動揺していた。

「ほら、この間のバレンタインの日に風邪で休んじゃったから、代わりに手作りで何かあげたいなって思ってたから!」

「奈緒子にしてはちゃんとしたハートの形になってるじゃん!」

奈緒子は少しムッとした顔をして「奈緒子にしては!って失礼だから返して!」

僕は「冗談だよ」と笑うと、つられて奈緒子も笑いながら「大切にしてね!」と僕に言った。

僕はこのキーホルダーを一生大切にしようと心の中で誓った。

37 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:19:43.617 ID:Sj4sL4ow0.net
〜一人ぼっちの教室〜
6月になり梅雨本番を迎えた。

朝起きた時からいつもと何か違う嫌な予感がしていた。案の定、いつもの登校の時間になっても奈緒子は迎えに来なかった。
教室は先生と僕だけの2人きりの空間が、どこか息苦しい感じがして奈緒子の存在の大きさに気付く。
先生は風邪と言っていたが、検査入院のため、しばらくは学校を休むとのことだった。

昼休みの給食は1人で食べた。寂しさには慣れているはずだったのに、なぜか気を緩めると涙が出そうになる。僕は感情を抑えるのに必死だった。
1人ぼっちの教室がこんなに恐怖に感じたのは初めてだった。ふっとキーホルダーを思い出しそれを見ると、不思議と気持ちが落ち着いてそれと同時に涙があふれて頬を伝った。

38 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:20:10.745 ID:Sj4sL4ow0.net
検査のために市内の大きな病院に入院していると母親から聞いた。母親も何の検査かは知らないらしく、僕は嫌な予感だけが頭の中でグルグルと渦巻いていた。

次の日から先生の提案で僕はケンちゃんのいる3年生クラスで授業が出来る様になり寂しさは半減した。

結局、奈緒子は一週間後に登校してきた。
奈緒子はいつもと少し様子が違い、僕に対して他人行儀みたいに感じた。

「寂しかったでしょ?」少しうつむきながら僕に聞く。
「これのおかげで大丈夫だったよ!」とキーホルダーを見せて「えへへ」と鼻をすすった。

奈緒子は目に涙をためて、「ばか...。ありがとう。」と僕に今まで見せたこと無い笑顔で答えてくれた。

「おかえり!奈緒子!」僕は笑顔で言った。

「なんか変な感じ...。それって私が去年会った時に言った言葉だよね...。」と今にも泣きそうな顔で僕に言う。

僕は笑顔でうなづくと
「ただいま豊...。」と言いながら奈緒子の目から涙がこぼれていた。

39 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:21:00.326 ID:Sj4sL4ow0.net
〜2度目の山登り〜
今年も夏がやってきた。

奈緒子は入院して以来、たびたび学校を休む日が多くなっていた。奈緒子が言うには大きな病気ではなく、母親が大げさに少し咳をしただけで学校を休ませるんだと教えてくれた。

そんな奈緒子から、去年も登った山にもう一度行こうという話が出た。
僕は快く賛成して、約束の日が待ち遠しくカレンダーの過ぎた日をバツ印を付けて、楽しみに残りの日を数えていた。

母親は、「奈緒子ちゃんのお母さんは許可しているの?」と何度もしつこく僕に聞く。
交通費だってそこそこかかるのに、許可無しで行ける訳がない。そんな安易な考えで僕は「うん。」とだけ答えた。

当日、約束の時間より30分も前に着いたにも関わらず、奈緒子が待ち合わせ場所にいた。

40 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:21:10.372 ID:td8agr0Fa.net
早よ勇者続き書けや殺すぞ

41 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:21:24.758 ID:Sj4sL4ow0.net
「おはよ!奈緒子早くない!?」僕はウキウキした気分で挨拶をする。

「豊が遅いだけ!!」ブーッっとふくれっ面をしながら僕をにらむ。

「えええ?約束の時間って7時じゃなかったけ??ごめん!」僕は時間を勘違いしたのかと思った。

「えへへ、冗談・冗談!私が早く着いただけ!」奈緒子は無邪気に笑い僕をからかう。

「まったく!」今度は僕がふくれっ面になる。

そんな僕の顔を見て奈緒子は笑う。笑う奈緒子の顔見て僕も笑う。こんな日常が僕は大好きだった。
そんなくだらないやりとりをしながら僕達は電車に乗った。



〜登山道入り口〜

登山道の入り口は相変わらず大勢の人で賑わう。
僕と奈緒子は意気揚々と山を登る。
時折、奈緒子は足を止め「休憩しようー。」と小休憩を取る。

僕は「早く行こうよ!」とせかす。

今思えば、後悔でしかなかった。無知の自分を悔やんでも悔やみきれないこと。もっと奈緒子の事を思ってあげればと...。

42 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:21:53.460 ID:Sj4sL4ow0.net
頂上に近付くにつれ、奈緒子の息が上がっている。かすかに、コンコンと乾いた咳も聞こえるようになった。

「奈緒子大丈夫?」不安げな顔をした僕を見て「ちょっと運動不足なだけ!!」と苦しそうに笑う。

頂上に着くと奈緒子は、その場にへたり込んだ。

「奈緒子?」様子がいつもと違うことに気付いた。

「え...奈緒子?大丈夫?」

奈緒子は体育座りをしたまま顔を下げて動かない。一瞬で自分の血の気が引くのを感じた。

「なお...」

バタン
奈緒子はその場で倒れこんだ。登山客が救急車や処置を色々してくれる。
そんな姿を見て、僕は恐怖で震えながら泣いているだけだった。

43 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:22:16.376 ID:Sj4sL4ow0.net
救急車で奈緒子は大きな病院に運ばれた。僕の母親や奈緒子のお母さんもすぐにかけつけた。

僕は母親に何度も頬にビンタをされた。
奈緒子は肺に病気が有り、手術をしても30%しか助かる見込みもない位の大きな病気だった。
奈緒子も病気のことは知っていたが、誰にも言わないで欲しいとお母さんにお願いしていたとのことだった。

そして、無事に登山出来たら手術をするとお母さんと約束していたらしい。
緊急で行った手術は成功だった。しかし、倒れたときに呼吸が止まっていて、今は植物人間状態であると医師から言われた。

目が覚めるのは明日か数年先か若しくは永遠にか。僕は医師の冷たい言葉と狂ったように泣き叫ぶ奈緒子のお母さんをただじっと見ているしかなかった。

44 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:22:56.723 ID:Sj4sL4ow0.net
〜僕は君を好きになってもいいですか?〜

それから数年が経過した。

僕は高校を卒業して町役場に就職した。そして、仕事帰りに必ず君に会いに行くのが日課になっていた。

君はこの数年間何も変わっていない。君のお母さんは、これ以上僕や君を苦しめたくないと延命措置を諦めようとした。

それでも僕は必死にお願いをした。君がほんの少しでも目を覚ましてくれる可能性があるなら、僕はまた君の笑顔が見たいと心から願っていたから。
それでも君は目を覚まさなかった。

僕は君との思い出が風化しないように、昔の思い出をノートに書き綴った。もちろん今でもキーホルダーは大切に持っている。

君は今どんな夢を見ているのかな?その夢の中に僕はいるのかな?僕は君とずっと一緒に居られるものだと思ってた。怒った顔、笑った顔、色々な君の顔を見ていたかった。こんなに君がいない世界が小さくて、つまらないものなんて思いもしなかった。
君の声がまた聞きたい。僕にとっての君は特別な存在だった。もっともっと君と一緒にいればよかった。
あの時、登山さえしていなければ...。あの時、君をもっといたわってあげられてたなら...。
全てが後悔でしかない。
君は僕の全てだったんだ。いまさら気が付くなんて...。

いまさらだけど、君に聞きたいことがあるんだ。


僕は君を好きになってもいいですか?

45 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:23:26.535 ID:Sj4sL4ow0.net
君への告白から15年が経過した。

「パパー誰のお墓なの?」僕の娘が不思議がっている。
無理もない。このお墓に連れて来るのは初めてだから。ベビーカーでは危険で抱っこをしていても滑落の危険がある場所にこのお墓はある。


娘が6歳になって、妻と相談してやっと連れて行く決心をしたのだから。

「ほら、ここにお花をあげて」娘が一生懸命にお花を水受けに入れている。

「さぁ、手を合わせて...。」僕の見よう見真似で娘が手を合わせ目を閉じる。

「パパ!誰のお墓なの?」娘が再度聞く。

「あぁごめんごめん。このお墓はママのパパが眠っているお墓なんだよ」僕は答える。

「本当にパパは、いーっつも人の話聞かないでしょ!?奈緒美はパパみたいになったらダメだからね!」妻が笑う

「えー。私パパ好き!!だから将来パパと結婚する!」娘が僕の左腕をつかむ。

「ダメよ!パパは私と結婚してるんだから!」妻が僕の右腕をつかむ。

「あー!!危ないから、奈緒子も奈緒美もやめなさい!」僕が怒る。

「あーパパが怒った〜!」二人して僕を笑う。

「さぁ、ママとパパのお婆ちゃんが待ってるから帰るよ!」僕はあきれて言う。

「はーい!!」二人とも息がピッタリだ。まるで二人とも子供みたいに無邪気に笑う。



君との出来事を綴ったノートは娘が結婚する時に読ませようと思う。
これからも僕はもっともっと君を好きになるだろう。


おしまい

46 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:23:46.040 ID:0DausM/ma.net
>>40
もうお前ROMってろよ

47 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:24:09.626 ID:tpB/Z5MW0.net
誰ひとりとしてこの文を読む者は居ないと断言できる

48 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:24:52.746 ID:br34lASed.net
女勇者書いてたやつか?うそだろ?

49 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:25:27.288 ID:Sj4sL4ow0.net
女勇者需要あるの?

50 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:28:14.368 ID:Sj4sL4ow0.net
気軽にフォローしてね
https://i.imgur.com/yX4XdVE.jpg

51 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:28:46.308 ID:td8agr0Fa.net
>>49
さっさと書けや

52 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 06:51:43.819 ID:ITzLs917d.net
フォローしてやったぞ

53 :以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします:2017/11/25(土) 07:00:27.371 ID:6DD5ASKI0.net
>>21
わいも思わず草生えたわ

総レス数 53
34 KB
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
read.cgi ver.24052200