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戦場は、絶え間ない戦いの場である。

1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2021/03/19(金) 16:47:08.106 ID:OUFgjf8c0.net
敵との、自然との、悪疫との、そして自分自身との。さらに加えて飢餓との戦いがあった。木の芽、木の芯を食いながら、山の中を彷徨い歩く。飢餓は人の心を荒らませ、固く自分の殻の中に閉じ込めてしまう。物を言うこともなくなり、笑いを忘れる。何ものにも関心をしめさなくなり、からからに乾いた胃袋に向かい合ったまま、生命の火を凝視しつづける。夕暮れ、先頭の方に異様などよめきがあった。廃園にぶつかったというのである。どのような宝庫が待ち受けているのか、われながら生き生きとした気分が突き上げてくるのを、抑えかねた。思わず、急ぎ足になる。見ると、背嚢を降ろし、銃を捨てて乱入している。生きのいい声が、一杯にこだましている。掘り残しの芋を掘るもの、青いパパイヤを落としているもの、それは活気にあふれていた。サトウキビを見つけて、帯刀で叩き切った。しゃぶった。った。覚えず唸り声がでるほど、それは全身にしみていった。飢えた狼、それが、陳腐な形容とは思えなかった。がつがつっている自分が、なんともあさましい気がしてくる。てんでに獲物に殺到し、歓声を上げている。今の刹那の喜びに、われを忘れた楽しい風景だった。

2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2021/03/19(金) 16:52:11.371 ID:OUFgjf8c0.net
ぽっかり浮いた雲を見た。遠く霞んだ、やわらかい自然を眺めた。笑いざざめいて見える。雲、それから一望の風光を、黍とともにしゃぶっていた。何か、まともに食えるものがあるという喜びが、それほど心の余裕を生み出すものなのか。この景色を背景にして、黍をっている一人の男を眺めてみることさえできるのだ。いましがた、暗い雲の中に頭を突っ込んで、固く感情を閉ざしていたものがである。そんなことを考えながら、口のまわりを甘い汁で濡らしていた。食うということが、これほど人間の神経を支配しているということを、歓喜のざざめきのなかに確かめていた。

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