母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね？

1 ：以下、？ちゃんねるからVIPがお送りします：2019/06/09(日) 12:37:01.462 ID:9IvWHuaR0.net

ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。

2 ：以下、？ちゃんねるからVIPがお送りします：2019/06/09(日) 12:37:42.335 ID:9IvWHuaR0.net

母さん、あれは好きな帽子でしたよ、僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。

3 ：以下、？ちゃんねるからVIPがお送りします：2019/06/09(日) 12:37:50.232 ID:G52WBTdO0.net

ドン！

4 ：以下、？ちゃんねるからVIPがお送りします：2019/06/09(日) 12:37:56.394 ID:9IvWHuaR0.net

母さん、あのとき、向こうから若い薬売りが来ましたっけね、
紺の脚絆に手甲をした。そして拾はうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、なにしろ深い谷で、それに草が背たけぐらい伸びていたんですもの。

5 ：以下、？ちゃんねるからVIPがお送りします：2019/06/09(日) 12:38:11.037 ID:9IvWHuaR0.net

母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう？
そのとき傍らに咲いていた車百合の花は
もうとうに枯れちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。

6 ：以下、？ちゃんねるからVIPがお送りします：2019/06/09(日) 12:38:24.051 ID:9IvWHuaR0.net

母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y.S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。

7 ： 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします ：2019/06/09(日) 12:39:24.790 ID:wRzrCfDm0.net

久々に読んで感動でもしたんか