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(’-’*川チカラノミナモトッテドコニアルンデショウネ〜🍹ショウセツカイテミタオ🐰マタ♪

1 :jc!ダオ:2021/11/30(火) 23:13:11.033 ID:zYVVGQ0h0.net
傷を負った勇者はようやく何となく愉快な気分になりました。何とか仲間になった出会ったばかりの他のいたずらっ子のような一行も最後には笑いながら誰からともなくありのままの姿となって軽はずみなじゃれあいのような、慰め合いのような、そこからほとんど果てない宴となっていました。愚かしい事です。目の前に頭を振って誰ひとりの存在も目も忘れてしまったような顔つきでひとりの女盗賊が活き活きと誘う目で全てをさらけ出して踊ります。あたりの柳の木は一切大きく垂れ下がり、柳と柳の間からは灰色の空まで石畳の不思議な道がほのかに魔光を放ってそのまま一筋のびているような美しい、でもどこか悲しげな人けのない小屋一つない場所です。チラリホラリ、小さなドラゴンが舌を出したような不思議な花が咲くまだ肌寒い、ほとんど冬の日の夕暮れでした。
ようやく終わったのか? 何とか五体満足だけど、もう一度回復魔法を受けねばならないぞ。
体をそのまま地面におろしてしまうと、奇妙にひっそり静まった後に何やらキチガイじみたような騒ぎにすっかり包まれているのに気付きました。今更のように自分をもとめるらしき幾人かの女たちに気づくと、何かしら二、三言葉を取り交わすとなぜか治療は受けられないことに腹が立ち、やはりひとり黙々と騒ぎを離れ、遠い天をいく現実のドラゴンを静かに高く見送りました。その羽ばたきにはあわれにも見ればダメージが痛々しく、悠久の命からがらという様相。
いま襲われたら主力のぼくなしで、あのドラゴンを撃退できるの?
世にも訪れる奇妙に平和な時でした。そんな中、心の中の嵐のけたたましい振る舞いは既に音をたてて破られて、斧持つ鬼、鉾持てる夜叉、剣持つ穢れ知らぬ武人もなんとなく、みながみなに小さくしのがれ心は常に固められていました。いってみればその強い覚悟をもって命をかけた無慈悲な旅程のこの末にも必ずや彼らのすべての光明がめでたくも信じられて、呪文も念仏も良心もいらないままに彼らは自然と今すべてみなぎる力と知恵をもって生まれたままの姿となってたがいにもう斧を、鉾を剣を共に手にして時にやさしく涙してほほ笑み、讃えあっている、じっと希望にしがみついているようでした。
天下は我らのものなるぞ、という勇気。
深いため息をつきました。そこに恐ろしい日の光りをも嘲笑うドラゴンもただ暮れかけた紫の空にそのまま行きちがえど然しながら自然にその二頭のそれぞれ憤怒の牙と痛々しい、しゃにむの悲しい眷属とともどうしようもない黒雲の影をのみ目指すような。美しい不思議な色彩の空は盾も貫く頼もしい仲間そのすべてみな慶び祝うようなさもあらんという愉快爽快な気分。にわかに激しく胸に高まるのは大和魂、悪意の暴れるこの世にさらに極まるよう。
異世界_____
何か胸騒ぎがする。ぼくは本当に、どうにかなってるのかもしれないけど…
勇者はそれでも平静を装うと、そばを通った数人の女の子にまた話しかけようと頑張ってみます。また何かしらのらりくらりとされているあいだ、勇者の心にはなぜか改めて妙な悲しさがまたあおりたてられ、こわごわと眠りかけた小さな子の目を覚ますよう。
「誰もが誰かと生きている。なぜかこんな世界でいても、確かに…」
心にとげのようなものがまた感じられ自然に勇者は一人声を落としました。

2 :jc!ダオ:2021/11/30(火) 23:15:23.959 ID:zYVVGQ0h0.net
勇者は慎重に振り向いてだれともなく、力勝るはずの自分が他の無茶苦茶なくだらない者達にまたどう思われるか、たまるものか、むしろまだ他に回復できることはないものかなどというようなことを何度目かまた考えめぐらせて再び少しこの命がけの旅の前にかしこまる思いがします。本当の痛み、そして限界を再三超える肉体のもたらす奇跡、神妙さ、命そのものが高める魂の行くへ、その神掛かる兆候に大きな意味を見出し気構えます。
『勇者様、あれを御覧ください。みなあなた様を讃えておるのですぞ!』
一人の娘がそんな勇者に近づいてきます。きわめて興奮して、その目は勇者を見ているような見ていないような、遠い未来を見ているような。やがて軽やかな肢体を風に舞わせて透き通るような肌の思案気味で華奢な細身の身体に揺れる二つの乳房、拒むものもない欠くところひとつない甘美なその美しい官能色が、不覚も間違いもない勇者の目に心底震える生きがいに化け変わりその体を稲妻のようにその芯から貫くようです。勇者は若い女のその田舎くさい自分の欲望をはるかに超越してしまったような変に明るい、朗らかで開放的な所作に驚き、痛みを吹き飛ばされました。ついに防具のその重みにふと腹が立つほどにみるみる興奮してしまい同時に、この上はのぼりつめた舞台の上で震えるような恥の息はきっと睨んで抑え込むも一つしぐさの揺らぎのうちに、たちまちこれまた生まれたばかりの姿でその肉体に棲む大気の縺れを祓おうという素敵にばかばかしい気配となりました。ぞっとするほどピンクに光ってしまいそうな蒸気が頬から天を望むのに心も身体も一層欲望を貪ろうとしました。
『乾杯!』
その時どこか上がるめでたい声。勇者は若い肉体の赴くままにやがてしきりに強く何か興奮の渦中に夜通しその目が暗く光るような、頬がげっそりとして男らしい頬髭が伸びていくような、木陰で震える小動物のようないつにない衝動が身体中に広がるのに任せていました。あたりは晴れやかな、でも一種異様な緊張感に包まれています。
微笑みに潤んだ舌をみせる無邪気な女の軽やかな動きのそのたび、意識に華やぐような不思議なもやもやした霧。その時錯覚か偶然か、その女の眼の奥に魔物のような特有の光が宿ってみえ勇者は唯何度も何度もそれを確かめようとしつつ、みるみるその牙が伸びて見えるのを確かめるとたちまちそこから飛びのいてしまいました。勇者は赤黒く変化する娘を引き離しました。
周りを見回します。勇者は驚きました。すでに攻撃部隊はその壊滅的宴が蔓延し、補給部隊の女たちも元気にその快楽の匂いにあっけなくからめとられつつあります。
白い女の牙はその灰色の肌にぼろぼろと何かがはがれていく身体から魂が緊張した表情で何かを訴え諦めきれずに訴えるようでした。勇者はとうとう娘の頭を打ち砕きます。しかしなぜでしょう、勇者はもうここが終わりなのだと確信していました。あらゆる罠をかいくぐってようやくたどり着いたこの道の先、少なくとも今の自分にはふさわしい終りにも思えていたのです。なぜか記憶によみがえるいとしい女の子の三年前の言葉がふと頭に浮かぶのにおのれのことながら驚き嫌になります。
「私、今だってまだ不幸せよ? でも、なんでもできる自由を今はあじわっていたいの。あなたのことは嫌いじゃないけど何か新しい苦労をしたくないってかんじかなあ。ごめんなさい、自分でもどうにもならないの」
悲しい涙で目が熱く、首の付け根まで赤くなる自分を自分であきれ叱ります。
「ぼくの夢は、君だけだ。君だけだったとは…。そうか!」
一つの恋の叢雲から闇夜を晴らす月のように勇者のはっきりした野望が生まれた瞬間でした。それからわけのわからない人生の転落、なぜこんなことになってしまったのか、まっさきに思ったのはそれは決して誰にもほめられはしない、むなしく腐ったような心の自分にあたえられた運命というべきで、一応は将来を模索し取りこぼして落として無くさぬように、へんてこな自分を冷静に見つめなおすための真心のあるありとあらゆる存在のお芝居なのではないのかというような確かな感触でした。それが改めて心にありありとよみがえりそれから今更のようにまたグルグルと嵐のようなものが魂をひしひししたたか揺さぶりますが、半分頭が壊れて効果的にはご利益ありません。勇者はゆっくり、その身体を起こしました。忘れられかけた命を呼び起こすように。

3 :jc!ダオ:2021/11/30(火) 23:16:04.737 ID:zYVVGQ0h0.net
『ああ…!』
いつのまにか体を合せ始めた男女が遠くに見えます。ともに言葉なくさらりとすぐに下半身の隙間のあらぬ気の渦に魂すべてを委ね、傍目にも鼓動が一気に高まる裸の一団。いつものように誠意のない会話と悪い不正直な残念な空気のままいつのまにやら収奪をはじめある者は巻き込まれ、笑い合い、また取り立てて言えば傍目にも必然下半身のうずきだけは愛想も未練もなく強いわけのわからないありがたい幸福感をむなしく脳と全身に漲らせます。それを過ぎれば必ず絶望の悲鳴と絶叫があがるはずです。そしてまた強姦のような様相のはるかの二人に少しあさましく、酷くまた新鮮で心地よい気持ちがしてしまいます頭を振って気をとりとめます。
「も、もはやこれまで…」
勇者は覚悟を固めました。これはゲーム。とにかく、今は何をしてでもあがくべきでしょう。それはまだ神様のお調べが足りないのです。そこで少し瞑想をします。苦々しくも何か、どこか十分に突き止めた気がせず、あと千回はこれを繰り返そうというこの悪の闇を自覚し、人生に疑いのないしくじりとやはり淡く淡く温かい、神様の温情のような朗らかな空気の存在にまえにもまして嬉しくなります。遠巻きの女たちの自分を見る眼差し、それには自然に何か気にかかる新鮮で刺激的な暗示がこめられている気がして熱くめでたくその心を震えます。これは過ちの罠。どこかの映画でも見たことがあります。呪いのような全身の神経の高ぶり、あんまり夢中になって走っているうちにいつの間にかゲームがむずむずと続行されてしまいます。
ここは逃走して姿をくらますんだ。もしかしたら最後のダンジョンは生き残った者だけでもう一度攻略するのかもしれない…。
誰一人例外なく弱り切っているまともなメンバーが一人、二人と目につきます。
とうとう限界か、もう体が動かない。畜生…。
あははははっと、勇者はこれからの人生を暗示するかのような冷笑を浮かべました。一人何とかこの喧騒からすっと飛び出して藪のなか、まだ生き残ってしまった自分の幸運にも何の気なしにそれからそのうちあたりをしばらく見回り歩き始めました。時々、悲鳴と怒声、魔物の雄たけびがあたりにあふれました。
「悪人め、下種め、馬鹿ゲームメーカーめ! まぬけなこんなゲーム早く発禁されてしまえ!」
不思議と声が心持ち自分ながら新しく気味が悪く感じられます。その時見下ろす地面に口紅のついた煙草の吸殻が一つ。それがなぜか心をざわめかせます。まるで神さまの目覚ましのよう。
人はなぜいつのまにやら恋につられて明け暮れて、やつれて疲れ、泥だらけになってしまうのでしょう?

4 :jc!ダオ:2021/11/30(火) 23:16:31.059 ID:zYVVGQ0h0.net
まだ無事な仲間は数人さまよっているようですが勇者には何もできませんでした。誰にも知られぬまま柳林を抜けて、再びの藪を勇猛につっきって、こんどはぬかるんだ道を何分か走って歩いて突き当ってしまいました。もういつ死んでもいいという感じでした。するとそこに一台の新しい小さな自動車が不思議と木に衝突した形で事故をしてしまったのかひっそりなぜか止まっています。中には男女が二人。
なんだ? すごくいい女だな。
勇者は立ち止まりました。その懐かしいしかし相容れないはずの光景が愚かしくも戦慄の中にその豊かな経験値のなかにだいたいの一閃の攻略をひらめかせそのうちゆっくり接近を試みました。間違いなく、勇者は少しどぎまぎしていますが頑張ります。そしてなにやらその車の窓が少しあいていて、次第に中の男女の肉声と金属的な猛烈に朗らかなラジオの声が勝手に耳に入ってきます。そのラジオの声に、勇者はようやく今完全に正気を取り戻し頬をピクピクさせました。
「君の束縛は僕には拒めない。ぼくの心を支えていてくれ。なんて美しい眼をしているんだ、君は」
「ふふふ、ちょっと残念ね、今更なんだけどあたし、浮気だっていくらでもできるから?」
「そう…」
どうしたことか、やがて見つめあって二人は笑い合いだしました。そこに、ラジオが不思議に口をさしはさみます。 
『なんてことないんです。これを不思議におもわれるのでしょうか? 馬鹿じゃないの?』
笑い声が起きました。
「私、キスしたい…」
「え、お、おまえ無茶苦茶だよ。子供が見てる、警察見てる、ん! なんか怪我人かな、すげえコスプレーヤーみたいなの血流して近づいて来やがった!」

おわり

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