なろう小説の出だし書いた

以下、？ちゃんねるからVIPがお送りします

　空を見上げれば星があるが、高所から見下ろせば地上にも星があるだろう。
　近づけば眠りを忘れた街の明かりだと分かる。
　さらに近づけば、その根元に黒々とした闇がうずくまっていることも。

　深夜になってもどこかざわめきの残る街だ。
　夜を裂いて疾走する車両、遊び歩く若者、酔客同士怒鳴り合う声。
　音もない騒々しさは気配として肌に染み入ってくる。
　眠りはする。が、決して熟睡はしない、街の喧噪だ。
　ただ、その日の騒がしさは普段のそれとは種類が別だった。

「交通規制及び隊員の配置が完了しました」

　報告の声にスーツの男が振り返った。
　眉間のしわが深い中年だ。
　緊急車両の赤いランプに照らされ、ただでさえ気難しそうな顔を不機嫌にしかめていた。

「砧や岡本の住民は？」
「範囲内の小道もパトカーを回してるので、そう簡単には公園に近づけないかと」
「これであらかた塞いだか……」

　環八、それに交差する世田谷通り、首都高速三号渋谷線といった幹線道路。
　可能な限りの手は尽くしたことになる。
　つまりメディア向けに言い訳の立つ対策は、ということだが。

（気に入らんな）

　小さく舌打ちしていると、すっと目の前に煙草が差し出された。

「吸います？」
「全域禁煙だ馬鹿野郎」

　しっしと追い払う。
　砧公園を遠くに眺めながら時計を確かめた。
　『発現』まで残り六分。
　正直煙草の一本や二本くらいは吸いたい気分ではあった。