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カニよりカニカマの方がうまいな
- 1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:00:03.331 ID:G+l/fb4I0.net
- それが、祖父の遺言だった。
祖父の死によってふさぎこんでいたぼくの元にある一通の手紙が届く。
「八十丸草介さんを訪ねなさい」
その言葉通り、ぼくは八十丸がマスターだという町の外れにあるバーを訪ねた。
八十丸と会うのは何年ぶりだろうか、大学では同じサークルに所属していたものの最後に会ったのは高校時代だった。
年月が経ち、八十丸の頭はやや白くなっていたがその鷲鼻や右に上がった口角は学生時代にみたそれだった。
- 2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:00:43.115 ID:G+l/fb4I0.net
- 「宝蔵院なのか?」
八十丸が鼻声で聞いてくる。そう言えばこの男は蓄膿症を患っており、よく相談を受けた。
彼は鼻声なだけではなく鼻汁が一年を通して緑色なことからクラスメイト達に「エイリアン」と呼ばれ虐められていた。親しい友人といえばぼくくらいのものだ。
「結局親父さんの跡を継いだんだな。八十丸」
ぼくがそう問いかけると、八十丸は照れ臭そうに頭をかいた。
「へへ、医者になるって息巻いて上京したけど大学には一度も行かなかったしな。流石に実家に戻って親孝行をしようと思ったわけさ。お前は今、何をしてるんだい?」
「軍医になったよ。ぼくは親父の病院を継ぐ気なんてないしね」
- 3 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:01:09.607 ID:G+l/fb4I0.net
- ぼくの言葉に八十丸は作り笑いを浮かべる。この男は心の底から笑うときは目尻に皺が寄るのだけれど今はそれがなかった。どうやらなにか思うところがあるらしい。
それがぼくに対してか、実家に対してかはわからないが。
「はは、宝蔵院らしいね。親父さん嫌ってたもんな」
その後も思い出話に花を咲かせていると、奥から一人の少女が出てきた。
「あの、おじさん……ウィリアムズさんから電話だって」
- 4 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:01:31.632 ID:G+l/fb4I0.net
- その時、ぼくは違う世界に迷い込んだのかと錯覚した。
大きな瞳は宝石を思わせたし、鼻筋やおとがいは彫刻のように整っていた。
白磁のような肌もそう、まるでこの世のものとは思えない……不自然なほどに美しい少女だった。
「ウィリアムズ?ああ、どうせまた草野球の仲間を探しているんだろう。おじさんはみりんを買いに行ったとでも言っといてくれ」
八十丸の不自然なまでに聞き取りづらい声で現実に戻される。
「そちらのお嬢さんは?」
俺が問いかけると、八十丸は困ったような表情になる。
- 5 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:01:59.127 ID:G+l/fb4I0.net
- 「それが……わからないんだ。いきなり姉さんに預けられて。この子も何も答えないし」
「鏡花さんが?」
鏡花さんは確か自動車メーカーの研究開発職だったはずだ。軍需産業も手がけている企業なので以前仕事中にばったり会って驚いたことがある。
「鏡花さんとはどういう関係なんだ?」
ぼくの問いかけに少女が口を開く、次の瞬間バーの扉が乱暴に開く。
- 6 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:02:35.368 ID:G+l/fb4I0.net
- 「ここにいたか。八番」
どうやら酒を飲みにきたのではなさそうだ。自動小銃を持った男が五人、ぼくたちを取り囲んだ。
「その少女を渡せ」
軍服を着たリーダー風の男が一歩前に出る。腕章から尉官であるとわかった。
「如何なる存念で我々に銃を向けているのか。所属と階級を言い武装を解除しろ。ぼくは陸軍軍医中佐、宝蔵院利彦だ」
そう名乗るも、軍服の男は薄く笑うのみであった。
- 7 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:03:14.067 ID:G+l/fb4I0.net
- そう名乗るも、軍服の男は薄く笑うのみであった。
「宝蔵院……なるほど、軍医になったという宝蔵院家の御曹司か。おとなしく父の跡を継いでいればこのようなところで死ぬこともなかったろうに」
問答無用か。
ぼくの階級と宝蔵院という家名を聞いた上で強行手段を取るとはよほどこの少女に価値があると見える。
「なら……こうすればどうかな?」
- 8 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:04:14.403 ID:G+l/fb4I0.net
- ぼくは銃を取り出すと横にいた少女にそれを突きつける。
軍服の男が蝋人形のような青白い顔を歪める。初めて見せる彼の動揺であった。
「……なんのつもりだ?」
「ふ、お前のような下郎の手に渡るくらいならこの場で始末した方が国家のためというものだ」
少女を人質に取りながら後ずさる。この局面を打破する方法は転がっていないものか。
……テーブルか。それにトイレ。危険な賭けではあるがこのまま殺されるよりかは遥かにマシだ。
「大人しく渡せ!」
男が吠える。
- 9 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:04:48.975 ID:G+l/fb4I0.net
- 「渡してもいい。だが条件がある」
ぼくの言葉に彼は数秒逡巡するが、続きを促す。
「なんだ、言ってみろ」
「お前たちの計画にぼくも入れろ。八十丸博士からこの子を預けられたぼくが利益を得られないのはおかしな話しじゃないか?」
「貴様……どこまで知っている?」
何も知らないがハッタリを効かせる。下手を打てば終わりだったがどうやらうまくいったようだ。
- 10 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:05:27.459 ID:G+l/fb4I0.net
- 「まずは答えを聞かせてもらおうか」
青白い顔が一層歪み、火山灰のような唇を噛む。
「上に確認を取る。少し待て」
男がスマートフォンを取り出し、【上】に電話をかけようとする。
……ここしかない。少女にトイレへ逃げるよう促す。
「はぁっ!」
テーブルを蹴り上げる。それと同時に男達の怒号が狭い店内に響き渡る。
テーブルを盾に銃弾を防ぎながら横から撃つ。一人が悲鳴を上げ倒れる。
- 11 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:05:58.060 ID:G+l/fb4I0.net
- 「おのれ!!!」
男が激昂して発砲する。
無論拳銃とは言えテーブルくらいは貫通する。急所は外れてるとは言えこのまま何発も貰ったら危ない。
「短期決戦といきますかっ!」
無駄弾は使えない。心臓を狙い一発、二発。それらは訓練の時から考えられないほど狙い通りの場所に到達した。
「残り二人!」
血が沸騰しそうになる。何発もの銃弾を掠めているというのに痛さを感じない。
更にもう一人を殺し、軍服の男に突撃する。
- 12 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:06:43.025 ID:G+l/fb4I0.net
- 「バカが!」
突っ込んできたぼくを嘲笑し、銃口をこちらに向けてくる。
だが、見える。銃口の角度も指の動きも、銃弾さえ。
男を殴りつける。彼は短刀を取り出し斬りかかってくる。躱したところに銃弾。
それも避け、こちらも引き金を引く。
「があっ!!」
人間離れした反射神経で銃弾を避ける男。だが曲芸地味た動きで足のどこかを痛めたのだろう。膝をついてしまう。
- 13 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:07:21.612 ID:OeB07GbNK.net
- 蟹は当たり外れがある。カニカマはない。
- 14 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:07:27.036 ID:G+l/fb4I0.net
- 「さて、知ってることを話してもらうぞ」
「もはや、これまで」
そう言うと男は何かを取り出し、それを飲み下した。
「グッ、ここで俺を退けようと逃れることはできんぞ……宝蔵院ッ!」
血と共にぼくの名前を吐いて彼は事切れた。
- 15 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:07:59.268 ID:G+l/fb4I0.net
- 「さて、後始末をしなくちゃな」
男達の死体を調べる。しかし身元を確認できるものや少女との繋がりを表すものは何も出てこなかった。
「さて、もう出てきていいよ」
カウンターの下に隠れていた八十丸と死体を外に出し、血を掃除したのち、トイレに逃げていた少女に声をかける。
「……」
ドアが開き、少女が出てくる。あの騒動を受けて顔色一つ変えていない。
やはりこの子自身が一番の手掛かりとなりそうだ。
- 16 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:08:46.714 ID:G+l/fb4I0.net
- 「君は一体何者なんだい?」
ぼくの問いかけに無言の少女。
「言わなきゃ助けようがないよ」
自分より落ち着いている10歳は下であろう少女に苦笑が漏れる。
「それよりも、ここを出る。ここにいるとまた店に迷惑をかける」
「どこに行くつもりだい?」
「貴方についていく。それが鏡花の命令だから」
鏡花さんの?しかしどうしたものか。あからさまな面倒ごとを引き受けていいのだろうか。
「>>20」
- 17 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:10:00.670 ID:G+l/fb4I0.net
- ksk
- 18 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:11:07.485 ID:G+l/fb4I0.net
- ksk
- 19 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:12:25.414 ID:G+l/fb4I0.net
- ksk
- 20 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:13:10.552 ID:G+l/fb4I0.net
- ksk
- 21 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/05/24(木) 03:17:11.355 ID:qnTQ1z+Pd.net
- ここまで誰にも相手にされないのも珍しい
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