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昔書いた小説が出たから貼る

1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 13:17:01.802 ID:r3AaWidl0NIKU.net
 裕二の成績は上半期よりも落ちていた。
 担任教師は冷めた目線で、「このままでは進学はおろか、進級さえ危ういですね」と告げた。

 国内有数の格式を誇る私立高校をパスした裕二の存在は、これまで大した栄光を得ていなかった陣内家を風靡した。
 私を始めとして、陣内家の人間はみな一様に凡才だ。学生時代は起業して経済大国へ上場すると口癖のように言っていた兄は、いまや零細企業で営業マンとして生きており、本気で女優を志した姉は、池袋のうらぶれたデリバリーヘルスで客の指名がくるのを待つ毎日だ。
 そして他ならぬ私も、きっと掃いて捨てるほど存在する凡庸な一般人でしかない。

 裕二は生まれつき頭がよかった。
 自身が凡百の域を出ないというコンプレックスから、人は生まれ落ちたその瞬間はみな平等であるという妄想にすがっていたが、皮肉なことに息子の存在によって私は目を醒まされた。
 同年代がひらがなを習っている中、裕二は既に初歩的な漢字に取りかかっており、また周りが因数分解をやっているなか、裕二は高校の範囲の内容を独学で勉強していた。
 常人とは比にならない効率で、裕二はあらゆることを習熟していった。
 だから私は、裕二が陣内一族の無念を晴らしてくれるものだと考えていた。夢破れた者しかいない我が一家の出自を持ちながら、必ずや栄冠を手にしてくれるものだと信じていた。

 無論、そこに自己投影の気があったことは否めない。自分の種からこれほど優秀な息子が育ってくれたということは、とりもなおさず自分にも優等な要素が備わっているのではないか。
 虚妄だということは重々承知していたが、平等の園から追いやられた私は、今度は裕二という避難所を見つけていたのだった。

2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 13:18:05.455 ID:r3AaWidl0NIKU.net
 裕二が授業についていけないということは、断じてあり得ないと思っていた。
 努力を面倒と捉えるのが通常だが、彼は怠慢を面倒と捉える人間だ。
 何かしていないと落ち着かず、それは多動性のきらいを仄めかすほど顕著に表れる彼の性向だった。
 帰りの半蔵門線は空いていた。裕二は鞄から藍色のブックカバーを取り出して、座席に座って読んでいた。

 「車輪の下。父さん、知ってる?」表参道を通過した辺りで、裕二はふとそんなことを言い出した。
 教養のない私は、その単語が何を示しているのか即座に理解することができなかった。
 「ヘルマンヘッセの作品。豊かな感受性を持った少年が、社会のしがらみに束縛されることを良しとせず、自らの道を進むことを選択するも、結局大成せずに惨めになる作品」
 「それが、どうした」
 「俺みたいだよね」裕二は冷ややかな笑みを浮かべた。
 私はそこで、裕二の成績が下降している原因に気付いた。
 この私には過ぎた息子には、おおよそ反抗期というものが存在していなかった。
 言いつけどおりに部活へ入り、器用に学業と両立しながら県大会優勝という偉業を成し遂げた。私と妻の言う通りに入塾し、いま通っている名門高校の模試でA判定を打ち出したのだ。不平も不満も、一切口にせず。
 「裕二。お前、手を抜いたのか」
 「退学になりたかった」裕二は即答した。
 「俺さ、知ってるんだよ。父さんも母さんも、叔父さんも叔母さんもさ、俺の家族ってみんなロクな目に遭ってない。言っちゃ悪いけど、総じて間が悪いし、頭も悪かったんだよね」
 私はそれに頷くことが難しく、顔を強張らせて自分の膝を見た。

3 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 13:18:41.238 ID:r3AaWidl0NIKU.net
 俺は意思を持てなかった。ハンスと同じだよ。周囲からそうあることだけを求められて、それに応える以外の存在意義なんてないんだろ? だから俺は人生を棒に振ることに決めた」

 「だがな」

 裕二は顔を思い切りゆがめる。これまで見たことのない、私の遺伝子の本性だった。
 「俺は学校を辞めるよ。親父たちに復讐する。今までは車輪の下にいたけど、もう我慢の限界だ」
 「裕二」
 「勘当するなら勝手にすればいい。行政でもなんでも頼って、フリーターとして生きていく。正社員登用してもらえれば御の字だ」
 「裕二、お前は」
 言葉に詰まった。きっと擦り切れるほど何度も読み返されたのだろう。
 裕二が持っていた文庫本のページは、水に浸した古紙のようにボロボロになっていて、それは彼の心と同様、今にも無残に破れてしまいそうになっていた。
 「お前は、私たちが憎かったのか?」
 裕二はそれには答えなかった。車掌のアナウンスが次の駅の到着を告げる。
 夕焼けが目に染みた。言葉を交わすことを諦めた親子の間に、電車の走行音だけが虚しく鳴り響いていた。

4 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 13:19:22.819 ID:ekK2BnRa0NIKU.net
長いわ一行で書け

5 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2018/06/29(金) 13:19:30.629 ID:q+ntthZq0.net
いいじゃん。僕好きだよ

6 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 13:19:45.971 ID:aEvxdtoV0NIKU.net
これは文壇も射精しながら芥川賞

7 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 13:23:47.613 ID:r3AaWidl0NIKU.net
嘘つけ自暴自棄で書いたから優れてるはずがないぞ

8 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 13:26:31.945 ID:2rrVwoN2HNIKU.net
思ったより良かった

9 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 13:36:04.632 ID:r3AaWidl0NIKU.net
夕方にも立て直すわ
ぜってえ批判殺到する

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