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例の小説『改造された冬の空』を改造してるが上手くいかない
- 1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 22:16:12.055 ID:ZSrmLjF90NIKU.net
- 助けて
- 2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 22:18:34.990 ID:ZSrmLjF90NIKU.net
- クリスマスイブの空は灰色にかすんで、ぼんやりとつかみどころがなかった。
濃淡も境目も曖昧で、近いのか遠いのかもよくわからない。
ただただ空気だけが刃のように冷たい。
まるでこちらのざらついた心を映し出しているかのようだ。
そのうちに鼻先が冷えてきたので、アキラはマフラーを口元に寄せた。
相模大野前の喫煙所からは、電飾に彩られた通りを行く家族連れやカップルがよく見えた。
早めのクリスマスプレゼントらしき大きな紙袋を抱えた少女が、上気した顔でそばを通りすぎていく。
はしゃぎすぎて足を滑らせた小さい背中を横目で眺めながら、アキラは煙草に火をつけた。
午後二時十五分。
待ち合わせ時間を十五分も過ぎていた。待ち人はまだ影もない。そういう人だということはよく知っていたが、無駄に待つのはやはりつらい。
何気なく周りに目をやると、煙草を吸い終えたサラリーマン風の男がせかせかと喫煙所を出ていくところだった。
すぐに別の大学生らしき青年が入ってくる。
その彼もすぐに吸い終えて同じように忙しげに立ち去っていった。
機械のようにニコチンを体内にぶち込んではそれぞれのルーチンへ戻っていく彼らを見ながら、アキラはそこから取り残された自分を意識した。
この流れていく街の中で、自分だけがどこにも行く場所がないような錯覚を抱く。
かつては自分も何の疑問も持たずにあの輪の中にいたこともあったが、今はもうはじき出されて外側だった。
少しでも日常に、常識に対して疑いを持てば人はその流れに馴染めなくなる。
つまり正常ではなくなる、壊れるということだ。
故障した意識をぼんやりと濁らせて、アキラは紫煙を吐き出した。
- 3 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 22:19:55.276 ID:ZSrmLjF90NIKU.net
- さらに十分がたち、三本目の煙草が灰皿に沈んだところで彼女は現れた。
艶めく黒髪と真っ赤なコートを風になびかせ、ハイヒールの音を鳴らして歩くその姿は露骨に派手だが不思議と違和感はない。
その異様に強い眼光をアキラに据えて、彼女は真っ直ぐこちらへと近づいてきた。
相変わらず綺麗に整った顔だ。隙が無く、それゆえ人を遠ざける。
咲桜ユミは誰にも懐かないし飼いならせない。それを今日も思い知る。
アキラの前に立った彼女は喫煙所を見回して大きく舌打ちを響かせた。
「最近はどこも禁煙分煙とやかましいな。グローバリズムの一環だかなんだか知らないが、私のエデンを枯らしにかかろうとはいい度胸だ」
言いながらコートのポケットからねじれた煙草を取り出して、百円ライターで火をともす。
「仕方ないでしょ。体に悪いのは事実なんだから」
「喫煙者がそれを言うか。煙草に魅入られた者が煙草なしで生きていけるとでも?」
「マイノリティは黙って従うしかないのさ」
「関係ない」
ユミの尖った視線がアキラを貫いた。
「私の敵は遠からず潰す。お前も敵か?」
潔いな、とアキラは苦笑した。
取り残されたような憂鬱に感傷的になっていた自分とは全く違う。
敵と敵でないもので世界を切り分け、後は戦うことに躊躇はない。
これが咲桜ユミだ。アキラは違う。
なんだかとても羨ましくなった。
- 4 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 22:21:36.543 ID:ZSrmLjF90NIKU.net
- 「それで、用事はなんだ。早く言え。でなければ私は帰る」
吸い終わった煙草を灰皿に押し付けてユミが言った。
アキラも同じく煙草をもみ消して顔を上げる。
「立ち話もなんだし。どこかお店入ろう」
「帰る」
「近くにいいパスタ専門店があるんだ」
踵を返しかけたユミの眉がピクリと動いた。
「……カルボナーラは?」
「アルデンテ」
「おしぼりは?」
「厚めの布。ちなみにコーヒーは挽きたてのアメリカンだし灰皿は大きめのガラスだよ。気に入るとおもうんだけどな、どう?」
短い黙考の後に姉は、ふん、と鼻を鳴らした。
「どっちだ」
この姉がどういった釣り針に食いつくのかは長年の経験から熟知していた。
駅のショッピングモールの方を指さすと、後は何も訊かずに彼女は歩き出した。
きびきびと進んでいくその背中を追いかけて、アキラはこれからどう話を切り出すべきかを考える。
今日の約束まで一週間もあったのだが、結局のところ今回の件の上手い説明が思い浮かばなかった。
(さて。どうしたもんかな……)
灰色に汚れた空に再び目をやってアキラはため息をついた。
もうすぐ自分が死ぬということ。
それを告げなければならない難しさと。憂鬱の苦さを、舌の先に感じながら。
- 5 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 22:29:19.536 ID:ZSrmLjF90NIKU.net
- ぬうん孤独に戦えということか……
- 6 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 22:31:39.339 ID:0Gqjrx+xMNIKU.net
- 本人公認になっててワロタ
どれ読むだけ読むわ
- 7 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/06/29(金) 22:45:06.055 ID:ZSrmLjF90NIKU.net
- 別のスレ見てて気づいたが俺本人と間違われてた
すまん、違うんだ
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